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006 責められる元勇者

 あの後、空き家で休んでいたのだが、隙間から入る日の光で目が覚めてしまった。

 俺は持ってきた保存食の干し肉と硬いパンを朝食として食べた後に外に出る。

 外では既に村人達は起きており、各々の仕事を始めていた。


 さすがに町の連中と違って皆んな早いな。

 さて、今日はどうするか……。


 俺はそう思いながら一瞬、レクタルの事が頭に浮かんだ。

 しかし、俺が行ったところでしょうがないと思い、今日も素材取りに山に行くことにした。

 早速、準備をして山に向かおうとすると、一人の村人が俺に気づいて駆け寄ってくると頭を下げてきた。


「き、昨日はあんたの事を疑ってしまって悪かった。本当にすまねえ」


「別に疑うのは悪いことじゃないぞ。冒険者の中にはあいつが言ってるような事をする奴もいるからな」


「そ、そうなのか?」


「ああ、だからその反応は普通だから気にしなくていい」


「あ、ああ、わかった。他の皆んなも気にしてたから伝えとくよ」


 村人はほっとした表情になると笑顔で俺に頭を下げ、再び自分の仕事に戻っていく。

 その姿を見て俺はこういう所に住んでいる人達はまともな人物が多い事を思いだした。

 それから俺は仕事をしている村人達を眺めながら山に入ろうとすると近くに寝ているバンを見つけてしまった。


 こいつはまだいたのか。

 しかし……。


 俺は仕事をしている村人達と今だに村から出ていかずに隅の方で横になっていびきをかいて寝ているバンを交互に見てから溜息を吐く。


 追い出される理由がわかるな……。


 俺は気持ちを切り替えて再び山に入ろうとすると、今度は後ろからランドに声をかけられてしまった。


「お前は確か、キリクという名だったな」


「そうだが……」


「村人から聞いたぞ。なかなかの活躍だったと」


「対したことはしてない……。それより、あんたら村には迷惑はかけないでくれよ」


「当たり前だ。俺達はアダマンタイト級を目指してるからな」


「そうか。なら、その言葉を信用させてもらおう。悪いがこれからやりたい事があるんだ。もういいか?」


「あ、ああ……」


 ランドはまだ何か言いたそうだったが、正直、関わると面倒だと思ったので俺はさっさと山に入っていく。

 それからは時間をかけ、錬金術に使用する素材集めや食料にできそうなものも採っていった。

 おかげで素材も食料もかなり集める事ができ満足した俺は村へと戻ったのだが、村の入り口付近はレクタルから逃げてきた冒険者や町の人々で溢れかえっていた。


 あの人数……。

 レクタルは相当やばいということか……。

 これはさすがに様子を見に行った方が良いかもしれないな。


 俺が遠目で避難してきた連中を見ていると、鉄獅子パーティーにいた魔法職の格好をした女が俺に近づいてきてた。


「あなた、レクタルで有名なキリクよね。私はルイって言うの」


「……ああ、だからなんだ?」


「あ、別に悪気があって言ったわけじゃないの。不快に思わせてしまったらごめんなさい」


「別にいい。ただ、もう疲れたから俺は戻らせてもらう」


 俺はルイにランドと同じ様な雰囲気を感じた為、さっさと空き家に向かって歩きだす。

 後ろでルイが何か言いたそうだったがそれでも俺を追ってくることはなかった。

 それから空き家に入った後は対死霊薬の補充をしたり、別の薬品を作ったりしていたが、しばらく作業を続けていると扉をノックする音と村長の声が聞こえた。


「キリクさん、今よろしいでしょうか?」


「ああ、大丈夫だ」


 俺は扉を開け、村長を招き入れる。


「どうしたんだ?」


「あのう、よろしければキリクさんに少し相談に乗って頂きたいんです……」


「構わないが、外にいる連中の方が良くないか?」


 ランドや他の冒険者は俺よりもランクが高いしな。


「いえ、あなたと違って彼らは村の事までは……」


「ああ、なるほど」


「冒険者の方々はもう一度レクタルに行くか、ブランシュに行くかで迷っているらしいんです。それは良いんですが、この村を拠点にしたいと言い出す者まで現れて……」


「レクタルに行って魔物達を倒そうという心意気は買うが、この村を拠点にすると、グール化や魔物達に追跡されて村に危険が増えるな」


「そうなのです!それに街の人々は行くあてがないらしく、このまま食料を分けていたらうちの村の食料がなくなって共倒れです」


「まだ、避難者が来るかもしれないしな。食料に関してははっきりと皆んなに言ってしまった方が良いだろう。最悪、山には食料はいっぱいあるんだから冒険者を使って食料集めをするのもありだな」


「働かざる者、食うべからずですね」


「ああ、問題はここを拠点にしようとしてる冒険者達だな。村の危険を訴えても自分達が守ると言うだろう」


「やはり、村を離れてもらう事は難しいでしょうか?」


「おそらくな」


 俺の言葉に村長はガックリと首を垂れる。

 毎日、危険に晒される可能性があるのだから村長の反応は当然だろう。


「こうなったら冒険者達には徹底的に村を守ってもらうしかないな」


「やはりそうなりますか……」


「ただ、しっかりと言葉で伝えておいた方がいいだろう」


「そうですね」


「そうなると魔物避けと死霊系の魔物除けの話はしないといけないが、俺はレクタルでは嫌われてるから確実にあいつらには胡散臭がられるだろうな……」


「冒険者の方々に話は聞きましたが、私も村の者もキリクさんがしてくれた事を信じてますよ」


 村長は笑顔で俺を見る。

 その笑顔を見て、俺は朝の村人といい久々に穢れない人達に会えた様な気がしたのだった。

 それから村人や避難者全員を集めて村長が話をし、食料については皆んな納得して明日から食料を採りに行ってくれる事になった。

 問題は魔物除けの話になった時だ。


「草花で魔物が寄り付かないなんて聞いた事ないぞ」


「死霊系が寄ってこないというのも信じられないな」


「また、加護無しが嘘吐いてやがるよ」


 何人かの冒険者や町の住人が俺を蔑んだ目で見てくる。


「これは錬金術の中でも失われつつある技術だ。魔法に頼ったり、店で買う回復薬しか使わないお前らが知らないのは当然だ」


「ふん、嘘を言うなよ」


「まあ、嘘と思うならそれでもいい。なら、お前らで魔物が避ける結界を張ったり、村に魔物達が寄り付かない様にしてくれれば良いんだ」


「キリクさんの言うとおりです。村にいるならそれをしてくれない以上出て行ってもらいたい!」


 村長は最後は強い口調で言った為、冒険者達は一瞬怯んでしまう。

 そんな村長の姿に俺はまだ世の中にはまともな人達がまだ残っているのだと嬉しく思うのだった。


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