049 魔王信者の目的
「ぐひひひひひ!おいおい、イカれた奴が増えたぞ!まあ、てめえらが何人増えようが俺達の相手になんねえがな!」
ドナテロは俺と隣りにいる白銀の騎士を指差しながら馬鹿笑いをするが、正直、俺は呆れてしまっていた。
隣りに立っている白銀の騎士は現在、力を抑えてもいないし気配も消していない。
そしてミスリル級冒険者になるぐらいの実力があれば、相手を見るだけで多少は力量を測れる。
なのに、目の前の男は馬鹿笑いをしているのだ。
要は目の前の男は、自分はミスリル級の実力はないと言っているようなものなのである。
俺は念の為にドナテロに聞いてみる事にした。
「おい、馬鹿笑いしてるお前。もしかしてランクをごまかしてないか?」
俺がそう言うとドナテロは一瞬、ビクッとなり笑うのをやめる。
だが、すぐにこめかみをひくつかせて俺を睨んできた。
「……おい、あのシルバー級のガキは俺がやる。お前らはあのイカれた仮面野郎をやれ‼︎」
「どうやら当たりみたいだな。それよりあんなこと言ってるがいいのか?白銀の騎士殿」
「魔王の手先など、何人こようが問題ない」
「おい、お前ら喜べ。賊から魔王の手先に昇格したぞ。まあ、そこの酔っ払いはゴブリンの友人ぐらいにしかなれそうにないがな」
俺がドナテロを指差すと、バドルグや仲間は口元に手を当てたり下を向き震え始める。
そんなバドルグ達の様子に気づいたドナテロは顔を真っ赤にして俺に剣を向けてきた。
「……ガキ、てめえは殺す」
「俺から言わせればお前の方がガキだぞ」
俺がそう言うと、ドナテロは完全に切れたらしく剣を振り回しながら向かってきた。
その動きに俺は再び呆れてしまう。
やはりランク詐称をしてるな。
それとも、そういう風に見せてる可能性もあるのか?
俺は一応、ドナテロが隠し玉を見せてくるかもしれないと思い、慎重にドナテロの攻撃を避け続ける。
すると、すぐに息切れしたドナテロは攻撃をやめ逃げるように俺から距離をとってしまった。
「はあっ!はあっ!はあっ!ち、ちょこまかと、う、動きやがって……」
「……たいして動いてないんだがな」
俺はそう答えるが、ドナテロは荒い呼吸をしていて聞く余裕もないらしい。
正直、もう面倒になったので俺はさっさと倒す事にした。
「ドナテロ、お前、精霊は使えないしランク詐称するしで滅茶苦茶だな……」
「な、なにを言ってやがんだ!」
「もう、面倒臭いからさっさと終わらせるぞ」
俺はそう言うやいなやドナテロの間合いに素早く入り込み、みぞおちに拳を叩きこんだ。
「ぐげえっ」
ドナテロは変な声をあげ、内股になりながら顔面から地面に倒れ気絶した。
そんなドナテロを俺は縛りあげ猿轡をする。
……こいつ弱すぎだな。
無駄な時間をかけ過ぎてしまったぞ。
俺は白銀の騎士を見ると既に全員を倒して木に吊し終えているところだった。
「さすがだな。ところで今回の依頼はラハウト伯爵が考えたと思っていたが、お前が現れたということは全てお前の考えなんだろ」
「な、なんのことかな……。私は通りすがりの白銀の騎士だぞ……」
「おおかた、ラハウト伯爵が何度も失敗した為、スノール王国が介入したんだろう。それでやるんだったら、テドラスやギネルバ商会、そして魔王信者全てを一網打尽にしてしまおうとして、餌を巻いたってところか」
「あ、相変わらず鋭いな、アレ……キリクよ。わざとギネルバ商会や魔王信者の可能性がある者達に、情報や手紙を出したのだ」
「それで、餌によってきた連中を一網打尽にしようとしたのか。でも、お前はこんな場所にいていいのか?しかも一人でいるなんて……。側近が見たら卒倒する光景だぞ。それにその格好は頭がおかしくなったと思われるな」
「何を言うのだ!私の案で危険に晒してる精霊使いを守らなければいけないだろ!」
「俺には玉座は暇すぎて身体を動かしたくてしょうがないんだって心の声が聞こえるぞ」
「そ、そ、そんなわけないだろ!」
