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064 ネドからの脱出2

「私達はレオスハルト王国領の南東にある小さな田舎街で細々だけど平和に暮らしていたのよ。だけど、数ヶ月前にそこに死霊術師達が襲ってきて先祖帰りしてた伯父とマルーが連れさられてしまったの。それで戦える私は死霊術師達の後を追ってマルーだけは取り戻す事はできたんだけど……伯父はレクタルで不死の領域に繋がる門を開く為の生贄にされてしまったの……」


 なるほど。

 魔人は門を開く為の材料になるのか。


「となると、まだ連中はマルーを使ってどこかで門を開こうとしてるのか。だが、これで死霊術師の狙いがわかった。では、あの道化師の闇人はどうなんだ?」


「あれも死霊術師の仲間でしょう。それとも違うっていうの?」


「闇人は死霊術師と仲が悪い。というか死霊術師をゴミにしか見てないから、まず手伝う事は無いはずだと思うんだが……」


「知らなかったわ。キリク、あなた詳しいのね」


「ま、まあ、俺も冒険者だしそれなりに学んでるからな。しかし、闇人か……あいつら闇の力に耐えられなくて大概気が狂ってしまうんだよな……」


「だから、言動がおかしかったのね……」


「闇人は基本的にダークエルフ以外はまともに会話はできないと考えていい。シャルル、次にあの道化師に会ったら遠慮なくすぐに攻撃しろ」


「わかったわ」


「とりあえず魔族と死霊術師は違う目的で動いてると考えた方がいいが……まあ、今はその事を考えてもしょうがない。まずはここからの脱出だ。マルー、話を戻すが幻惑系の黒魔法は使えるか?」


「恐怖と沈黙なら。範囲は狭いけど……」


「武器付与はできるか?」


「うん、できるよ。でも、ぼく戦いなんかしたことないよ……」


「問題ない。マルーは武器付与をしてくれればいいんだ。よし、すぐに町の外に出よう」


「キリク、動くなら夜の方が良いんじゃないの?」


「夜だと闇人は強くなる。それなら人と戦った方が楽だからな。まあ、それに上手くいけばあまり戦闘をしなくても町の外には出れる」


 そう言った後に俺は収納鞄から、小袋を取り出し魔石を一つ入れた後に部屋に投げる。


「キリク、それは何?」


「ある程度、時間が経つと大きな音と煙が出る簡易魔導具だ。これを至る所に投げて町を混乱させる。それじゃあ二人共出るぞ」


「わかったわ」


「うん」


 俺達は空き家を出ると、しばらく人気のない通路を通りながら町の外に向かっていく。

 そして、大通りが見え始めたその時、空き家があった方から大きな音と煙りが上がり始めた。


 よし、やるか。


 俺はフードを被り大通りに行くと、近くにいた冒険者達に聞こえるように喋りはじめる。


「手配書の連中がどうやら何かしたらしいな。俺も仲間を連れて行けばもしかしたら漁夫の利ができるかもな……」


 俺がそう言い終わると冒険者達は顔を見合わせニヤリと笑うと、空き家の方に走って行ってしまった。

 それから同じ事を何度か繰り返し周りに冒険者がいなくなったのを確認すると、俺は通路に隠れてた二人と合流し町の外に移動し始めた。

 しばらく歩いていると、また別の仕掛けが起動して大きな音と煙りが上がっていく。


「順調ね。これなら行けるんじゃない?」


「最初の方で罠と気づいた連中もいるかもしれないから、早めに行くぞ」


「それなら、あの壁を登った方が楽じゃない?」


 シャルルはネドの町を囲う大人の背ぐらいある壁を指差す。


「いや、あの壁には外敵や犯罪者を通さない結界か、壁を登って逃げても追跡できる魔法のどちらかが組み込まれている可能性がある。だから、壁を登るのはあまり得策じゃない」


「えっ、そうだったの?だから、すぐ捕まったのね……」


「なんだ、お前やった事あるのか?」


「子供の頃に一回だけね。あの時の衛兵長の拳骨は死ぬかと思ったわよ」


「本来なら独房行きだ。拳骨だけで済んだんだから衛兵長に感謝しろよ」


「そうだったのね……」


「シャルルは今もお転婆だからね。ぼく見てて心配になるよ」


「あ、酷いわね。ねえ、キリク、マルーってねえ、今だに夜……」


「わあ!わあ!」


 マルーは声を上げながらシャルルの口を塞ごうとジャンプする。

 そのおかげで入り口近くまで来たのに周りからかなり目立ってしまった。


「おい!あいつら三人ともフードをかぶってなんか怪しくないか?」


「手配書の連中かもしれないな」


 入り口近くにいた冒険者パーティーが俺達を怪しみながら見てきたので、俺はシャルルとマルーを睨むとすぐに目を逸らされた。


 全くこいつらは……。

 こうなったら少しタイミングが早いがやるしかないな。


「おい、始めるぞ」


 俺が木の棒を取り出すとマルーが慌てて手をかざし魔法を唱えた。


「あ、暗黒領域より我に恐怖の力を与えたまえ……エンチャント・フィアー!」


 魔法を唱えると木の棒が黒く輝く。

 それを見た冒険者達は驚き各々武器を抜こうとしたが、既に俺は彼らの間合いに入ると、木の棒で適当に身体を叩いていく。

 すると、彼らは恐怖の表情を浮かべたり叫んだりしながら散っていってしまった。


「このまま外まで走るぞ」


「わかったわ。マルー手を繋ぐわよ」


「うん!」


 それから俺達はこちらに気づいた冒険者や衛兵に恐怖を植え付けながら町の外へと脱出するのだった。


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