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097 スノール王国騎士団


 翌日、俺はブレドに連れられスノール王国騎士団の練習風景を見に、杖をつきながら訓練場に来ていた。


「昨日、フォウから話を聞いてな。ベアードが無理をさせたようで悪かった」


「いや、特に無理をしてないし別に気にすることじゃないんだが……」


「お前ならそう言ってくれると思った。それでなんだがな……。ベアードがお前に無理をさせた事に対してかなり落ち込んでるんだよ……。だからお前から声をかけてやって欲しい。なんせ、あいつ熱心なアレス信者だからな。すぐ立ち直るはずだぞ」


「……そ、そうだったのか。ま、まあ、了解した」


 俺とブレドが訓練場に入ると、騎士団員は剣を振ったり走り込みを行なっていたりしているところだった。

 しかし、何故かそこにはサリエラも混じっていて俺に気づくと手を振ってきたのだ。


「なんであいつが騎士に混じってるんだ?」


「ああ、アダマンタイト級冒険者のサリエラ嬢に稽古をつけてもらっているんだ。うちには女性騎士もいるから彼女の動きは勉強になるんだよ」


 ブレドにそう言われて俺はあらためて騎士団員を見ると、サリエラの周りにはかなりの数の女性騎士がいることがわかった。


「なるほどな」


「本当はお前にも稽古をつけて欲しいところなんだがそれは無理だろう?」


「当たり前だろ……。今の俺はシルバー級冒険者なんだからな」


「そうだな……。まあ、ベアードの件が片付いたら少し見学していってくれ。なんなら我が国のスノール王国流剣術を見せてやろうか?」


「俺は誰かさんに飽きるほど見せられたんだがな……」


「はっはっは、まあ、そう言うなよ」


 ブレドの笑い声に皆んな気がついたのか、すぐに近くに集まってきて隊列を組み始める。

 その中にはブレドの息子達であるアラミスとブレイスも混じっていた。


「ほお、御子息にもしっかりと騎士道を教えられているとは素晴らしいことじゃないですか」


 近くに騎士達が来てしまったので、俺は立場的な事を考え、恭しく話しかけるとブレドは苦笑する。


「当たり前だ。それと冒険者らしく話してくれ。正直、その話し方は私には寒気しかしないぞ」


「ふっ、自分でも言ってて、そう思ってしまったよ」


 そんな俺とブレドの親しげな会話を見て騎士達は驚いた顔をしていたが、若干数名からは怒りの気配を感じてしまった。


 まあ、国のトップにこの態度は本来は良いわけないからな。

 この反応はまともだろう。

 それよりも……。


 俺はそんな気配を軽く超えるほどのどんよりとした気配を感じ、そちらに目を向けるとベアードが小さくなって座り込んでいた。


 あれはさすがに落ちこみ過ぎじゃないか……。


 俺はブレドを見ると頼むと手を合わせられてしまったので、ベアードの方に声をかける。


「今日は騎士団長ベアード殿が育てた最強のスノール王国騎士団の勇姿を見たくて来てしまった。俺にぜひ見せてもらえないだろうか?」


 俺がそう言うと、ベアードは凄い勢いで立ち上がり騎士の礼をしてきた。


「はっ!このベアード!全力でやらせて頂きます!」


 一気に元気になったベアードはブレドの方に行き、目線を交わした後に騎士達の方を向くと大声で言った。


「これより、模擬戦をやる!貴様ら本気でやりあってスノール王国騎士団の凄さをお客人に見せてやれ!」


「「「「「御意‼︎」」」」」


 騎士達は全員、先程と違って俺達のやり取りを気にする様子はなく、背筋を伸ばすと各々の武器を胸の前に持っていく。

 その姿は何万回も練習したのだろう。

 とても洗練されて美しい姿であった。


「スノール王国騎士団、素晴らしい立ち姿だな」


「そう思われますか!このベアード、騎士団をここまで育てたかいがありましたぞ!よし、早速、模擬戦を始めろ!」


 ベアードの掛け声で何組か別れ、模擬戦が始まった。

 今回いるスノール騎士達は特に精鋭陣らしくアダマンタイト級からゴールド級が揃ってるとの事で、なかなか良い動きをしていたのだが、そんな中でも目立つ存在がいた。


「アラミスの動き……あの動きはお前にそっくりだな」


「あいつは私に体格が似てるからか、剣技を教えたらすぐに吸収してしまったよ」


「才能もあったという事か」


 俺は感心してアラミスの模擬戦を見ていると、誰かが俺達の方に吹き飛ばされてきたのだが、見るとブレイスであった。

 ブレイスはすぐに落とした大きな木剣を拾って構えると再び立ち上がり、相手に向かっていった。


「うおおぉーー!」


 だが、いくら木剣を振っても相手にはかすりもせず、蹴りを喰らって吹き飛ばされてしまう。

 そんな姿を見てブレドは何か言いたげだったが黙ってしまう。


 まあ、国王としては公平に見ないといけないからな。

 しかし、ブレイスのやつあの大きい木剣は合ってないだろ……。

 あれじゃあ、自分で振ってるんじゃなくて振らされている感じだな。

 それに力がないから振るスピードが遅い。

 だから簡単に相手に避けられてしまうんだが、本人は気付いていないんだろうな。


 俺は近くに立てかけてある、様々な木でできた武器を見る。


 あの武器なら良いと思うが、ブレイスは俺が言ったところでシルバー級の冒険者なんかの話しは聞いてくれないだろう……。


 その時、視界に丁度良い人物がいることに俺は気づいた。


 あいつ、今日は騎士達に色々教えてるんだよな。


 俺は、模擬戦を見ているサリエラを呼び、説明をすると何故か一瞬むすっとされたが引き受けてくれた。

 すると、サリエラに言われたブレイスは嬉々として通常より小さい木剣と、バッグラーを持ち模擬戦を始め、あっさりとブレイスは相手から勝ちを奪ってしまい大喜びをしていた。


「ほお、ブレイスがゴールド級の相手から勝ちを取れたのは初めだな」


 隣りにいたブレドは嬉しそうな顔をする。


「ブレイス様もついにアラミス様みたいに開花されたみたいだな。武器の変更に姿勢、そして相手との距離感。お見事です」


 ベアードもブレイスの喜ぶ姿を嬉しそうに見ながら頷く。

 その後、俺は騎士団の模擬戦を見ながら、たまにサリエラを通して騎士達にアドバイスすることで終わる頃にはアドバイスをしていたサリエラは、皆んなから大先生と呼ばれ、騎士達からは評価がうなぎ登りになっていったのだった。


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