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045 屋敷を監視する者達

「すいませんでしたーー‼︎」


 サリエラは空中で土下座をしながら地面に着地し額を床に擦り付ける。

 あれから、朝に目を覚ましたサリエラは俺に気づくと、信じられない速さで空中土下座をしたのだ。

 それを見て俺は溜め息を吐いた。


「うー、また、やってしまいました……」


「……デコピンの件で帳消しでいい。とにかく、その格好をどうにかしろ」


「……へっ?あっ!わ、わわっ‼︎」


 サリエラは半裸状態の自分の姿に気づくと、真っ赤になりながら浴室に駆け込んで行ってしまった。


 やれやれ。

 それじゃあ、俺も用意するか。


 その後、俺も自分の身体を軽く拭いて着替えなどを済ませる。

 それからサリエラと合流してノースハウトの町から三時間程離れた場所にあるテドラス伯爵の屋敷に向かった。


「高い壁に大勢の警備……ずいぶんと厳重ですね」


「まあ、町から離れた場所にあるから、本来はこれぐらい厳重じゃないと危ないんだが……。おそらくテドラスの場合は別の意味で厳重にしているんだろうな」


「キリクさん、どうするんですか?」


「できれば中に侵入して魔王信者との接点を示す証拠を見つけたい」


「侵入するなら夜の方が良かったのでは?」


「まあ、侵入するのは夜と相場が決まっているが、ここは夜の方が警備の人数に魔法トラップも設置されて面倒くさくなるんだ……と、情報屋が言っていた」


「そうなんですか。それでも、あの厳重そうな警備をどうやって通るんです?」


「そこは、テドラスが使う逃げ道の一つを使う。奴は用心深いから屋敷の至る所に外に抜けれる抜け道を用意している。しかも自分だけしか知らないやつをな」


 おかげで前に別の屋敷だったが、抜け道を使われて逃げられた挙句に証拠隠滅をされ、テドラスを捕まえることができなかったのだ。

 俺は早速、魔導具のペンデゥラムを使い、抜け道を探していく。

 すると、五箇所も抜け道を見つけることができた。


「ずいぶんと、沢山作ってますね」


「それだけやばいことをしてる自覚があるんだろう」


「後は、どの抜け道が重要な場所に繋がっているかだな。とりあえず全ての抜け道を調べてみよう」


「はい」


 俺達が早速、一つ目の抜け道に入ろうとしたその時、物陰からフードを被った人物が数人現れた。


 ここまで気配を消してこられるとはなかなかの手練れだな。


 サリエラが剣を抜き構えるが、フードを被った連中は武器を抜かずに近づいてくる。

 そして、俺達の近くまで来ると立ち止まって俺達に声をかけてきた。


「……アダマンタイト級にシルバー級の冒険者が何の用だ?ここが誰の屋敷かわかっているのか?」


「テドラスの屋敷だろう。お前達こそ何の用だ?ここの警備には見えないが」


「えっ?この人達、警備の人達じゃないんですか?」


 敵だと思っていたサリエラは俺の言葉に驚く。


「警備なら気配を消してわざわざ俺達の前に現れないだろう。おそらくテドラスの屋敷を監視してる連中じゃないか」


「ほお、シルバー級の冒険者にしては鋭い洞察力だな。わかっているなら、引き下がってくれるか。そうすれば我々は冒険者ギルドに報告する気はない。こちらも今は忙しくて揉めたくないからな」


「……キリクさん、どうしますか?」


 揉めて冒険者ギルドに話がいくのも面倒だし、争うだけこちらが不利になる。


「……引き下がるしかないだろう」


「いいのですか?」


「ああ」


 俺達は来た道を引き返すと、数名が後ろを隠れながらしばらくついてきたが、ある程度テドラス伯爵の屋敷から離れると追ってこなくなった。

 その後、朝から何も食べていなかったこともあり、俺達はノースハウトに戻り食堂で遅めの昼飯を食べることにした。

 サリエラはフォークで必死にコーンをすくおうと格闘していたが、遂に諦めたのか溜め息を吐いた後、俺に声を掛けてくる。


「結局、何も情報が掴めませんでしたね」


「いや、少しだが情報は入ったぞ」


「えっ?何がですか?」


「テドラスの屋敷を監視してた連中はおそらく何処かの国の諜報部隊だろう」


「そうなんですか?」


「あそこまで洗練された動きはプロの殺し屋か国の諜報部隊しかいないからな」


「殺しに来なかったという事は国の諜報部隊ってことですか」


「連中には敵意も殺意もなかったしな。それに俺達の前に姿を現したのもそうだろう」


 まあ、アダマンタイト級のサリエラがいたから現れた可能性もあるが……。

 もしシルバー級の俺だけだったら、あのまま気配を消して俺を気絶させてから目隠しして尋問形式の会話になっていたはずだ。


「じゃあ、どこかの国がテドラスを捕まえる為に動いてるんですか?」


「そうなるな。それに連中は今は忙しいと言ってるということは近いうちに何か起こるってことだろう」


「それって今回の依頼に絡んでくる可能性もあるってことですよね」


「十中八九、今回の件には絡んでるだろうな。なんせ、魔王信者に指示を出してる大元はテドラスだからな」


「じゃあ、テドラスが動く可能性と、国も動いてることがわかっただけでも今日は行動した意味はありましたね」


「ああ、そして明日は両方が動くかもしれない可能性が高いってことだ。だから明日は何が起きても対応できるようにしとけよ」


「わ、わかりました……」


 俺がベーコンを齧りながらそう言うとサリエラは一気に緊張した表情になる。


 緊張するには早すぎるだろ……。

 まあ今回、場合によってアダマンタイト級のサリエラでも危険かもしれないか……。

 それなら保険をかけておくのも良いか。


 俺は緊張した表情をしながら、またコーンをフォークですくおうとし出すサリエラを見てそう思うのだった。


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