063 ネドからの脱出1
「なっ、煙玉だと⁉︎」
「目がっ!目がああぁーー‼︎」
俺が投げだ煙玉は冒険者達の足元で煙を撒き散らしながら彼らの視界を奪い、それと同時にシャルルはすぐにマルーを抱き上げ走りだす。
そんな二人を俺も追うように走り出した。
それから、しばらく町中を走り続けたが、空き家が沢山ある場所を発見したので、いったんその一軒に隠れることにした。
「とりあえずは撒けたようだが、昨日の今日で手配書が出るとはな」
「……まさかファレス商会がしたのでは?」
「いや、ナディア達とは短い付き合いだが、俺達に突然こういう事をするタイプじゃない。それに、ナディアにとって俺は一応、命の恩人だからな」
それに、ナディアは俺と白銀の騎士とのやり取りで、俺がスノール王国の上の連中と関わっている事に気づいてるはずだ。
その俺を一緒に手配書に入れるのはスノール王国で商会をやっているファレス商会にはデメリットしかない。
つまり、今回の件には関わりはないだろう。
「キリクが言うなら信じるわよ。私達にとってもあなたは命の恩人だから。ね、マルー」
シャルルに言われ、座っていたマルーは小さく頷くが、すぐに立ち上がるとフードを弄りながら俺の方を向いて喋りだした。
「……キリク、どうして?なんで?」
「何だ?」
「あの人達、魔族って言ってたよ……」
「そういえばあいつらお前をそう言ってたな」
「……そうだよ。ぼく魔族なんだよ」
「お前が認めるということは、あいつらが言ってた事は本当だと言う事か。なら、お前は黒魔法ができるのか?」
「……えっ?」
「マルー、お前は黒魔法は使えるのかって聞いたんだ」
「……使えるよって、そうじゃないよ!ぼく魔族だよって言ってるの!」
「ああ、聞いたよ。それで黒魔法が使えるならネドを出る為に使ってもらいたいんだが。おい、どうした?」
何故かマルーは身体を震わせた後、大声で叫んだ。
「魔族!魔族なの‼︎ぼく魔族‼︎」
「声がでかいぞ。シャルル、こいつを静かにさせろ」
俺とマルーのやり取りを静かに見ていたシャルルは急に腹を押さえて変な顔をし始める。
だが、遂には吹き出すと床を叩き笑い出した。
「ぷはっ!だめ!もうだめ!ははははっ‼︎」
「おい、お前もか……」
「ははっ!はあ……ごめんごめん。だって二人のやりとりがあまりにもおかしかったから」
「別におかしくないだろう。マルーも何か言ってやれ」
そう言いながらマルーを見ると後ろを向いて座りこんでしまっていた。
そんなマルーの側にシャルルは行き隣に座って声をかける。
「ほら、マルー、あなたの負けよ」
「べ、別にぼく勝負なんてしてないよ!」
「したわよ。そして見事に負けたの。ただ、私が予想してた斜め上の事をキリクは言ってきたけどね。私的には魔族だろうが気にしないぞ、大好きマルーぐらいしか言ってこないと思ったのにね……ぷっ!」
シャルルはまた腹を押さえて笑いながらマルーの背中を叩く。
マルーも負けじと何度もシャルルを叩くが、明らかに威力はシャルルが上の様で、途中からマルーは逃げだして俺の後ろに来て隠れてしまった。
「あ、酷いわねー」
「シャルルが馬鹿力なんだよ!」
「マルーが元気になる様に私の力を入れてあげたのよ。だから、元気になったでしょ?」
「うっ……」
「それと、キリクに見せてあげたら?」
シャルルに言われ、マルーはゆっくりと立ち上がると俺の方を向いてフードを下ろす。
すると、その下から現れたのは紫の長い髪に白い肌、そして額から伸びた長い角を持った可憐な少女だった。
「肌が白い……マルーはハーフって事か?」
「違うよ。ぼくみたいなのは先祖がえりって言うんだって」
「ちなみにマルーの家族は一人を除いて皆んな人族と変わらないわよ。私も一応、親族なの」
「なるほど。先祖がえり……覚醒遺伝で生まれてきたのか。なら、魔族じゃなくてハーフに近い魔人じゃないか。」
「え、魔人って何?」
「私も初めて聞くわ。皆んなマルーの事は魔族って言ってたからそう思ってたわよ」
「魔人はこの大陸でも数が少ないから一部の者達しか知らないんだ。ちなみに魔人は魔族の力と人の力を両方持った存在だ。マルーは加護があるだろ?」
「うん、ぼくは治療師の加護を持ってるよ」
「回復系が使える治療師の加護に魔族が使える万能な黒魔法か。優秀すぎる人材だな」
「ほ、本当?」
俺の言葉にマルーは嬉しそうな表情をするが、すぐに落ち込んでしまい、自分の髪を弄り始める。
そんなマルーの頭に手を置きながら俺は言う。
「まあ、そのフード付きマントの魔導具以外にも沢山姿を隠す方法はある。ものによっては顔を隠す必要だってなくなるからな。それに最悪は俺が安全な場所に連れて行ってやる。だから、色々と将来の事は考えておけ」
「将来の事、考えて良いのかな……」
「当たり前だろ。だが、まずは今の状況をどうにかしないとな。その為にはなぜ死霊術師と魔族に狙われているのかを俺に教えてくれ」
俺がそう言うと、シャルルはマルーに目を合わせて頷くと俺に話しだした。
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