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059 追われる二人

「やれやれ、この商会は強引だな」


 あれから俺はノースハウストの町を出たところで待ち伏せしていたナディアに捕まり、商隊の馬車に乗ってスノール王国の王都を目指していた。


「どうせ行き先が一緒なんだし良いじゃない。それに馬車代やこれから行く街の宿代に食事代はうち持ちなのよ」


「ただ程、怖いものはないな」


 もう、魔王信者に襲われる事もない為、今回、俺は護衛ではなく客人扱いで乗せてくれことになった。

 ただし聞こえは良いが、何かあれば駆り出される可能性があるわけなので、いうなれば俺は保険扱いになるのだ。


「手伝う場合は、しっかり金を取るからな」


「それはもちろんよ」


 ただし、何もなければ金は払わないってやつだな。

 流石は商人だ。


 俺の考えを理解しているのかナディアは得意顔をしてきたので、降参のポーズをするとニヤッと笑われた。

 そんなやりとりをしていたら、商隊長のグエンが緊張感のある声で叫んできた。


「ナディアお嬢さん、前方を見てくれ!」


「何?賊なの?」


 ナディアと俺は馬車から立ち上がり前方を見ると、先の方で黒いローブを着た集団がフード付きマントを着た親子ほどの背丈がある二人組を追っかけていた。


「あの黒いローブって、もしかして死霊術師じゃない⁉︎」


「どうやらその様だな。ナディア、あいつらは俺一人でやるから馬車を止めて待ってろ」


「わかったわ」


 俺は馬車を飛び降り、死霊術師達に向かって走り出す。

 すると、すぐに何人かの死霊術師が俺に気づきナイフを振り回しながら襲ってくる。

 しかし、たいした相手ではないと判断した俺は剣を抜くと、駆け抜けながら次々と死霊術師を斬り伏せていく。

 すると逃げていた二人組の背の高い方が俺に気づき、方向転換してこっちに向かってきた。


 どうやら、気づいたようだな。


 俺は二人が来る間、弓を取り出し死霊術師を撃ち抜いていく。

 残り五人程になったところで逃げていた二人組が俺のところに辿り着いたのだが、小さい方は勢いよく地面に倒れ込んでしまった。

 だが、背の高い方は助け起こすこともせず、俺の側に駆け寄ると礼を言ってきた。


「助太刀感謝するわ。奴らは死霊術を使うから気をつけて!」


「大丈夫だ、奴らのことは知ってる」


 俺はそう言った後に二人の死霊術師を撃ち抜く。

 

 残りは三人か。


 俺は離れた場所にいた三人に矢を射ろうとすると、三人の死霊術師達は慌てて持っていた短杖を掲げて叫んだ。


「「「不死領域より我に死の力を与えたまえ……サモン・アンデット!」」」


 死霊術師達が呪文を唱え終わると俺が倒した死霊術師達の死体が立ち上がり、ふらふらしながら俺達に向かってきた。


 ゾンビ召喚か。

 この程度なら、対死霊薬は使わなくても大丈夫そうだな。


 俺はそのまま三人の死霊術師を矢で撃ち抜くと、剣を抜いて目の前のゾンビの首を刎ねる。

 そして次のゾンビにいこうとしたら、背が高い方が剣を抜いて次々とゾンビを倒してしまった。


 どうやら、守る者がいなければこいつ一人でも死霊術師達は倒せてたみたいだな。

 だが、死霊術師に追われるとは、こいつらいったい何者なんだ……。


 俺は本人達に聞くべきか迷ったが、その前に何か情報が出るかもしれないと思い、死霊術師の遺体を調べることにした。

 しかし、全て調べたが呪術道具以外何も出てこなかった。


 やはり、本人達から聞くべきか。


 俺はそう思い、二人の元に歩いていこうとしたら、背の高い方がフードを取って俺の方に駆け寄ってきた。


「あなたのおかげで助かったわ。私はシャルル、そしてこの子は訳あって顔を出せないけどマルーよ」


 赤い髪を後ろに無造作に留めた女、シャルルはそう言うと、フード付きマントを着た小さい方のマルーは慌てて立ち上がり頭を何度も下げてきた。

 その為、俺は手で制しながら質問する。


「そんなに頭は下げなくていい。それより、なぜ死霊術師に追われていた?」


「……それは、私達が死霊術師達のところから逃げてきたからよ。彼らは私達を生贄にしようとしてたの」


「生贄か……。ちなみにお前達はどこから来たんだ?」


「レオスハルト王国領の一番端にある小さな町よ……。最近、レクタルが死霊術師に襲われたでしょ。あれの生贄に捕まってしまったのよ。それ以外は何もわからないわ」


「なるほど、大変だったな」


 俺はそう言ってシャルルの目を見ると、さっと逸らされてしまう。

 それを見た俺は何かを隠していると確信した。


 ふむ、話が本当なら二人はレクタルからここまで追われていた事になる。

 要は特別な生贄ってことになるな。


 俺はそう考えながらマルーを見ると、

 フードの所為で表情はわからないが、若干、身体が震えていた。


 やれやれ。

 相変わらず死霊術師はクズばかりだな……。

 しかし、これで奴らはまた何かしようとしている事がわかった。

 これは早めに冒険者ギルドに報告した方が良さそうだな。


 俺は遠くに控えているナディア達に合図を送った後、シャルル達を連れていく。

 そして、ナディアに事情を説明すると快く二人を馬車に乗せてくれることになった。

 

「しかし、大変だったわね」


「……いえ」


 先程からナディアが探りも兼ねて二人に話を振っているのだが、答えるのはシャルルのみであり、隣りにいるマルーは下を向いて極力存在を消そうと努めていた。

 ただ、時々、俺の方をちらちら見てくる為、話がしたいのかと思いきや、顔を向けるとすぐに下を向いてしまうので、現在、俺はマルーの視線に気づかないようにしている。

 そんな中、探るのをやめたナディアは普通の質問に切り替えた。


「二人共、これからどうするの?」


「私達はスノール王国の王都に行く予定よ」


「じゃあ、私達と一緒ね。それなら、うちの馬車に乗って一緒に行く?」


「良いの?……いや、考えさせて」


「いいわよ。どうせあなた達、今日はこの先にあるネドって町で一泊するでしょ?そこでゆっくり考えてね」


 ナディアはそう言うと、これ以上情報を得られないと判断し、二人から離れて御者の方に移動していった。

 その後、馬車の上では会話はなく今日休む宿があるネドに着くまで俺はマルーにちらちらと見られ続けたのであった。


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