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034 新たな武器

 目が覚めると何故か俺はサリエラに膝枕をされ頭を撫でられていた。


 これはいったい……。


 サリエラはまだ俺が目を覚ましてないと思っており俺の頭を撫で続けている。

 正直、心地良い気持ちと恥ずかしさもあり、しばらく寝たフリをしていたら、サリエラはゆっくりと俺の頭を膝から枕に替えて部屋を出ていってしまった。

 

「ふう……」


 俺は上半身を起こして時計を見る。

 どうやら眠ってから二時間しか経っていないようだった。


 結構寝ていたと思ったんだがな……。

 

 身体を動かしてみると短い時間しか寝ていないのに疲れもほとんど取れていた。


 サリエラ様々ってやつか……。

 だが、さすがに恥ずかしいので、次は頑張って自分の宿に戻って寝るようにしよう。

 ……いや、そうじゃない。

 それより今後は酒場に行った際にサリエラが酔い過ぎないように気をつけないといけないな。

 もし、昨日みたいな事がまたあって周りに知られてしまったらサリエラの将来も傷つくかもしれない……。

 なんせ、サリエラに見合う男が一緒であるならわかるが俺なんだからな……。

 

 俺は洗面台にいき鏡を見る。

 そこには中世的な若い男が映る。

 しかし、ハーフエルフで年をとるのが遅いとはいえ、人族でいえば本当は四十を超えており、サリエラの倍以上の年なのだ。

 まあ、エルフにとっては些細な年齢差だから気にならないだろうが、俺は加護無しであり重い問題を抱えているのだ。

 そして、その問題を誰かに背負わすわけにはいかない。

 だから、誰かと共に生きるという事はあってはならないのだ。


 忘れるなよ、キリク……。


 俺は鏡に自分にそう問いかけた後、軽く身体を拭いて着替えを済ませる。

 それから近くのテーブル席に座ったところでサリエラが部屋に戻ってきた。


「あっ、キリクさん、もう、起きました⁉︎」


「……ああ」


「それなら朝食をもらってきましたので、一緒に食べましょう」


 そう言うと、サリエラは鼻歌を歌いながら、収納鞄からサンドイッチなどを取り出していきテーブルに並べていく。

 そんなサリエラを見て思うのだ。

 早く教えてこいつの為にも離れようと。


「なあ、サリエラ」


「なんです?キリクさん」


「……食事が終わったら冒険者ギルドに行こう」


「はい!」

 

 それから、俺達は朝食を食べ終わると冒険者ギルドに行く為に宿を出たのだが、入り口付近で何故か満面の笑顔の女将に素早く道を塞がれてしまった。


「あらあら。二人ともお出かけ?」


「はい、女将さん。私達、これから冒険者ギルドに行くんです」


「そう、気をつけてね。ふふふ」


 女将は俺だけに見えるようにピースしてきたので、俺は渋い表情になってしまう。


 これは絶対勘違いされてるな……。

 俺は、サリエラの名誉の為にも女将にしっかりと説明しようとしたら、サリエラが俺を心配そうに見てきた。


「キリクさん、大丈夫ですか?も、もしかして昨日全然寝れなかったから疲れが取れてないんですか⁉︎」


「まあまあ!二人共、昨日はそんなに⁉︎」


 女将は片手で口元を隠していたが、明らかにニヤついている。

 そんな女将を見て俺は間違いなく変な事を想像しているに違いないと確信し、誤解を解こうと声をかけようとしたらまたサリエラが話しだしてしまった。


「いえ、私が一方的に絡んでしまって……」


「あらーー!サリエラちゃんから!?グフフふっ」


 女将は驚いた顔をした後、口元を隠すのを忘れて完全にニヤつき出し、遂には空を見上げながら変な笑いをし始めてしまう。

 それを見た俺は女将に説明するのは諦めることにした。


 この手のタイプは何言ってもどうせ駄目だろうな……。

 すまん、サリエラ……。


 俺はサリエラに心の中で詫びると歩きだす。


「サリエラ、早く行くぞ」


「あっ、はい」


「さあ、後、もう一組いたけど、あの後はどうなったのかしらね」


 女将は後ろの方で小声で喋っていたが、俺にはしっかりと聞こえていた。

 おそらく、こういう話しを聞いて妄想するのが女将の趣味なのだろう。


 まあ、客の秘密を話すのは法律で禁止されてるから問題ないだろうが……。


 宿を離れながら、後ろを振り返ると女将は天井の方を見ながらにやけていた。

 明らかに何かを妄想しているのだろう。


 やれやれ。


 俺は頭を振って今の光景は忘れる事にした。


「キリクさん、大丈夫ですか?」


「……ああ、大丈夫だ。それより、今日はサリエラ一人で依頼をこなしてもらう」


「えっ!も、もしかして私の事が嫌になったんですか⁉︎」


 サリエラは泣きそうな表情で俺の腕にしがみついてくる。

 おかげで周りの連中に殺意がこもった目で睨まれてしまった。


「……違う。今日は簡単な依頼を一人でやってもらうんだ。ただし、緊急時以外は精霊を使わずにだ」


「そ、そうでしたか。すいません……」


「いや、言葉足らずでこちらも悪かった。今日は傷薬の納品をやってもらう。ただし、素材集めからだ。エルフだから簡単な傷薬は作れるだろ?」


「はい。ただ、最近はやってませんでしたね」


「まあ、回復魔法もあるし安く売ってるから買えば済むからな。だが、これからは依頼で森や山に入る場合は素材を採るクセは付けとけ。そうする事で、緊急時にすぐ対応できるからな」


