057 内密の相談
これはおそらくナディアの精霊が遮音をしているのだろうな。
しかし、こんな近くにいるのに声が聞こえてこないとは……。
商談をしたりするのに使えそうだが、今の二人はそんな事とはかけ離れた会話をしているんだろうな……。
やれやれ。
俺が溜め息を吐いていると、ラハウトが俺の近くに来て俺を観察する様に見てくる。
「キリク、私は治療師の加護があるんだが、後、数日は療養が必要だな。もうしばらくはここで休むといいよ」
「それは助かる」
「それと、白銀の騎士様がキリクと二人で話をしたいといっておられるのだがいいかな?」
「ああ、構わない」
そう言うと急にナディアとサリエラが立ち上がった。
「じゃあ、サリエラさん、私の部屋に行きましょう」
「そうですね、ナディアさん」
どうやら二人には声が聞こえてたらしく、変な笑みを浮かべながらさっさと部屋を出て行ってしまった。
それを見たラハウトは、苦笑しながらも部屋のカーテンを全て閉じると、宝石が付いたペンを取り出りだした。
「これは音が外にもれないようにする魔法が込められている魔導具なんだ」
ラハウトはそう言うと魔導具に魔石を近づけ発動させると、俺の近くにあった鏡台に置き会釈して部屋を出て行った。
「ふう、室内だと仮面は暑くてたまらん」
そう呟きブレドは仮面を取ると俺が寝ているベッドに腰掛け俺を見る。
「さて、キリクよ。魔王化したテドラスについてお前の意見を聞きたい」
「ああ、あれは十中八九、東側の魔王が人造の魔王を作る実験をしたんだろう」
「人で造った魔王か……。だが、何故そんなことを?やはり、勇者達に追い詰められての行動なのか?」
「最初は俺もそう思っていたが、あまりにも用意周到すぎる。もしかしたら、わざと追い詰められたフリをした可能性もあるぞ。なんせ狡猾とまで言われてる魔王だからな」
「なんだと⁉︎くそっ、そうなるとこれはレオスハルト王国だけに話を持っていくだけでは済みそうにないな……」
「なら、オルトスかグラドラスに相談したらどうだ?」
「そんな事できんよ……あの二人とはあの日から会ってないからな。どのツラ下げて会えば良いんだ……」
「別にあれはお前が悪いわけじゃないだろう」
「いや、近くにいて父上の非道に気づけなかった私にも責任がある」
「まだ気にしてるのか?俺は別に気にしてないからそんなに自分を責めるなよ」
「全く、お前という男は……。少しは怒れよ」
「結構、お前らには怒っていたぞ」
ブレド、オルトス、グラドラスは常識がないなかなかにダメな連中だったので俺は結構、三人に怒っていた記憶がある。
まあ、その中でもだんとつにオルトスは酷かったが……。
「ああいうのは……いや、いい……。とりあえず私なりに考えてみるよ。しかし、また頭痛の種が増えたな」
「まだ、お前の国は腐ってる感じか?」
「ああ、まだ膿みを取りきれてないな……。父上や宰相、その他もろもろがしてきたことは根が深いからな」
「早く一掃できるといいな」
「もしかしたら息子達の代までは無理かもしれん……。ところでキリクはこれからどうするんだ?あのエルフのお嬢さんとレオスハルト王国に戻るのか?」
「それだが、気になることができたからそれを調べに行こうと思う。場合によってはお前にも手伝ってもらうぞ」
「なんだ?不吉な感じがするから聞きたくないな……」
「まあ、聞けよ。西側の魔王の残渣が残ってないか見に行く」
「やはり聞きたくなかった……」
「そう言うな。今のあそこには獣人都市ジャルダンがあって魔族を寄せ付けない結界が張ってあるから様子を見るだけだ」
「しかし、あそこはうちとは違う意味ではなかなか問題があるところだろ……。それにどうやって獣人以外入れないあの都市の中に入るんだ?」
「まあ、そこはなんとかするさ。それより魔王の残渣を調べる魔導具が必要になりそうなんだが、お前のとこに何か良いものはないか?」
「それなら、魔族探知の魔導具があるから、もしかしたらそれで調べられかもしれないぞ。どうせスノール王国を通っていくんだろう?うちで色々用意しておいてやろう」
「それは助かる」
「では、私は先に帰る。王都スノールに着いたら必ずファレス商会に行け。そこで落ち会おう」
「わかった」
ブレドは仮面を付け魔導具を回収すると部屋を出ていった。
ふう、スノール王国か……。
あれから数年経ってるがブレドの話を聞くかぎりあまり良くはなってなさそうだな。
俺がベッド上で考え事をしていると、サリエラが部屋に戻ってきた。
「あの、キリクさん……。ちょっといいですか?」
「変な頼みならお断りだぞ」
「ち、違いないよ!サナエさんの事です」
「サナエ?あの獣人の精霊使いか」
「はい、彼女は今捕まってこの町の牢屋に入ってるんですけど……」
サリエラはどうやらサナエを倒して、尋問した際にサナエの妹の事を知ってしまい気になってしまったようだ。
それで俺にどうしたらいいか相談をしにきたらしい。
「まともな相談だったな」
「ど、どんな話を想像してたんですか!?」
「ふん、自分の胸に手を当てて聞いてみろ」
そう俺が言うとサリエラはギクッとした表情を浮かべるのだった。
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