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077 勇者の真似事

 酒場内は歌と酒で盛り上がり続けていたが、俺はそれについていけないのと宿もとっていなかったので、みんなに挨拶してあれから酒場を出ていた。

 現在、俺はなんとか空きのある宿を借りてベッドの上で休んでいるところである。


 明日は謁見の間か……。


 あの場所には色々と思い出がある。


 まあ、ほとんど悪い思い出しかないんだが……。

 それよりも闇人のことだな。

 本来ならミナスティリア達に任せるべきなのだが、あいつらも忙しいはずだ。

 おそらくマルーを守ってもらえるのは少しの間だけだろうから、その後は冒険者ギルドか良くても城内で守る感じになるだろう。

 だが、そうなると、勇者パーティーが守る程の安心感はなくなる……。

 やはり、マルーの為にもしばらく王都に残り闇人の動きを探るべきだろうか?


 俺はそう考えた後、闇人と行動しているワーロイとケイを思い出す。


 あいつらも闇人の仲間ならマルーも狙っているはずだろうが、おそらく逆恨みで俺のことも狙っているだろう。

 だとするとマルー達と一緒にいた方が良いのかもしれないが、そうなるとスノール王国にしばらく滞在することになり西側の魔王の残滓を調べるのが遅れる。

 はたしてそれで大丈夫なのだろうか……。

 遅れてまた人造魔王なんかが現れたら目も当てられないぞ……。


 俺は人造魔王になったテドラスの事を思い出し溜め息を吐く。


 あんなのはもう沢山だがそれでも……。


 俺はマルーの泣きそうな顔を思い出す。


 全く、どうすればいいんだ……。


 どっちかを取ればもしかしたら、どっちかが最悪の事態を産むしかしれないこの選択に俺は悩んでしまう。

 そんな事を考えていたら、ふと前線にいた頃を思い出してしまった。


 あの時もこういう選択は何度もしたな。

 これじゃあ、今も前線にいるみたいだな……。


 俺がそう思った時、生き場を失っているザンダーの後ろ姿を思い出し、俺はハッとしてしまう。


 おいおい、俺は何を考えていたんだ……。

 もう、加護も力も失ってる俺がマルーを守る?

 それこそ、城や冒険者ギルドで守ってもらった方が安全だろう?

 それに西側に行って魔王の残滓を見つけて、もしも危険な状況だったらどうするんだ?

 霊薬だって短時間しか効果がないし使い続ければ俺の身体もどうなるのかわからないのに、そんな事をいつまで続けるんだ?

 まだ勇者の真似事をしてるなら、もういい加減に目を覚ますべきだろう……。


 俺は天井を見上げながら深く溜め息を吐く。


 まあ、だからって、全て放り投げるわけにはいかないな。

 けじめとして、闇人の件は片付けてから西側には行き、魔王の残滓を調べて何もなかったら身の丈にあった依頼をこなす冒険者キリクの生活に戻ろう。

 そうだ、ナディアに護衛任務や簡単な仕事をもらうのもありだな。

 よし、そうと決まればさっさと寝よう。


 俺は目を瞑り眠ろうとする。

 しかし、考えがまとまったはずなのに気持ちが晴れないこの状態では、結局、朝まで寝付く事ができなかったのだった。



◇◇◇◇



 翌日、俺はマルー達に会いに冒険者ギルドに向かったのだが、既に勇者パーティーとマルー達は城に行ってしまったとのことだった。

 なので倒したアウルベアを渡して換金してもらった後に、俺も城に向かうことにした。

 城に到着すると、どうやら俺のことは話が通っているらしく、すぐに中に入れてもらえたのだが、武器や防具に収納鞄などは入り口で預ずける事になってしまった。

 だが、特別な客人扱いだった為か身体検査まではされず、力のアミュレットや隠し持った魔石や薬類までは取られずに済んだ。


 俺にとってこの中は安全といえないからこれだけでも持ち込めて良かったな。

 なんせ、俺は昔ここの連中に殺されかけたからな。


 メイドに客間に案内され、しばらく待つとフォウが中に入ってきて挨拶してきた。


「いやあ、すみませんねえ。今、先客が来てて対応してるんですよお」


「勇者パーティーだろ」


「ご存知でしたかあ。なので、少し私と話をして時間を潰しましょう」


「それは構わないが、宰相のフォウ殿は王様の側にいなくて良いのか?」


「私の事はフォウと呼んで下さい。ベアードがいますから大丈夫ですよお。それにマルーさん達は流石に冒険者ギルドにはおいておけませんから、問題が解決するまでこの城でしっかりと警護をするって話で纏ってますからねえ。なので、謁見の間での話は形式的なものですよお」


「それなら安心だな。そうなると闇人だが、あれから何かわかったか?」


「いえ、それがさっぱりですよお。それでえ、キリクに手伝って欲しいと思っていたところですよお」


「ああ、良いぞ。闇人の三人のうち二人は俺を狙ってるだろうからな」


「それは厄介なのに狙われてますねえ」


「だから、俺を餌にしてみるのは……」


 俺が話している最中、突然、城内から強大な魔力を感じ、俺とフォウはすぐに反応して辺りを見回す。

 すると、フォウが何かに気づいたのか驚愕の表情を浮かべてある方向を凝視した。


「この魔力の方向は謁見の間ですよお⁉︎何かあったに違いません!」


「俺達も行った方が良いだろう」


「はい。ではキリク、たいしたものではないですがこれを使って下さい」


 フォウは腰にさしていたミスリルナイフを、俺に投げてくる。


「武器を取りに行く暇がなかったから助かる」


「では、いきましょうお!」


 それから、俺達は急いで謁見の間に向かおうと客間から出たのだが、その瞬間、変な違和感に襲われてしまった。


「これは、人払いの結界が使われてますねえ。城の者達がいなくなってますよお……」


「魔術師以上の力を持ってる敵か魔導具持ちがいるってことか」


「結界師だったらまずいですねえ。急ぎましょう」


 それから俺達は謁見の間に向かい、豪華な扉を勢いよく開けて中に入り驚いてしまう。

 何故なら、勇者パーティーとブレドとベアード、そして何故か敵であるはずの闇人のピエールにワーロイとケイが別々の結界に囲まれ身動きがとれない状態になっていたからだった。

 だが、俺はそれよりも更に驚くものを見てしまう。

 それは、結界に閉じ込められていない連中だった。

 おそらく勇者パーティー達を結界に閉じ込めた連中なのだろうが、その一人に知った奴がいたからだった。

 俺はそいつを見て呟く。


「……ザンダー」


 すると、俺に気づいたザンダーはいたずらがバレてしまったような表情で俺を見て笑うのだった。


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