054 過去編2 聖オルレリウス歴354X年九ノ月
「キール第二王子は強くなったら外にだっていけるのになんで稽古をしないの?」
「俺達の時は第二王子はよせよ。別に外に出なくたって良いだろ。この領地は平和だし、立派な書庫に色々な遊び場だってある。なにより豊富な食べ物だってあるんだぞ。なあ、アリシア」
「うん、でも私はキール兄様がいればどこでも良いもん」
「はは、アリシア第二王女は相変わらずだねえ。まあ、確かにオルフェリア王国領は平和で良いけどやっぱり、僕は外の世界を見てみたいな」
「外の世界ね……そういえばアレスは冒険者にも憧れてるんだよな」
「うん、冒険者になって沢山の魔族や魔物と戦うって格好いいよね。騎士になれなかったら冒険者も良いかなあって思うんだよ」
そう言いながら、アレスは持っていた木剣を掲げて遠くを見つめる。
「おいおい、俺達の年齢で一番強いアレスがなれなかったら、誰も騎士になんかなれないだろう」
「それは、言い過ぎだよ。それより、キール、最近、勇者という加護が現れたのは知ってる?」
「ああ、聖霊神イシュタリア教会から使者が来て、勇者の加護を持つ者が現れたら知らせて欲しいってさ。どうやら何処かの教会で神託があったらしいな」
「うん。今、巷じゃ話題だよ。勇者の加護を持つ者はこのネイダール大陸に五人までしか現れず、その瞳は黄金色になるんだよ。そして、どの加護よりも圧倒的に強い力を持つって凄くない?」
「そんな加護が現れたら魔族との戦いに駆り出されるに決まってる。俺は絶対やだね」
「はあ、君っていう男は……」
「俺は学者とか鑑定ができる加護が欲しいんだよ。最悪、農業関係でも良いぞ。新たな農作物を作るのも楽しそうだしな」
「キールは頭を使う加護は合いそうだね。なんせ、既に政治に口を出して実績まで作ってるしね」
「ふっ、だから俺は頭を使って脳筋のバロン兄様を支えるから、アレスは騎士団長として俺達を支えてくれよ」
「……そんなこと言ってるからバロン第一王子に叩かれるんだよ」
「ああ見えて軽く叩いてるから痛くないんだよ。それより、これから木の実を取りにいこう。すり潰して蜂蜜で固めると美味しいんだぞ」
「……キール、稽古は?」
「明日からってバロン兄様も言ってたから大丈夫だ」
「……やれやれ。お供しますよ」
「私も私も!」
「もちろんだよ。お姫様、さあ行こうか」
「やったー!」
アリシアが両手を上げてピョンピョン飛ぶ。
そんなアリシアを見て俺とアレスは二人して微笑むのだった。
それから木の実を拾う為、俺達は王都オルフェリアから少し離れた森に移動した。
ちなみにオルフェリア王国領は魔物もおらず、犯罪も滅多にない平和な場所なので、俺達みたいな子供でも外に出て平気なのだ。
「アレス、どうだ、あったか?」
「結構あったよ。後、キノコもいくつか拾っておいた。焼くと美味いんだよね」
「おい、脱線するなよ」
「はいはい。キールはこういうところは真面目なんだよなあ」
「良いか、何事もやる時はしっかりやるんだ。そうすれば短期間で覚えるスピードも上がる」
「木の実を拾うスピードを上げてもね……」
「キール兄様、私も拾ったわ!」
「お、それは胡桃だな。良い形をしてるから間違いなく実がしっかり入ってるぞ」
「やったー!もっと拾ってくるね!」
アリシアは飛び跳ねながら、また木の実を拾いにいってしまった。
そんなアリシアを眺めていたらアレスが俺に胡桃を見せてきた。
「キール、僕もほら」
「駄目だな」
「えー……、アリシア第二王女と同じくらいのを出したんだけどなあ」
「色が悪い」
「……君ってアリシア第二王女には甘々だよねえ」
「仕方ない、拗ねると痛い思いをするのは俺だからな……」
「なんかごめん……」
「ああ……そういえばさっきの門番同士の会話だけどアレスはどう思う?」
「魔王ってのが現れたって話?そうなると魔族にも国王様や聖騎士みたいに役割をする者達が現れるってことなのかな?」
「役割か。そういえば魔族は力や魔力が強いものが偉いみたいな階級はあったはずだけど、基本的に集団行動をしないって本には書いてあったな。そんな魔族に王が現れたって事は……」
俺はある仮説が頭に浮かびアレスを見ると俺と同じような表情をしていた。
「アレスもわかったか……」
「うん……」
「力も魔力も人族より優れているらしい魔族が、統率された軍隊のように攻めてきたら相当危険だな……」
「だから、しっかりと稽古をして強くならなきゃ!」
「そうだな。アレス達には期待してるぞ」
「あのね……君も頑張りなよ……」
呆れて俺を見つめるアレスだったが……。
「きゃああーーーー‼︎」
突然、悲鳴が森に響き渡る聞こえ俺達は驚く。
しかも、その悲鳴を上げた人物がわかった俺達はすぐに声が聞こえた方向に走り出した。
「アリシア!」
アリシアはすぐ見つかった。
胡桃の木の下にしゃがんで震えていたので、俺は駆け寄ろうとするとアリシアの近くに俺達ぐらいの背丈をし、緑色の皮膚に醜悪な外見をした生き物が棍棒を持って立っていた。
「な、なんでこの場所にゴブリンがいるんだ⁉︎」
「アレス、とにかくアリシアを助けないと!」
「わ、わかった!」
俺は石を拾いゴブリンに向かって投げると、当てることはできなかったが、ゴブリンの注意を引きつけることができた。
「グギャグギャッ!」
ゴブリンは奇声を上げながら俺に向かってきて棍棒を振り下ろしてきたので、転がりながらなんとか避ける。
すると、アレスが持っていた木剣でゴブリンを攻撃しようと向かっていった。
「うわあーーー!」
しかし、初めて魔物と戦うことへの恐怖なのか、アレスの動きは稽古でやっている動きではなく、やみくもに木剣を振り回す感じになってしまっていた。
そんな攻撃は当たるわけなくゴブリンは軽く避けると、アレスの背中に棍棒を叩き込み吹き飛ばしてしまう。
「ぐはっ!」
「アレス!」
俺が急いでアレスの方に向かう。
しかし、それに気づいたゴブリンは俺と倒れてるアレスの間に立ち醜悪な笑みを浮かべるのだった。
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