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094 国王の頼み

 翌日に起きると俺の身体は少し動かせる程度には回復していた。

 現在、俺はブレドにあの日の戦いの後、何があったのか話しを聞いていた。

 ちなみにサリエラには席を外してもらっている。


「……まあ、被害は結構あったがキリクのおかげで、王都の方は早めに復興できそうだ」


「それは良かったな。後、俺の事を上手く誤魔化せたみたいで助かったぞ」


「ああ……。あれは大変だった」


「何かあったのか?」


「勇者ミナスティリア殿だよ……」


 ブレドは愚痴混じりに俺に言ってくる。

 あの後、ミナスティリアに俺が生きてるんじゃないかとずいぶん詰めよられたらしい。

 ブレドの表情からすると相当大変だったようで、話してる最中ずっと胃の辺りを押さえていた。


「悪かったな」


「いや、お前が気にすることじゃない。この溜まったストレスはこの国の腐った連中にぶつけるよ……」


「そういえば、そっちはどうなってるんだ?」


「今、ベアードとフォウが陣頭指揮を執って潰し回ってるよ。上手く逃げてた連中も闇人や死霊術師と関係していたって事にしてね」


「おいおい、良いのか……?」


「問題ない、完全に黒とわかってる連中にしかやってないからな。とりあえずこれでスノール王国から膿みは出せそうだ。それよりキリク、お前はどうせ人が良いから魔人の子を助けに西側に行くんだろ?なら、西側に行く件で私に良い考えがあるんだ」


 そう言いながらブレドは笑みを浮かべるが、こういう時のこいつはろくな事を考えてない事を知っている俺は目を細めて睨む。


「また、変な事を考えてるだろ……」


「まあ、そう言うな。お前、西側の獣人都市ジャルダンに行くんだろ?どうやって獣人しか入れないあそこにはいるんだ?魔王が復活しますから入れて下さいって言っても無理だろう」


「……一応、一定時間姿を変える薬があるからそれを使って入るつもりだ」


「だが、魔王がいたダンジョン跡地はどうやって入る?おそらく、規制されていて偉い連中の許可がないと入れないと思うぞ。そこで俺の案だ」


「不安しかないがとりあえず聞こう」


「絶対に上手くいって元魔王がいたダンジョン跡地に入れるぞ。ただし、要塞都市アルマーに行かないと駄目だがな」


「なぜ、あそこの名前が出てくるんだ?」


「それは、要塞都市で近いうちに周りの国の若い連中を呼んでパーティーが開かれるんだ。そこに獣人都市ジャルダンから自称王族が来るらしい」


「そいつと接触して中に入れてもえってことか。だが、向こうがこちらの言うことを聞きたくなるような材料はあるのか?」


「ある。獣人都市ジャルダンが喉から手が出るほどほしいものがな」


「なんだそれは?」


「スノール王国は獣人都市ジャルダンを認めるって私の署名付きの書状だ」


「なるほど、獣人都市ジャルダンは勝手に獣人達があの場所に作ったものだからな。今だにどこも認めてないが、北側の半分以上を統べるスノール王国が認めるって言ったら喜ぶだろう。しかし、いいのか?」


「ああ、あそこは何回か密偵を送ったが、意外と法律もしっかりしていてまともなんだ。だから我が国としては認めても良いと思ってたんだよ」


「ふむ、じゃあ、要塞都市アルマーにお前の書いた書状を持っていけば良いんだな」


「それなんだが、キリク、お前に頼みがある」


「なんだ?」


「うちのブレイスの付き添いを頼みたい。実をいうと、うちにも招待状が届いてな」


「それくらいなら構わなんがなぜブレイスなんだ?」


「そのパーティーなんだが、いわゆる、お見合いパーティーみたいなのも兼ねててな。アラミスはもう相手がいるがブレイスはまだなんだ」


「なるほど、二人はもう、そういう年なんだな」


「そうなんだよ……。だから、できればブレイスには良い相手を見つけてもらいたいんだが、あいつは自分で見つけると言って聞かないのだ。まあ、今回のパーティーで作れなかった場合はこちらで決めるという約束になっているんだが、できればあいつが選んだ相手と結婚させてやりたい。なので、お前にはブレイスの手助けをしてやってほしいんだ」


「おいおい、俺には付き添いぐらいしかできないぞ」


 なんせ見た目ではブレイスと同じ年にしか見えないんだからな。

 しかも突然現れた低ランク冒険者ごときの言うことなんて普通聞かないだろう。

 本当に親馬鹿だな……。


 俺が呆れた表情をしていると、ブレドも自分で親馬鹿発言をしている事に気づいてるのか、顔を赤くしながらしきりに頬をかいていた。


「ま、まあ、お前なりにやってもらって構わん。そうだ、剣に関してどうやら悩んでるようだし、体格が近いお前なら何か教えられるんじゃないか?」


「話が脱線してるようだが、親馬鹿のお前に代わってやれる範囲でやってみよう」


「た、助かる。そ、そうだ!ちなみにキリクには白銀の騎士が仕えているコール辺境伯になってもらうぞ」


「おいおい、架空の人物を作り上げるのか?相手に調べらたら不味くないか?」


「問題ない。コール辺境伯は私が子供の時に遊びで作ってそのまま今もいる事になっているんだ。住んでる場所もスノール王国領にある誰も入ることができない北の精霊の森だから誰も探せんよ。ちなみに巷では謎に包まれた人物として有名なんだぞ」


「そうなのか……」


「まあ、とりあえずお前もしばらくはゆっくりしてくれ。服を仕立てないといけないからな。そういえばサリエラ嬢はどうするんだ?」


「ああ……。付いてくるって言ってる」


 魔王絡みと言えなかったのもあるが、サリエラは絶対付いてくるとしがみつかれて大変だったのだ。


「じゃあ、彼女の服も仕立ててもらうか。しかし、ついにお前にも春が来たな」


「彼女は違うぞ。自分の力不足を感じて俺についてきてるだけだ……」


「またまた、そんなこと言って!お前はどこまで照れ屋なんだ。お、そうだ是非、結婚式はうちの神殿を使ってくれ。なんなら仲人はぜひ私が……いや白銀の騎士がするのも盛り上がるな……」


 そう言いながら勝手に妄想を膨らましニヤニヤしだすブレドに、俺はイラッとしてしまい枕を投げつける。

 しかし、剣聖はこちらを見ずにニヤつきながらいともたやすく受け止めてしまうのだった。


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