082 二つの宝具
ブリジットside.
あたいは次から次へと出てくる死霊系の魔物にうんざりしていた。
くそっ、死霊術師がどっかで召喚しまくってやがるな……。
これじゃあ、体力が保たないよ!
あたいはそう思いながら、側で喋れないほど荒い息をして戦っているミナスティリアを見る
やっぱり、謁見の間にいたザンダー達に受けたダメージが思ったよりあるみたいだね……。
くそっ!
あいつら装備を持ち込めない城の中を狙って攻撃してきやがって!
あたいもミナスティリアも後衛をかばうのに何発かもろに喰らっちまったじゃないか。
それからの死霊術師供の相手なんて無茶にも程があるよ!
あたいは心の中でザンダー達を罵倒していると、ミナスティリアがふらつくのが見えた。
「ミナスティリア‼︎サジ、回復をもう一度あの子にかけてやって!」
「回復はもうしましたよ。おそらく体力じゃなくて魔力切れかと思いますね。宝具の剣と鎧がない状態でザンダーや魔族達の攻撃を魔力のみで防いだんですから……」
「ちっ、ファルネリア、死霊術師は後どれくらいいんの⁉︎」
「いっぱいね……。しかも、ドラゴンゾンビやタナクスナイトに隠れてるから狙いにくいのよ」
「でも、あいつらからやらないと次から次へと魔物を召喚されちまう……」
その時、隣りで戦っていたミナスティリアがついに膝をついてしまった。
「ミナスティリア!くそっ、皆んないったん冒険者ギルドまで下がるよ!」
あたいはミナスティリアを抱えて、結界が張られているはずの冒険者ギルドの方に向かう。
しかし、冒険者ギルドに到着が見えた時、あたいは驚いてしまった。
なぜなら張られてるはずの結界が張られてなく、冒険者ギルドの中まで魔物が侵入していたからだ。
「どうして冒険者ギルドに結界が張られてないんだよ⁉︎まさかザンダーの野郎!ここまでするのかよ‼︎」
あたいは叫びながら、近くにいたタナクスナイトを怒りを込めて殴りつける。
なんせ、これだとミナスティリアを休ませてやれないからだ。
あたいらは目の前の光景を見て落胆していると、ミナスティリアがまた武器を構えだした。
「わ、私ならもう大丈夫よ……。さあ、やりましょう」
ミナスティリアはそう言うと魔物達と再び戦いはじめた。
だが、全く回復していないミナスティリアはすぐにふらつき、持っていた宝具レバンテインを落として倒れてしまう。
「ミナスティリア‼︎」
あたいらは慌てて助けに行こうとすると、落ちていたレバンテインが突然、浮かび上がり周りの魔物を斬り裂いてしまった。
その光景にあたいらは驚いていると、更にミナスティリアの着ていたアレスタスの鎧が形を変え、レバンテインの方に飛んでいくと鎧の形をした鞘に変わり二つの宝具は一つの形になってしまった。
「な、何が起きてるんだい?」
「わかりませんが、あの宝具に助けられた事は確かです。やはり、勇者しか装備できない宝具は凄いですね。まるで意志を持ってるように見えますよ」
「サジに同意ね。でも、なんでアレスタスの鎧はミナスティリアから外れたのかしら?興味深いわね」
「ファルネリア、今は悪い癖はひっこめな。それよりも、ミナスティリア、大丈夫なの?」
「……ええ」
ミナスティリアは心ここにあらずという様子で、浮いている二つの宝具を見て呟きだした。
「なんで、私から離れたの?まさか、私から離れていくつもり?そんなの嫌よ……。二つともあの人が私にくれた大切なものなのよ。お願い、もう私から大切なものを奪わないで‼︎」
ミナスティリアは最後の方は叫ぶようにして二つの宝具に手を伸ばす。
しかし、ミナスティリアの指が触れるか触れないかの直前に、二つの宝具は城の方へと飛び去っていった。
「だ、駄目よ!行かないで‼︎」
泣きそうな顔で追おうとするミナスティリアをあたいは羽交い締めにすると、簡単に抑え込むことができてしまった。
「ちっ、あたいでも抑えれるぐらいじゃないかい。ミナスティリア、少し休むよ」
「嫌よ!アレスにもらった大切なものなの‼︎」
「城に飛んでったんだから大丈夫よ。後で一緒に取りにいってあげるから!」
「でも!でも!」
「あんた、勇者だろ!しゃきっとしな!!」
「……う、う、うわあーーーん‼︎」
あたいが思わず一喝するとミナスティリアは遂に泣き出してしまい、そんな姿を見たサジはオロオロしだし、ファルネリアはジト目であたいを見てくる。
あたいはそんな状況に頭をかきながら苦笑いするしかなかった。
全く、アレスさん関連になるとこの子はおかしくなんだよね……。
しかし、宝具がもし城になかったらどうしよう……。
この子、おかしくなっちゃうんじゃないの?
はあ、最悪ブレドさんに相談して、アレスさんの持ち物を何か持ってないか聞いてみるか……。
あたいは泣いてるミナスティリアの頭を撫でながら、そう考え溜め息を吐くのだった。
◇◇◇◇
やれやれ、西側に行くまで霊薬は飲まないと思っていたんだがな。
俺は空に浮かぶ道化師を見ながら溜め息を吐いていると、身体全体に絡みついていた不快な北の魔王の呪いが抑え込まれていくのを感じた。
だが、仕方ない。
あいつを倒すには、俺の大技で倒すしか方法がないだろう。
あれを使った後はキツいんだが俺の身体は耐えれるのだろうか……。
そう思いながら俺は身体中に流れこんでくる膨大な力や魔力を確認し、手に持っていた剣を見つめた。
それにこの剣が大技に耐えられるかどうかだが……。
その時、俺は何かを感じ王都の方を見ると何かがこっちに飛んでくるのが見えた。
あれは魔物か?
いや、神聖な力を感じるな……ってあれは。
それがなんなのかを理解した俺は、飛んでくるそれに向かって叫んだ。
「来い、レバンテインとアレスタスの鎧!」
すると、二つの宝具はスピードが上がりあっという間に俺の目の前に来て空中で止まった。
そんな二つの宝具を見てブレドは何かわかったような顔をするが、ベアードは驚いた顔して俺を見つめて呟いた。
「……キリク、お前はいったい何者なんだ?」
「……俺はシルバー級冒険者のキリクだ」
俺はそう言うと、目の前に浮かぶ宝具を懐かしく思いながらなぞるように触れるのだった。
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