069 鉄腕の英雄
あれから、死霊術師や魔族にも襲われることなく俺達は無事、スノール王国の王都に到着できたのだが中に入った瞬間、早速あるものが俺達を歓迎してくれた。
それは勇者アレス、拳聖オルトス、剣聖ブレド、賢聖グラドラス四人の巨大な銅像である。
ちなみに、フルプレート姿の俺以外の三人は若い時の姿になっており、かなり美化されていた。
いつの間にこんなものを……。
というかオルトスの手足はあんなに長くないし、グラドラスだってあんなごつい体格じゃないだろう……。
というか、入ってすぐこれはかなり恥ずかしいから撤去してもらいたいな……。
俺は溜め息を吐きながらそう思っていたが、王都の中を歩いていてすぐにそれは無理だということを理解した。
何故なら至る所に、俺達を模した飾りが沢山付けられていたからだ。
「やはり魔王を倒した勇者パーティーの人気は凄いわね。店のショーケースには必ず勇者関連のものがあるし。あ、あの勇者の剣っていうパン食べてみたいわ。それにグラドラス公認シチューも!」
「ぼくはオルトスの髭っていう綿飴が食べたいよ。それとブレドの脳筋パイも!」
「二人とも腹が減ってるなら冒険者ギルドに行くまでに何か食べていくか?」
「ぜひに‼︎」
「うん‼︎」
あまりにも二人が力強く頷いたので、若干引き気味になったが、それだけ腹が空いたのだろうと思い、美味くてボリュームがあると人気な食堂に二人を案内することにした。
食堂に入ると早速、二人は沢山料理を注文していき料理が運ばれると、がっつくように食べ始めた。
「レクタルから全然……まともなものを食べてなかったから……生き返るわ!」
「うん!凄く美味しいよ!」
「そうか、良かったな……」
俺はそう言いながら更に一品注文を追加する。
「スノール王国領は季節の半分が冬に近いから、キノコと鹿肉の煮込み料理がお勧めだ。食べておくといい」
「キリク……あなた良い人ね」
「うん、キリク、ありがとう」
「気にするな」
俺はそう言いながら鳥の唐揚げをつまんで食べ、目を細める。
前は持ち帰りで部屋に持っていって食べていたが、やはりできたてが一番か……。
俺は勇者時代を思い出す。
あの時の俺はフルプレート姿だったので、食事などは店内で食べることはなかったのだ。
だから、だいたいいつも冷めた料理を食べていた。
それに、あの時は食べられるなら何でも良く、味なんてどうでも良かった。
だから、食事を囲んで楽しむという行為が理解できなかった。
だが、今なら少しだけわかる気がする。
サリエラやナディア、そして、目の前で美味しそうに食べている二人のおかげか……。
もっと早く知っていたら、こうやってテーブルを囲んであいつらと食べていた可能性もあったんだな……。
俺は店内に飾らている絵の中にいる太々しい三人組を見てそう思うのだった。
◇◇◇◇
全ての料理を主にマルーとシャルルが平らげた後、俺達は冒険者ギルドに向かったのだが、砦の様な冒険者ギルドを見た二人は感嘆の声をあげた。
「うわあ、ちょっとした要塞ね……」
「すごーい!大きいね!」
「ここの冒険者ギルドはスノール王国にある冒険者ギルドをまとめる本部だからな。それにここの冒険者ギルドはネイダール大陸の中でも一番大きくて立派な造りをしているんだ」
「「へーー!」」
シャルルとマルーは俺の説明に驚き、あらためて冒険者ギルドを見回していると、中から右肘から先がない赤毛の体格の良い大男が出てきて駆け寄ってきた。
「おーい!シャルルにマルー!」
「あっ、ザンダーさん!」
「ザンダーおじさん!」
シャルルとマルーも駆け出し三人は嬉しそうに抱き合う。
「二人共、ちゃんと来れたようだな」
「キリクのおかげよ」
「うん、キリクのおかげ!」
二人が俺に手で来いと合図したので向かうと、ザンダーと呼ばれた男は俺に深々と頭を下げてきた。
「二人をここまで連れてきてくれてありがとよ」
ザンダーにそう言われ俺は首を横に振る。
「いや、気にしなくていい」
俺はそう言いながら内心驚いていた。
まさか、シャルルとマルーの知り合いがザンダーだとは思わなかったからだ。
ザンダーは俺がまだ勇者だった頃、東側を主軸に前線でガントレッドを武器に活躍し、後続の勇者ミナスティリアが育つまで前線を抑えていた英雄の加護を持つ猛者なのだ。
ちなみに勇者時代の俺とザンダーは面識がない。
「……まさか鉄腕の英雄に会えるとはな」
俺がそう呟くと、ザンダーは右肘から先がない右腕を軽く振ってくる。
「おいおい、ボロボロの身体に魔物に利き腕を喰われちまった俺は、今じゃただの副ギルド長だぜ」
ザンダーはそう言って苦笑するが、俺は全く笑えなかった。
欠損か……。
本来なら聖女の加護を持つ者に頼めば腕も復元再生できるはずなのだが、聖女は今現在見つかっていない。
俺や仲間達も一時期、聖女を探す為に大陸中を探し回ったのだが結局見つからなかったのだ。
「……だが、王都の冒険者ギルドで副ギルド長をやっているのも凄いと思うんだがな」
「そうよ、前線で活躍して今は副ギルド長ってザンダーさんは誰よりも尊敬されるべき人よ!」
「うんうん」
「いやあ、そんなに褒められると照れんなあ!まあ、ここじゃなんだから中入って話そうぜ」
それから俺達は副ギルド長室に移動した後、ザンダーに今までに起きた出来事を説明した。
「やっぱり、マルー達は狙われちまったか……」
「ザンダーさんの言う通りだったわ。おかげですぐに対応ができたけど叔父さんまでは救い出すことはできなかった……」
「いやいや、マルーが救い出せたんだぜ。十分だろ」
「でも……」
「シャルル、完璧にできるやつなんかこの世界にいねえよ。そんなやつがいたらぜひ知りたいぜ。なあ、キリク」
「……そうだな。ところで副ギルド長はマルー達が狙われるのがわかってるような感じだったが、何か事前に情報があったのか?」
「ああ、魔人を狙ってる奴らがいるらしいから気をつけろって知り合いが情報が流してきてな。念の為、シャルル宛に手紙を送ったんだ」
「ザンダーさんから手紙が来て次の日に起きたのよ。本当に手紙が遅れなくて良かったわ……」
「なるほど、ちなみにその知り合いとは連絡は取れないのか?」
「それが、情報をくれた日から音信不通だ。結構、やばいところに潜ってたからな……」
「そうか……。もしかしたら闇人がなぜマルーを狙うのか辿れるかと思ったが残念だな」
「まあ、もうそんなの関係ねえよ。ここにいればマルーも安心だしな」
「ザンダーさん、これから私達どうすれば良いの?」
「おお、この町に住めるように上に掛け合うから安心してくれ」
「俺の方でもツテを使ってみるよ」
「お、キリクは優しいじゃねえか。お前まさかどっちかに惚れたか?いや、両方か⁉︎」
「な、なに言ってるのよ!ザンダーさん‼︎」
「そ、そうだよ!」
突然、ザンダーが変なことを言ったのでシャルルとマルーはあたふたとしはじめる。
そんな二人を見てザンダーはニヤニヤしながら俺を見てくるのだった。
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