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036 間引きの失敗

「ラド、今のはなんだ?」


「わからん。何かの魔法か?うーむ」


 ラドが腕を組んで唸っていると、グッタが青い顔しながら言ってきた。


「……おい、もしかして……誰かがロックゴーレムに手を出したんじゃないか?」


「まさか、そんな……」


 ラドは最初は驚いていただけだったが、段々とグッタと同じように顔が真っ青になっていく。

 そんなラドに俺は嫌な予感が当たったなと思いながら質問する。


「ラド、ここにはロックゴーレムがいるのか?」


「……ああ、三階層の奥にな」


「そうか……」


 ロックゴーレムか。


 強さはミスリル級で、別名、動くダンジョントラップと冒険者達の中では言われている程、厄介な敵だ。

 三メートル程の大きさがあり、石のように硬い皮膚で覆われた人型の魔物で、力だけじゃなく素早さもある。

 だが、厄介なのはその強さではなく、倒したら心臓部であるコアをすぐに取り出すか破壊しないと爆発する事である。

 更にこの爆発の音は他の魔物を引き寄せるのだ。


 倒し損ねて爆発したのか。

 爆発……まさか……。


「ラド、今日は間引きの日って言ってたな。という事は……」


「……ああ、俺も嫌なことを想像しちまった。こうしちゃいられねえ。ガッタにグッタ!お前ら、念の為、外に出て兵士に話してこい!」


「話すったって何を?グッタはわかるか?」


「バカガッタ、魔物の集団暴走が起こるかもしんないんだよ!」


「えー!なんで⁉︎」


「いいから行くぞ!」


「わ、わかったよ!」


 グッタとガッタは慌てながらも、部屋を飛び出していく。

 そんな彼らが去っていった扉をラドは心配そうに見ながら呟く。


「はあ、グッタ頼みだな……」


「まあ、あの音と揺れなら地上でも気付いてるだろう」


「そうだな。ところでキリクはこれからどうする?俺は少し奥の様子を見に行くが」


「俺も気になるから行こう。もしかしたら、逃げ遅れた冒険者もいる可能性があるからな」


「じゃあ、一緒に行こうぜ」


「ああ、わかった」


 俺は頷くとラドと一緒にダンジョンの様子を見に行くのだった。



◇◇◇◇



「どうやら、誰もいなそうだな」


 あれからしばらくダンジョンを見て回ったが、誰もいなかった。

 俺はそろそろ戻るべきかと考えていると、ラドが先の方を指差しながら声をかけてきた。


「キリク、もう少し先に行くと広いところに出るんだが、そこは良く休憩場所に使われているんだ。そこを見たら戻らないか?」


「休憩場所か、わかった」


 俺は頷くと進みながら気配を探った。

 その結果、何人かの気配を感じたので走ろうとしたら、休憩場所がある方から悲鳴が聞こえてきた。

 すると悲鳴が聞こえたラドは驚いて俺を見てくる。


「おい、まさか魔物が来ちまったか?」


「いや、魔物じゃない。だが、急いだ方が良さそうだ」


 俺はそう言うとすぐに走り出し、悲鳴が聞こえた場所に向かう。

 おそらくもっとタチの悪いものだろう。

 案の定、悲鳴が聞こえた場所に辿り着くと、そこにはガラの悪い冒険者の男女が、傷だらけの女冒険者を追い詰めているところだった。


「おい、お前が金持ってんだろ。さっさと出さないと殺すぞ‼︎」


 軽装鎧の男が血のついた剣をチラつかせて脅していると、仲間のローブを着た女が舌打ちしながら俺達を指差してきた。


「ちっ、トーゴ、誰か来ちゃったみたい」


「なんだと?」


「でも、炭鉱夫とシルバー級の二人だから私達ゴールド級の敵じゃないわね」


 そうローブを着た女が言うと、トーゴと呼ばれた男はニヤっと笑った。


「ウルネ、それならやっちまって金を奪おうぜ。まだ下から魔物が来るまで時間があるからな」


