052 人造魔王戦3
「ぐぎゃあああああぁぁーーーー‼︎」
一瞬で身体を斬られたテドラスは痛みで絶叫を上げる。
「まだ続けていくぞ。第六神層領域より我に風と炎の力を与えたまえ……フレア・トルネード!」
俺が魔法を唱えたと同時にテドラスを囲うように炎の竜巻が起こり、身体を切り刻んでいきながら傷口を燃やす。
「ぎぎゃあああああーー‼︎」
「これで最後だ!第六神層領域より我に雷の力を与えたまえ……エンチャント・サンダー!」
俺は剣に雷の力を纏わせテドラスに向かって振り下ろし肩から腹までを引き裂く。
更にテドラスの身体中を雷が伝い、内部を焼いて引き裂きながら外に出ていった。
「い、いだいよおぉぉーー……」
「ブレド!後は頼む!」
俺は剣を引き抜きテドラスから離れる。
待ってたと言わんばかりにブレドは持っていた剣、宝具クラレンツを掲げて叫んだ。
「クラレンツ宝具解放!堕ちし者に聖なる救済を、迷いし者に光りの道を示せ‼︎」
クラレンツの刀身が光り輝き、ブレドが振り下ろすと光の刃がテドラスに飛んでいき突き刺さった。
「あがががががぁっ……」
驚愕の表情を浮かべながらテドラスは光りだし辺り一面を包み込んでいった。
それからしばらくすると光りは収まっていき、神殿内にはテドラスの姿は跡形なく消えさっていた。
どうやら倒せたみたいだな。
ほっとしていると霊薬の効果も消えていき、再び俺の力も封じられてしまった。
ふう……これでまた、しばらくは霊薬は使えないな……。
俺は辺りの気配を探るともう俺達以外の気配は消えていた。
「テドラスの気配に他の魔族の気配も感じないから、どうやら終わったようだぞ」
「ああ……しかし、キリクよ。隠し球とは卑怯だぞ」
そう言いながらもブレドは笑みを浮かべて、俺の肩に手をおく。
「隠してたわけじゃない。最近、霊薬が完成しただけだ。それにこれは数に限りがあるし何度も使えるものじゃないしな。それよりも誰か人が来るぞ」
知った気配が混じっている為、俺はほっとしているとブレドが話しかけてきた。
「キリク、魔王化したテドラスに魔族がいたことは皆には内密にな」
「わかった」
確かにこれはいったん持ち帰って上で話し合いをした方がいいだろう。
「では、私は白銀の騎士に戻るとするか」
ブレドは落ちていた仮面を付けしばらくすると、ナディアやラハウトに馬車で一緒に来た神殿騎士などが駆けつけてきた。
「キリク!大丈夫なの⁉︎」
「ああ、大丈夫だ……」
「そんな傷だらけで大丈夫なわけないじゃない!すぐに治療をしないと!」
「いや、それより早く精霊王ケーエルを降ろすんだ。それがナディアの仕事だろ」
「……キリク、あなた知ってたの?」
「薄々だがな。お前達はギダンを餌にしながら今回、参加した冒険者全員を疑うつもりでいたんだろう。まあ、保険としてギダン以外の敵じゃない精霊使いが狙われた場合は、こいつが助けに行く算段だったんだろう」
俺はチラッとブレドを見ると口笛を吹いていた。
「はあ……やっぱり、あなた只者じゃないわね」
「俺はサリエラの弟子でポーターだ」
「その師匠をおいてくる弟子はいないでしょう……」
ナディアは俺を呆れた顔で見るが、その時、サリエラが手を振りながら俺達の方に走ってきた。
「キリクさーん!わっ、その傷は大丈夫ですか⁉︎」
「……大丈夫だ。それよりもナディア」
「わ、わかったわ!」
ナディアと俺達は神殿の更に奥に進むと、外の大海原が見えるテラスみたいな場所に到着した。
そこには大きな台座があり、ナディアはそこに精霊の森の原木で作った器と、ハイエルフの血が入った試験管、そして精霊石を並べていく。
「さあ、始めるわよ」
ナディアは器にハイエルフの血を入れ、精霊石を入れると祈りを捧げる。
すると周りの気配がざわつき始め沢山の色のついた小さな光が現れ始めた。
精霊達が集まってきたか。
隣りを見るとサリエラも祈りを捧げており、サリエラの精霊達も光になって現れると、他の精霊達と一緒に辺りを飛び回り始めた。
それからしばらく精霊達が動き回っているのを眺めていたら、台座の上空が突然輝きだし淡く光る水の球が現れた。
その淡く光る水の球はどんどん大きくなっていき、神殿よりも巨大になると中から大きな白い鯨が現れ、水の球の中を優雅に泳ぎながら俺達の心に語りかけてきた。
『我は精霊神オベリアを支える三柱の一柱、精霊王ケーエルである。よくぞ災厄を払い除けた。誠に見事なり』
精霊王ケーエルは優しさに満ちた大きな目で俺達を見てくる。
するとラハウト伯爵が前に出てきて跪きながら精霊の言葉で話しだした。
『精霊王ケーエルよ、このラハウト、貴方様のお言葉通りやらせて頂きました』
『うむ、これで我ら三柱が揃ったことで、この一帯にある魔神グレモスの力を弱める事ができた。我が子エルフの民の血を引くラハウトよ、よく頑張ってくれた』
『ありがたき幸せにございます』
ラハウトは涙を流しながら喜ぶ。
そんなラハウトの肩を労う様に叩きながら白銀の騎士は精霊王ケーエルに言う。
「精霊王ケーエルよ、私は白銀の騎士と言う。今回、あなたが降りたのは別の件もあったのではないか?」
白銀の騎士の言葉に精霊王ケーエルは嬉しそうな雰囲気を出しながら心に語りかけてきた。
『東の魔王が北の魔王の残渣を使い悪巧みを考えていたので、我が降りて消し去ってやろうとしたのだ。だが、間に合わなく精霊界で焦って見ておったのだが、お前達が見事阻止をしてくれた』
なるほど、今回の依頼は精霊王ケーエルが東の魔王の行動に気づきラハウトにやらせたものだったのか。
「では、この近辺はもう危険はないと認識して良いわけだな」
『うむ、我ら三柱の力であのような悪さはもうできまい』
「それを聞いて安心した」
『だが、東の魔王は何かよからぬ事を考えておる。神々の子と、古き民よ、気をつけるのだぞ』
そういうと精霊王ケーエルはゆっくりと消えていき、水の球は光の粒になると台座の上に集まっていき精霊王ケーエルの石像になった。
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