そう言いながらも、白銀の騎士は横を向き俺の視線から逃れようとする。
「図星か……。まあ、とりあえず、お前のおかげでなんとなくわかった。ギダンの仲間はお前のとこの兵だったわけか」
「ああ、今回、ギダンは私の方で用意した精霊使いだからな。しかし、テドラスの手の者がこんなに紛れていたとは……スノール王国もまだ腐敗してるという事か……」
白銀の騎士はドナテロ達を見ながら溜め息を吐く。
「おい、お前は溜め息を吐いてる余裕はないぞ。」
「何故だ?」
「ここにいるのは魔王信者じゃなく、おそらくギネルバ商会が雇っていたクランの残党だろう」
「確かに冷たい月のクランタグを付けてるな。じゃあ、魔王信者はどこに行ったんだ?」
「このドナテロという奴が言っていたが、神殿の方にも誰か向かってるみたいだ。おそらくそいつらが魔王信者だろうな」
「なんだと、それではギダン達が危ないではないか!行くぞキリク‼︎」
そう言うと、俺が答える間もなく白銀の騎士は走り出してしまったので、仕方なく俺も後を追って走りだす。
やれやれ、相変わらず国王になっても脳筋部分は健在のようだな。
しかし、魔王信者は神殿に行って何をしようとしてるんだ?
精霊使いを待ち構えるなら神殿手前で良いだろうが、もしかしてダンジョン跡に何があるのか?
走りながらも俺は色々なことを考えてみたが結局は何も思い浮かばなかった。
しかも考える事に集中していたらしく、あっという間に森を抜けてしまったらしい。
俺は目の前の映る光景を見て懐かしく感じてしまう。
また、この場所に来ることになるとはな……。
目の前の大海原が見える海岸沿いの風景は、最近建てられた神殿以外はあまり変わっていなかった。
あれが精霊王ケーエルの神殿か。
俺は丘に建つ荘厳な雰囲気が漂う神殿に目を奪われる。
「他の神殿に負けず劣らず立派だな。この造りはエルフが関わっているのか?」
「ああ、他の二柱の神殿建造にも関わっているエルフの巨匠に建ててもらったんだ。素晴らしいだろ。また我が領土に観光スポットが増えたな」
「なら、さっさと終わらせてしまわないとな」
「うむ、待っていろ、魔王信者め!剣の錆にしてくれる‼︎」
「おいおい、あまり神殿を汚すなよ」
俺は呆れながら白銀の騎士を追って神殿に入るが、すぐに辺りに広がる血の臭いで足を止めてしまった。
俺は白銀の騎士を見て頷き、血の臭いのする方に急いで向かうと、血だらけで倒れている冒険者を踏みつけながらギダン達を追い詰めている魔王信者達を発見した。
それを見た俺は短剣を投げようと取り出したのだが、横にいた白銀の騎士があっという間に魔王信者の元へ駆け寄り倒してしまった。
「大丈夫かギダン!」
「ああ、クランの皆んなが守ってくれた……。だが、しばらく動けそうにない」
ギダン達はかなりの深傷を負っていたので、俺は回復薬や傷薬を渡す。
「……すまん、それより奥に魔王信者が行ってしまった。そいつらを頼む」
「まだいるのか……わかった。行こうキリク」
「ああ」
俺と白銀の騎士は走り出し奥の部屋に向かうと、そこには見知った人物が魔王信者と共に立っていた。
その派手な服装に樽の様な体型、そして自分の力では支えれない為、派手な杖でなんとか支えているその姿は忘れもしない。
テドラス……。
テドラスは俺達を見ると不機嫌そうな表情になり喋り出した。
「ちっ、あいつらやられたのか。全く使えん奴らめ!」
イライラしながら杖を床に叩いているテドラスに白銀の騎士が叫ぶ。
「テドラス!何故ここにいる!」
「なんだその仮面は?それに白銀の鎧とは趣味が悪いな……」
「き、貴様に言われたくないわ!答えろ‼︎」
「ふん、良かろう。わしの新たな力を見せるのに観客がいないのもつまらん。聞くがいい、わしは魔王になるのだ‼︎わはははははっ‼︎」
テドラスはそう言うと短い両手を広げ馬鹿笑いをするのだった。
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