095 騒ぐ勇者と詫びる元勇者
あれからブレドの弱みを王妃に喋るぞと脅迫して追い出したのだが、しばらくすると今度はサジが入ってきた。
現在、白鷲の翼も城の一室を借りて治療中なのだが、ブレドが声をかけてくれサジに俺の治療を頼んでくれたらしい。
「キリクさん、身体の調子はどうですか?」
「ああ。なんとかベッド上で動けるまでは回復できた。それより、シャルルの方はどうだ?」
「それが、怪我はもう大丈夫なんですけど、血を流し過ぎたのか信頼していた者から受けた裏切りにショックを受たからかかわかりませんが……まだ目を覚ます様子はないですね……」
「そうか……」
シャルルはザンダーの事を尊敬していたから、斬られた時は相当にショックだったはずだろう。
そう思うとザンダーに対しては怒りを覚える。
俺は静かに怒りを感じていると、サジが治療の魔法を唱えてきた。
「……キリクさん、あなたは人のことより自分の身体の心配をした方が良いですよ。では、治療を始めます。第六神層領域よりこの者を癒したまえ……ヒール!」
サジの魔法が俺を包み身体の痛みだけじゃなく、心の怒りも抑えていく。
流石はダマスカス級だな。
普通のヒールより治癒力が全然違う。
これなら、早めに動くことができそうだ。
「サジ殿、ありがとう」
「いえいえ、しかし、あなたはだいぶ身体を酷使してるみたいですね……。かなり際どい感じですよ……」
「……そんなに酷いのか?」
「よく、身体が耐えてるって感じですね。無茶をするといつか身体が動かなくなりますよ」
「そうだな……。後、少し頑張ったら身の丈にあった生活に戻るさ……」
「それなら良いんですけどね。まあ、とにかく当面は安静にして下さい。じゃないと、うちの勇者様のように痛い思いをしますよ」
「……ああ、まだ勇者殿は探し回っているのか?」
「そうなんですよ。怪我もちゃんと治ってないのに動き回るから傷が開いて……」
「……あれは英霊なんだろ?なら、探しても無駄だと思うんだが……」
「いやあ、そうなんですけどね……。でも、うちの勇者様が絶対この城の中にいるって騒いでまして……。おかげで城の方達にも多大なるご迷惑を……」
「そ、そうか……サジ殿も大変だな……」
「ははは……はあっ」
サジは乾笑いをした後、大きく溜め息を吐く。
それを見た俺はミナスティリアがどんな感じに騒いでるのか想像できてしまい、サジに心の中で詫びるのだった。
それから、サジの治療も終わりしばらく部屋でくつろいでいるとサリエラが部屋に入ってきた。
「キリクさん、ナディアさんから情報をもらってきましたが、数日前に西側に馬車で向かっていく元副ギルド長を見た人がいたそうです」
「そうか……」
「その中にマルーさんという魔人の子がいるんですよね?」
「ああ、おそらくな」
「許せませんね。誘拐なんて!絶対、助けだしましょうね!」
「……ああ、そうだな」
すまんな、サリエラ。
俺は心の中でサリエラに詫びる。
今回、城であった事は一部のものしか知らされていない。
なぜなら、魔王がまた現れるかもしれないなんて話が広まったら大陸中がパニックになるからだ。
なので、今回の騒動は全て死霊術師達が起こしたものとなっている。
ちなみにザンダーに関しては貴重な魔人であるマルーを高く売り飛ばす為に誘拐したという形になっているのだ。
「とにかく、キリクさんは早く元気にならないと駄目ですよ」
「そうだな」
現状、俺は杖を使ってなんとか歩ける状態である。
数日後にはブレイスを連れて要塞都市アルマーに行く予定だから、そこまでにはなんとか、まともに歩けるようにしたい。
そこで、サジの治療に加え錬金術の知識を使って作った薬である。
俺は今日の分を出し薬を飲もうとしてタクロムを思いだした。
そういえば、あいつはいったい何者だったのだろう。
現状わかるのは闇人とつるんでいた時点でザンダーと関わりがあるのは確定だ。
それに知人というのはもしかしたら……いや、ザンダーで間違いないだろうな。
そうなると今はザンダー、魔族、マルー達と一緒に行動してるはずだ。
このことはブレドを通して勇者パーティーにも伝えた方が良いだろう。
最悪の事態になったら、彼らに主軸で動いてもらわないといけないからな。
そんな事を薬を持ちながらボーッと考えていると、サリエラの視線に気づいたので、見ると、なぜかサリエラは顔を赤くして上目遣いで俺を見ていた。
「どうしたサリエラ?」
「あ、あのう、キリクさん……。もし、お薬が飲めないのであれば、わ、私がまた飲ませてあげましょうか?」
「ん?ああ、考えごとをしていただけだから大丈夫だ」
俺はそう言うと、さっさと薬を飲みこんだのだが、それを見たサリエラがなぜか残念そうな顔をしていたのを俺は気づくことはなかったのだった。
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