「確かにそうですね」


「それとサリエラにはある程度、色々な薬を作る知識をつけてもらうぞ」


「という事は錬金術を教えてもらえるという事ですか?」


「ああ、初歩的なものしか教えられないが回復薬、解毒薬、毒薬、麻痺薬をな。この四つでも種類が沢山あるから覚えるのは大変だぞ。まあ、使うというより、材料や特性を理解して欲しい感じなんだが」


「なるほど。そういうのを知れれば対応もできますからね」


「そうだ、毒や麻痺になった時の状態でどの素材が使われているかわかれば、相手がどういう戦い方をしてくるかも理解できるからな」


「わかりました!頑張ります!」


 そう言ってサリエラは力を入れるポーズをする。

 そんな彼女を見て俺は密かに思う。


 おそらく、彼女ならすぐに俺が教えることは覚えれるだろう。

 そうしたら、さきほど思っていた様にサリエラの為にもさっさと離れよう……。


「……では、俺は鍛冶屋に用事があるから夕方に冒険者ギルドで待ち合わせだ」


「はい」


 それから、俺はサリエラと別れ、気持ちを切り替えボリスの鍛冶屋に向かったのだった。



◇◇◇◇



 ボリスの鍛冶屋に行くと、カウンターにボリスが立っており、俺を見ると笑顔を向けてきた。


「おっ、キリクの旦那じゃないか。今日は何用で?」


「何か良い武器がないか探しにな。あるだろボリス」


「ああ、あるぜ。キリクの旦那にぴったりのがな」


 ボリスは不敵な笑みを浮かべながら棚を漁りだし、一振りの鞘に入った剣を持ってくる。

 俺はそれを見て内心期待してしまう。

 なんせ上級鍛治師の加護を持つボリスは魔導具作りに関しても大陸で五本の指に入る腕を持っているからだ。


「まあ、見てくれよ。気にいるぜ」


 ボリスは鞘から剣を抜くと、俺に刃の部分が見えるように持ってくる。

 要は刃を見ろってことなので刃の部分に顔を近づかせると、近くで見なければわからないぐらいの細い線が刃の部分にいくつも走っていた。

 普通なら、何でこんな事をしたと突っ込むところだが、ボリスが俺にぴったりだと言った意味が理解できた。


「ぴったりどころか俺専用じゃないか……」


「くくくっ、まあ、そうなっちまうな」


「なんでこれを造ろうとしたんだ?」


「前にオルトスにキリクの旦那が魔物が弱る薬剣に塗って戦ってるって話しを聞いてな。面白そうだから造ってみたんだ。この線が入ることで効率よく全体の刃に薬がまわるだろ」


「ああ、これなら薬の量も抑えられるな。だが、強度は大丈夫なのか?」


「鋼の刃の表面にはミスリル銀を薄く張ってるから、今持ってるそれより硬いぜ。それにミスリル銀を使っているから銀の剣といちいち交換する必要もないんだ」


「なるほど、それなら問題ないな」


「それと、見えないが柄には聖属性の魔力が込められた宝石を埋めてあるから銀の剣の上位版って考えてくれ」


「なるほど、いくらだ?今なら余裕があるぞ」


 今の俺の財産は白金貨15枚、金貨30枚、銀貨35枚である。

 ちなみに、この世界のお金は鉄貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨、ネイダール貨となっており10枚で上の貨幣の扱いになる。


「白金貨13枚だが、その剣と銀の剣を下取りで10枚でいいぜ」


 やはり、魔力入りの宝石とミスリル銀を使ってるから高いな。


「よし、買おう」


 俺は腰に下げていた剣と銀の剣と白金貨10枚を出す。


「まいど。防具はまだそれで良さそうだな」


「ああ、十分だな」


 俺の着けているこの防具は、ミスリル銀に魔獣の皮を使った小手と具足付きの軽装鎧で、見た目はただの皮でできた軽鎧にしか見えないものだ。

 これはアレスからキリクになった時に新人冒険者がするような防具に見えるように、ボリスに作ってもらったのだ。

 ちなみにオルトスとグラドラスの案である。


 まあ、弱くなった俺の為を思って言ってくれたわけだが、その割にはあいつら一銭も出さなかったからな。


 ちなみにペンデュラムとこの防具で所持金の三分の二以上が飛んでしまい、残りのものを買うのに苦労したのだ。

 しかし、この防具には何度も助けられている為、勧めてくれた二人には感謝もしている。


 まあ、あいつら絶対につけ上がるから言わないがな。


 俺はつけ上がった時のオルトスとグラドラスのニヤついた顔を思い出し若干イラッとするのだった。


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