062 手配される元勇者
あれから俺達はネドに戻り、ナディア達が宿泊している所とは別の宿に行き休んでいた。
俺はいつでも動ける様に色々とは準備をしているとシャルルが話しかけてきた。
「どうしてファレス商会と合流しなかったの?」
「わざわざ、あそこを巻き込む必要はない。それにまた狙われるなら少ない人数で移動した方が良い」
「……確かにそうね」
「それにネドに着いた時、複数の視線に気づいたか?」
「……ええ」
「ネドの夜はガラが悪くなるらしいが、明らかに一部から異質な視線を感じた」
「まさか、ここにも敵がいるって事⁉︎」
「わからないが、ここはどこも危険そうだし怪しい。明日は明るくなる前にここを出た方が良いだろう。少し道を外れながら、王都に行くが良いな?」
「ええ、私達もそのつもりだったから。でも、キリクは良いの?私達といたら危険よ……」
「死霊術師に魔族が絡んでるなら見過ごせない。この事は王都の冒険者ギルドに報告するからな」
「……ええ。私達が行く場所も王都にある冒険者ギルドだから」
「わかった。では、後は俺が見張りをしておくから明日の朝まで休んでおくといい」
「私なら大丈夫よ。三日は寝なくても平気だから。キリクの方こそ休みなさいよ」
「俺はそこまで疲れていない。それにお前がマルーを守るんだろう。なら、休める時に休んで体調は万全にしておけ」
俺がそう言うとシャルルは既に横になって寝ているマルーをしばらく見つめた後、頷いた。
「……わかった。お言葉に甘えて少しだけ休ませてもらうわ」
そう言うとシャルルはマルーの隣で横になり目を瞑る。
すると数分もしないうちに寝息が聞こえてきた。
やはり戦い続きで疲れてたか。
少しでも休めれば良いんだがな。
俺は寝息をたてている二人の様子を見た後、窓際に椅子を持って移動する。
こちらを監視する様な気配はないから今のところは大丈夫そうだが……。
しかし、死霊術師と闇人から狙われる存在か。
俺はベッドでフードを被ったまま寝ているマルーを見る。
相当、怖い思いをしていたのだろう、部屋に入り、ベッドに横になったと同時に気を失うように寝てしまったのだ。
やれやれ。
想像しているより大事にならなければ良いが……。
俺はそう考えた後、深く溜め息を吐くのだった。
◇◇◇◇
見張りを続け、空が少しだけ明るくなった頃にシャルルが起き出してきた。
「どうやら、襲撃はなかったみたいね」
「ああ、少ししたら出る。簡単なものを用意するからマルーを起こしてくれ」
「わかったわ」
シャルルはマルーを揺するとすぐに起きて背伸びを始めたのだが、途中で俺に気づくとなぜか慌ててシャルルの後ろに隠れてしまった。
そんなマルーを見てシャルルはニヤニヤしながら俺を見てくる。
「キリクって独り者?」
「……ああ。それがなんだ?」
「いえ、ちょっと知りたかったのよ。ね、マルー」
そう言いながらシャルルはマルーを引きずり出し俺の方に連れてくる。
「ま、待って!」
「マルー、ここに座りなさい」
シャルルはマルーを俺の隣り座らすと、少し離れた位置に自分も座った。
「シ、シャルル……」
マルーは一瞬、俺の方を見るがオロオロしだし最後はフードを押さえ勢いよく下を向いてしまった。
それを見た俺はフードの下を見られるのが相当嫌なのだろうと理解する。
もしくは俺の悪い噂でも信じていて嫌ってるのかもしれないか。
まあ、どちらにしろ俺が近くにいない方が良いのだろう。
「……どうやら俺は離れた方が良さそうだな」
俺がそう言って立ち上がろうとしたら、マルーは俺の手を掴み首を横に勢いよく振り、か細い声で言ってきた。
「……違う」
「……わかった。じゃあ、食事にしよう」
「「食事⁉︎」」
俺の言葉に二人はもの凄い反応をする。
「あ、ああ……。たいしたものじゃないが」
俺はそう言いながら、水と携帯用の硬いパンにチーズとハムを挟んだものを二人に渡すと、二人は朝だと言うのに勢いよく食べ始めてしまった。
今まであまり食事を摂っていなかったという事か。
「俺は見張り中に食べ過ぎたから、これも分けて食べるといい」
不憫に思った俺の分も渡すと二人は大喜びして食べ始める。
そのがっつく様子を見て、俺は王都に着いたらもう少しまともな食事をさせてやろうと思うのだった。
それから食事を済ませた俺達は宿を出て、街の外へと向かったのだが、しばらくすると俺達の前に立ち塞がる者達が現れた。
「おい、こいつらそうじゃねえか?」
「だよな」
そいつらはガラが悪そうな格好をしていたが、雰囲気からして冒険者だった。
何故、冒険者が?
俺が不思議に思っていると、そいつらのうちの一人が手に持っていた紙と俺達を交互に見て頷いた。
「皆んな、こいつらで間違いないよ!」
「当たりか」
「おい、てめえら、おとなしくしろ!じゃないと痛い目を見るぜ」
「そうだ!おとなしく投降しろ!」
「はっ?投降って何よ?」
シャルルが驚いて聞くと、紙を持っていた女がご丁寧に俺達に見えるように紙を見せてくる。
そこに書いてある文章までは見えなかったが、そこには俺とシャルルの顔が描いてあった。
何故、俺達の手配書が……。
シャルル達とは昨日あったばかりだぞ。
まさか、あの道化師が……。
いや、闇人が手配書を出すなんてないな。
じゃあ、誰がこれを?
俺が手配書を見ながら考えていると、冒険者達は武器を抜きマルーに向けて叫んだ。
「魔族め!俺達の町に入りやがって!」
「てめえらも、魔族を町に入れて中から破壊活動しようってか⁉︎させねえぜ!」
冒険者達の言葉に一瞬意味がわからなかったが、シャルルがマルーを後ろにかばいながら剣を抜いた事でようやく理解することができた。
なるほど、だからマルーはフードを取れなかったのか。
……しかし、魔族か。
どうする……。
シャルルの後ろで震えているマルーを見る。
すると、フードの下でわかりにくかったがマルーは震えながら泣いているようだった。
ふう……。
俺はシャルル達と冒険者の間に立ち壁になりながらシャルルだけに聞こえる大きさで喋る。
「シャルル、マルーを抱えろ。俺がこれからある事をしたらすぐに後ろを向いて走れ」
「……わかったわ」
「おい、てめえは冒険者だろう!少しは人の心が残ってるならおとなしく投降しろ!」
「そうよ、こんな寂れた小さな町だけど、私達には大事なとこなの!絶対に守って見せるわ!」
どうやらガラが悪い見た目と違って正義感があるらしい。
そんな彼らに俺は心の中で詫びながら、緊急用のものを入れているポケットから煙玉を出すと俺は地面に勢いよく叩きつけたのだった。
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