068 和解
フードを下ろしたマルーを見て、マリィとルナは驚いた表情をした。
「これって……」
「間違いなく魔人ですね」
「マリィにルナはやはり魔人の事は知っていたか」
「うん、私は遠目にしか見たことないけど迷宮都市にも数名いるからね。ルナは話したことあるんだよね」
「はい、だからマルーさん、安心して下さい。私達はあなたの味方です」
「そうそう、安心して!」
「……うん!」
マリィとルナに言われマルーは嬉しそうに頷き、それを見たシャルルはほっとした表情になる。
それから四人は改めて自己紹介しあっていたので、俺は落ちてる武器を回収しながら情報になりそうなものがないか探したが、何も見つからなかった。
……ギネルバ商会か。
魔族と繋がっているのはおそらくタクロムという商人で間違いなさそうだが……。
俺は話を終えていたマリィに声をかける。
「マリィ、ギネルバ商会のタクロムについて何か知らないか?」
「知ってるわよ。ギネルバ商会の事実トップにいた奴で人を騙して借金漬けにしたり、奴隷落ちさせてた悪人よ。それとクラン、冷たい月を使って殺しも受けおっていたって商人達の間では噂になってたのよね。ただ、まさか魔族とまで関わっているなんて思わなかったわ」
話を聞く限り生粋の悪人だな。
まあ、そういう事を多くしているうちに魔族が接触してきたのかもしれないな。
もしくは自ら売り込んだか……。
「なるほど、なら、ギネルバ商会にも注意しておいた方がいいな」
俺かそう言ってシャルルを見るとうんざりした顔になる。
「正直、注意しないといけないのが沢山ありすぎて参るわよ」
「まあ、王都スノールに行くまでだ。それまで辛抱しろ」
「ええ、マルーの為になら私は頑張れるわよ」
シャルルはそう言うとマルーに抱きつき頬をすり寄せる。
「わっ!シャルル、くすぐったいよ!」
「すり減った精神力をマルーの可愛さで回復させてるのよ。キリクもどお?マルーは柔らかいわよ」
「な、な、な、何言ってるの!シャルル!!」
「やだあ、真っ赤になっちゃってえ。可愛いんだから。ねえ、キリクもそう思うでしょ?」
「そうだな。それに、そうやってるとお前達、美人姉妹に見えるな」
「えっ……」
「あうっ!」
「嘘っ⁉︎」
「信じられないです……」
シャルルとマルーは真っ赤になりながら俯いてしまい、マリィとルナはなぜか驚いて俺を見てくる。
「なんだ?俺だって一応そういう事は言えるぞ」
「キリクって仏頂面だからそういう事を言うタイプには……ねえ、ルナ」
「は、はい、私達とパーティーを組んでる時は……あっ……」
ルナは話をしていて急に黙ってしまった後、俺に頭を下げてきた。
そんなルナを見てマリィも俺に頭を下げくる。
「キリクさん、あの時は失礼な態度をとってすみませんでした」
「キリク、ごめんなさい」
「別に俺はもう気にしてないぞ」
「でも、私達はワーロイやケイの言ってる事を信じてしまいました」
「信じる?何の話だ?」
「パーティーの道具購入やメンテナンスはワーロイ自身がやってるのに、キリクさんが周りに自分がやってるって言いふらすから困ってると……。そこは私達もキリクさんが実際にやっていたのを知ってますから、ワーロイがやっていたのは全く信じてなかったのです。でもケイがキリクさんに襲われそうになったと言ってきた時は流石に私達も信じてしまって……」
「あの時、私とルナはケイの迫真の演技に騙されたのよ。しかも、私達がキリクを問いただしにいこうとしたら泣きながら止められて……。結局、あれも演技だったのよね。キリクがパーティーを去った後、二人の態度で嘘だったんだなってなんとなくわかっちゃったのよ……」
「なるほど、そういう事があったから、二人は俺に会話すらしなくなったんだな」
「本当にすみませんでした」
「ごめんね、キリク」
「何度も言うようだがもう気にしてないぞ」
俺がそう言うとマリィもルナもほっとした表情になる。
「それに悪いのはワーロイとケイだしな。それより、二人はこれからどうするんだ?」
「私達は他の冒険者達と合流する為にいったんネドに戻るよ」
「わかった。二人共気をつけろよ」
「私達は大丈夫ですよ。ミナスティリア様の勇者パーティーも動きだしてますからね」
「そうか、今回の件は魔王関連だし動くのは当然か」
「ええ、だから私達よりマルーさん達の心配をしてあげて下さいね」
「わかった、そうする」
「では、私達そろそろ行くね!」
「これからの三人の無事を祈ります」
「マリィにルナ、二人共、助かったわ」
「またね!」
俺達に見送られながら、マリィとルナは来た道を歩きはじめる。
そんな二人の姿をシャルルもマルーも名残惜しそうに見ていたが、俺がまたいつか会いにいってやれば良いと言うと、嬉しそうに頷くのだった。
その後、二人の姿も見えなくなったので俺達も王都スノールへ向けて歩きだした。
「そういえば、ネドは身分証とかは必要なかったがスノール王国は何か必要になるぞ。それに身体検査も場合によってはあるが大丈夫か?」
「大丈夫、この特別許可証があるから」
そう言うとシャルルは国王のサインも入った門で見せるだけで素通りできる、スノール王国の王都のみに使える冒険者ギルド専用特別通行許可証を見せてきた。
「その通行許可証……そういえば王都にある冒険者ギルドに知り合いがいるって言ってたが、二人の知り合いはお偉方なのか?」
「ええ、しかも東側の前線ではかなり有名な冒険者だったから、もしかしたらキリクも知ってるかもね」
「東側の前線にいた冒険者か……」
つまり何かしらの理由で戦えなくなったという事か。
前線にいる冒険者が後ろに下がるということは色々な理由があるのだ。
年を取りすぎた、金を十分稼いだ、名声を得た……そして戦えなくなったかだ。
まあ、ギルド職員になっている元冒険者は大概、冒険者だったことを忘れられない……又は忘れたくないと思ってる奴が多いからな……。
俺は冒険者ギルド内で見かける元冒険者らしきギルド職員を思い出す。
彼らが現役冒険者にたまに向ける様々な思いを込めた視線を。
まあ、俺に対しては加護無しで大丈夫なのかなど哀れんだ目で見てくるのが多いけどな。
レクタルにいたギルド職員達の俺を見る目を思い出し、シャルル達にはバレないよう苦笑いするのだった。
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