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078 裏切り

「……ザンダー。なぜ、魔族と一緒にいる?それに二人に何をした?」


 ザンダーの隣りには長い角持ちの男の魔族が、気を失っているマルーを肩に抱えて立っており、その近くでは血溜まりの中に倒れているシャルルがいた。


「ああ、そりゃあ、俺が魔族と手を組んで魔人であるマルーを狙ってたからな。それとシャルルなら俺が斬ったぞ。しかし、剣って使いにきいなあ。俺はやっぱりガントレッドが一番だぜ」


 ザンダーは俺の方に剣を投げてくるが、その刃は斬ったばかりなのか血がまだ滴っていた。


「……シャルルに手紙を送った時からそうなのか?」


「……ああ、そうだ。計画途中で死霊術師が狙ってるって聞いてな。だから、拐われたって聞いた時は焦ったぜ。マルーを救い出したシャルルには感謝しないとな」


「じゃあ、なぜ斬った?」


「けじめだよ……それにお前がもうちょい早く来ていれば……いや、何でもねえ……」


 ザンダーは一瞬、何か葛藤している様子が見えたがすぐにニヤッと笑い、白鷲の翼を見る。


「しかし、今の勇者パーティーはたいしたことねえな。あれじゃあ、魔王を取り逃すわけだぜ」


 ザンダーに言われ俺は結界内にいる勇者パーティーを見ると、傷だらけの状態のミナスティリアとブリジットがサジに支えられていた。


「ふん、装備を預けてる状態の時のあたいらを攻撃してくる卑怯者に言われたくないね!」


 ブリジットがザンダーを睨みながら叫ぶが、ザンダーは呆れた顔で頭をかく。


「おいおい、お前ら勇者パーティーだろ?装備ぐらいで左右されんなよ……」


「されるに決まってんだろ‼︎」


「勇者アレスのパーティーは装備無しでも魔族の大軍を叩きのめしたって聞いたぜ」


「アレスさん達と一緒にすんな‼︎あの人達は別格だよ‼︎くそ!ファルネリア、早く解けないのかい⁉︎」


「こんな多重結界、簡単には解けないわよ!もうちょっと待って!」


 ファルネリアはそう言いながら結界を触って壊せないだろうか探っていた。


 多重結界か……。

 あの魔族は結界を張ってる様子はないということは、他に結界を張ってる奴がいるのか?


 俺は道化師の方を見るとザンダー達と仲間割れをしたのだろうか、奇声を上げながら結界を叩いたり体当たりしていた。


 あいつは結界には関与してないな。


 次に一緒に結界の中にいるワーロイとケイを見ると道化師を見て怯えていた。


 まあ、あの二人は堕ちきってないから、力もないので結界なんてものは張れないだろう。

 こういう時にペンデュラムがあれば良かったが、収納鞄は預けてしまったからな……。

 ないものねだりをしてもしょうがないが、どうするか……。


 俺が悩んでいると後ろからフォウが小声で俺に話してくる。


「今、国王と読唇術で会話をしましたが、結界が張られる瞬間、魔族の後ろから力を感じたと言ってましたあ」


「じゃあ、後ろに誰か隠れてるってことか」


「ええ、なのでキリクさん、時間稼ぎをお願いしますよお。私が探って倒しますからあ」


「わかった」


 俺はフォウを隠すように数歩前に出てザンダーに話しかける。


「ザンダー、お前はマルーを使って何をしようとしてるんだ?」


「ああ、そういえばお前に教えてやらないとな。マルーはな、西側の人造魔王になるんだよ」


「西側の人造魔王……。まさか、テドラスのようにか……」


「そうだ。魔人であるマルーなら人族のテドラスより遥かに強大な人造魔王、いや真の魔王になるぞ」


「お前はそれで、魔王になったマルーに力をわけてもらうってわけか」


「察しがいいな」


「だが、今度は魔族や魔物じゃなく、人と戦うことになるんだぞ」


「構わねえよ。後ろの方で毎日くだらねえ書き物なんかしてねえで、また、戦えんだぜ。しかも、魔王からもらえる力はまた前線に戻れるほどだ。そこの勝手に行動するイカれた道化師なんかと比べ物にならない力だぞ」


「ザンダー、そんな話しを信用するのか?」


「実際、前線にいた頃に見ちまったからな。キリク、堕ちし槍使いのバクマは知ってるよな?」


「話だけはな」


 槍術士の加護を持つアダマンタイト級冒険者バクマ。

 性格はクズだったがその腕は一級品と言われており、東側の前線で活躍をしていたが、ある時、魔王軍側に寝返って沢山の冒険者達を殺しまくったらしい。

 その時に付いた名が堕ちし槍使いである。


「あいつとは何度か酒を飲んだ事はある。こう見えても俺は前線で誰にでも慕われてたからな。だが、ある日、あいつは魔王軍側に立ってやがった。闇人にもなっていないのにだぜ。しかも、めちゃくちゃ強くなってやがったよ。おそらくあの時のあいつはダマスカス級の中でも上の強さだったぜ」


「だが、オリハルコン級のお前の敵ではなかったんだろう。お前に倒されたって話だし酒場の歌にもなってるからな」


「おいおい、お前知ってんのか⁉︎恥ずかしいじゃねえかよ‼︎」


 ザンダーは頭をかきながら照れるが、その目は笑っておらず、気配や雰囲気からも俺に攻撃させる隙を全く見せていなかった。


「まあ、それで知ったということか。なら、東側の魔王に強くしてもらえば良いんじゃないか?」


「ふざけろよ。俺はそれを調べにいってこのザマだ。だから、奴の手は借りても手下になるつもりはねえな」


「だから、マルーか。だが、どうやって魔族と接点を持った?ギネルバ商会のタクロムか?」


 俺の質問に答えようとした時、マルーを抱えていた魔族がザンダーの耳元で囁く。

 するとザンダーは残念そうな表情で俺を見た。


「悪いな、キリク。こっちの時間稼ぎは終わったみたいだから、そろそろ退散させてもらうぜ」


 そう言った後、ザンダー達の足元から魔法陣が現れて光りだす。


 ちっ、あの魔族、詠唱なしで転移魔法を唱えてたのか。


「フォウ、どうだ?」


「見つけました!第五神層領域より我に土の力を与えたまえ……ストーン・ランス!」


 フォウの杖の周りから、石の槍が飛び出しザンダーの横の何もない空間に飛んでいき空中で何かに突き刺さった。


「ぐぎゃああぁーーー‼︎」


 絶叫と共にそこから石の槍が胸に刺さった状態の魔族の男が現れてると、仰向けに倒れこんで動かなくなった。


「よし、やりましたよお‼︎これで結界も消えるはずです」


 フォウの言う通り、徐々に皆んなが閉じ込められている結界が薄くなっていくのが見えた。


「さすがはスノール王国で一番の魔導師様だ。だが、もう遅いぜ。俺達は逃げるんで後はよろしくな!」


 ザンダーはまだ、解けてない結界の中で暴れている道化師にニヤッと笑うと、マルーを背負った魔族と共に何処かへと転移してしまったのだった。


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