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035 管理されるダンジョン

「キリクの旦那、これからどうするんだ?」


「夕方までは適当に過ごすつもりだ」


「じゃあ、頼み事があるんだがいいか?」


「俺にできる範囲なら良いぞ」


「ありがたい。お使いみたいなもんだから誰でもできるよ。王都の南側から出てすぐ近くにあるレオスハルト鉱山にいるうちの若いもんに、このつるはしと魔石を届けてほしいんだ。二階層に降りてから、すぐに左の通路にあるうち所有の採掘場にいるからよ」


 ボリスが出してきたのは、柄に小さな宝石が埋めこまれた三本のつるはしと、魔石が入った大きな袋だった。

 おそらく、効率良く掘れるように宝石に土属性の力が入っているんだろう。


「これなら俺にもできるな。引き受けるよ」


「助かる。後はこの通行届を入り口の兵士に渡せば中に入れるはずだ。頼んだぜ、キリクの旦那」


「わかった」


 ボリスは店の名前と用件に印鑑が押された用紙を俺に渡してきたので、つるはしなどと一緒に収納鞄に入れていく。


 レオスハルト鉱山か。

 三階層には行かないとはいえ久々のダンジョンだな。


 ちなみにダンジョンは魔神グレモスが魔物や魔族を生み出す為に造りだしたもので、ネイダール大陸の中央以外の至るところに存在するのだ。 

 その為、冒険者ギルドの仕事にはダンジョンの最深部にある、魔物を生み出すダンジョン核を破壊するのも目的にしている。

 ただ、ダンジョンには鉱物や魔物から取れる素材や魔石などの旨味がある為、わざと破壊しない場所もあるのだ。

 そこで場所によっては強力ではないが結界を張る魔導具を置いて魔物が外に出にくいようにしたり、定期的に間引きを行ったりして安全管理をしているところもある。

 その一つが、俺がこれから行くレオスハルト鉱山なのだ。


「じゃあ、行ってくる」


「頼んだぜ」


 俺は鍛冶屋を出ると早速、王都の南側の大門に向かう。

 レオスハルト鉱山は王都の南側の大門から出て、百メートル程の距離にある為、門を通るとすぐに見えた。


 あれがレオスハルト鉱山か。

 しかし、賑わっているな。


 俺は目の前に聳え立つ巨大な岩山の周りにひしめく露店を見つめる。

 この、レオスハルト鉱山は定期的に間引きをしている安全なダンジョンと認定されているので、自然と周りに人が集まり、採掘されたものや素材などを売る露店ができているのだ。

 俺はそんな露店を通り抜け、鉱山の入り口にある詰所に行き、暇そうにしていた兵士に声をかけた。


「すまないが、レオスハルト鉱山の中に入りたいんだが」


「ああ、冒険者か。通行証か通行届はあるか?」


「通行届がある」


「見せてくれ。お、ボリスさんとこの使いか。通ってくれ……って、そうそう、今、間引きする為に、中にクランが入ってるんだ」


「クランか、珍しいな」


 俺はそう言いながらも首を捻る。


 何でクランが金にもならない国家事業の間引きをやるんだ?

 名声目当てでも美味しくないだろうに……。

 まさか、人の良い元冒険者の集まりか?

 

 俺がそんな事を考えていると兵士が眉間に皺を寄せながら言ってくる。


「……あのクランには関わらない方がいいぞ。問題あるパトロンがついているって噂だからな。まあ、ボリスさんとこに行くあんたには関係ないか!」


 兵士はそう言って笑うが、俺はこの時、嫌な予感がしたので、心の中でこの仕事はさっさと終わらせてしまおうと思うのだった。


◇◇◇◇



 あれから俺はレオスハルト鉱山に入り、四、五人程の大人が横に並べるぐらい幅がある通路を進んでいた。


 相変わらずの広さだな……。


 俺は上を見ると天井も大人三人分の高さはある感じだった。

 これは、魔神グレモスがダンジョンを作った際、大型の魔物が通りやすいよう作ったとされている為、ネイダール大陸中のダンジョンは基本的に広い作りになっているのだ。

 すると、その特性を活かしてダンジョン内で宿や道具を売る店を建てる強者達が現れたのだ。

 もちろん、用心棒や魔物が寄り付かない魔法や魔導具を使ったりして、安全に住む事もできるのだ。

 今回、俺が行く場所もそういう所である。


 ここだな。


 俺はボリスに言われた通りの場所に行くと、ボリスの店の看板が付いた扉があった。

 早速、扉の近くの壁にある呼び鈴を鳴らすと扉の一部が開き、中から髭面のドワーフの顔が現れた。


「なんのようだ?」


「俺は冒険者をしているキリクという者だが、ボリスからつるはしと魔石を届けるよう頼まれた」


 俺は収納鞄からつるはしを出して見せると、ドワーフは満面の笑みを浮かべすぐに扉が開けてくれた。


「汚いとこだが入ってくれ」


 ドワーフはそう言っていたが、中に入ると掃除はされているようで、清潔感漂う生活空間が広がっていた。


「俺はラドってんだ。キリク、持ってきた物をそこのテーブルに置いてくれ」


 ラドはそう言ってテーブルの上を指差したので俺は言われた通りに置いていくと、ラドは嬉しそうにつるはしを眺めだした。


「やっぱり親方の作ったものは最高だな!」


 ラドがうっとりしながらそう叫ぶと、隣りにもう一つ部屋があったらしく扉が開いて犬耳族の獣人二人が駆け寄ってきた。


「おお!ついに来たか」


「やっとボロいつるはしとおさらばだな」


「バカやろう!ガッタ!あれは俺が丹精込めて作ったつるはしだ!」


 ラドはそう叫ぶとガッタの頭を殴る。


「痛え!」


「けっ!兄弟子の愛の鞭だ」


「うわ、ガッタ、痛そうな愛だな」


「グッタ……実際、痛えよ……」


 ガッタは頭を押さえて涙目になっているが、ラドは気にする様子もなく、つるはしを見つめて頷く。


「よし、試し掘りしてくるか。お前らは留守番しとけ」


「えー、何でだよ」


「俺達も行きたいよ」


「馬鹿野郎!今日は間引きの日だから下は魔物がウヨウヨしてんだよ。お前ら戦えない奴らは静かに寝とけ」


「ああ、そっか。じゃあ、グッタ、酒でも飲んでようぜ」


「そうだな」


「俺の分も残しておけよ。キリク、お前このまま帰るか?」


「ああ」


「じゃあ、途中まで俺と一緒に……」


 ドゴオーーーーーン‼︎


 ラドが話してる最中、突然、鉱山内に大きな音が響き渡ったのだった。


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