「そうね、今の私達は逃走資金が沢山必要なんだからね」


 ウルネと呼ばれた女はそう言うと醜悪な笑みを向けてくる。

 そんな二人をラドは渋い表情で見ながら聞いてくる。


「……キリク、あいつら物騒なこと言ってるぞ。どうなってんだ?」


「こいつらは、下でロックゴーレムを爆発させたクランの生き残りだろう。今は失敗した責任をとりたくないから逃走資金を貯める為に犯罪をしている最中ってところだな」


 俺はそう言って離れた場所で血溜まりに倒れている冒険者達を見ると、トーゴは舌打ちをしてきた。


「ちっ、バレちまったな」


「いいじゃない。どっちみち殺すんだから。私の魔法で終わっちゃうかもねえ!第二神層領域より我に氷の力を与えたまえ……アイス・ランス!」


 ウルネはそう言って魔法を唱えると鋭く尖がった氷柱が現れ、俺達に向かって飛んできた。

 そんな氷柱を俺はボリスの店で購入した剣で弾くとそのままウルネに向かっていく。

 すると、トーゴがウルネを守るように間に入ってきたので、そのまま斬り合いになる。

 しかし、徐々に俺に押されていくとトーゴが慌てだした。


「くそっ!こいつ本当にシルバー級かよ!」


「ちょっと、トーゴに隠れてそいつに魔法が撃てないわ!」


「この野郎、俺を盾にしてお前の魔法を撃たせないようにしてやがる!てめえ、何もんだ⁉︎」


「名乗る必要はない」


 俺はトーゴに向かって更に踏み込んでいく。


「ひっ、こいつ死線を潜り抜けてるのか⁉︎」


「ほお、それがわかるのにこんなことをするなんて惜しいな。だが、もう時間がない。終わりにしよう」


 俺はトーゴの脇腹に柄頭を打ちつけながら横を駆け抜け、後ろにいたウルネの横っ面に剣身の面部分を打ちつける。


「ぐふっ!」


「うっ!」


 二人は同時に地面に倒れて動かなくなった。

 俺は剣をしまいラドの方を向くと驚いた表情を浮かべてこちらを見ていた。


「す、すげえな……。あんた何者だ?」


「シルバー級冒険者キリクだ。それより、下から音が聞こえてきた。ラド、こいつらを縛って猿轡をはめてくれるか」


「あ、ああ」


「それと、あんたは大丈夫か?」


 俺は壁にもたれかかって震えている傷だらけの女冒険者に声をかけると無言で頷く。

 俺はそんな状態の女冒険者に悪いと思いながらも、血溜まりに倒れている冒険者達を指差しながら喋る。


「仲間なら今のうちに必要なものを取っておけ。じゃないと魔物に奪われるぞ」


 俺がそう言うと女冒険者は小さく頷いて、仲間達の元に行き、泣きながら遺品を集め始めた。

 俺はそれを見てなんともいえない気持ちになったが、ラドの方を向くと二人を縛り終えたらしく俺に親指を立ててきた。


「こっちは終わったぜ」


「ラド、悪いが女の方を頼む」


 俺はそう言いながらトーゴを肩に担ぐと、女冒険者も遺品集めが終わったらしく駆け寄ってきた。

 それから俺達は出口に向かって走り出したしたのだが、しばらくすると後ろの方で魔物の声が聞こえてきた。


「どうやら、集団暴走は確定みたいだな」


「くそっ、逃げ切れるか?」


「危なくなったら担いでる二人は捨てるぞ。最悪、俺達が証言すれば良いんだしな」


 俺がそう言うと目を覚ましていたのか、ラドに担がれたウルネは猿轡を嵌めた状態で俺に助けを乞う視線を向けてきた。

 しかし、俺は首を軽く振る。


「お前らは魔物に喰われるか外へ出て首を刎ねられるかのどっちかしか道はない。諦めろ」


 俺がそう言うとウルネは絶望した表情を浮かべた。

 そんなウルネの顔を見て溜め息を吐く。


 全く、失敗した時点ですぐに報告すればこうはならなかったのにな……。


 俺はそう思いながら出口に向かって走り続けるのだった。


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