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031 原因と響かない奴

「まあ、こんな感じで皆んなラニ村に来たのですが、兄はどうやら私が皆んなをそそのかして連れていってると思っているらしくて……」


「あいつ、ラニ村に嫌がらせをする様になったんだ!」


「そうだ!石を投げてきたり、毒蛇やボアを村の近くに離したりしやがったんだ」


 村人達の言葉にサリエラは呆れた表情で呟く。

 

「それ、もう犯罪じゃないですか……」


「だが、その行動もある日を境に止まったんだろう?」


「はい。三年半前に急にぱったりとなくなったんです。それにうちの村に近づく気配すらなかったので今回の件は違うと思っていたんです。そもそも、あんな化け物を兄が操れるとは思わなかったですし……」


「まあ、それに関してはこれからわかるはずだ。サリエラ、精霊達に相手を殺さない様にして外に連れ出すよう伝えてくれ」


「はい」


 サリエラはすぐに精霊達に話しかけると、沢山の小さな光は明滅した後、消えてしまった。

 まあ、実際は消えてるわけではなく、俺達に存在をアピールするのをやめただけである。


「キリクさん、精霊達が行きましたよ」


「わかった。じゃあ、俺達はここで待ってよう」


 それからしばらくすると、一軒の家から三人の男達が悲鳴を上げながら飛び出して来て、俺達の目の前まで来て倒れると地面にのたうち回った。


「ぎゃーー!助けて‼︎」


「痛い!痛い!」


「熱い熱い‼︎冷たい‼︎」


 どうやら姿は見せてないが、精霊達が攻撃しているらしく、次々と三人の男達の身体に火傷や凍傷などの傷が増えていくのが見えた。


「サリエラ、そろそろやめさせてくれ」


『皆んな、もうやめて』


 サリエラがそう言うと精霊達は攻撃をやめたらしく、三人の男はのたうち回るのをやめたので、俺は三人に近づいていく。

 すると俺に気づいた村長に似た男が痛みで顔を歪めながら怒鳴ってきた。


「き、貴様らか!俺達をこんな酷い目に会わせたのは!」


「酷い目?そもそも酷い事したのはお前達だろ」


 俺がそう言うと三人は顔色が変わったが、すぐにまた俺を睨んできた。


「な、何をわけのわからない事を言ってるんだ!俺達は何もしてないぞ!」


 三人の中で村長に似た男がそう言って仲間の二人に顔を向けると、二人は何度も頷く。

 それを見た村長や村人から怒りの気配が伝わってきたので、俺ははっきりと言ってやる事にした。


「お前らが例えそう言おうが、お前達の周りを漂っている精霊は覚えているぞ」


 俺がそう言うと三人の内、二人の顔色が変わったのを見逃さなかった。


 どうやら、この二人が結界を張り精霊に魔法をかけて動物に閉じ込めた犯人の様だな。

 

 俺がそう思っていると案の定、精霊が教えてくれた。


『私達を動物に閉じ込めて命令した奴!』


『結界を張った奴だ!』


『そしてこの二人に指示した奴よ!』


 精霊達もまだ怒っているらしく、三人の頭上で光り出すと三人は怯えた表情で悲鳴を上げた。


「「「ひぃぃーー‼︎」」」


 それから三人は固まって震え出したので、俺はこいつらが逃げないよう縄で縛っていく。

 すると村長に似た男が恐慌状態から復活したらしく、縛ってる最中に俺に向かって怒鳴ってきた。


「な、何をしやがる貴様!これは間違いなく犯罪だぞ‼︎絶対に訴えて……」


「黙れ‼︎」


 しかし男が喋り終わる前に、怒りの形相をした村長が、男の横っ面を殴り飛ばしてしまう。


バキっ!


「痛えっ‼︎くそっ、俺を誰だと思ってるんだ!お前の兄だぞ‼︎俺を敬え‼︎」


「兄⁉︎お前はクズだよ!いいか、お前達が作り出した化け物に母さんは殺されたんだ!つまりお前の所為で母さんが死んだんだぞ!最後までお前の事を気にしてたんだ!なのに、その、気にしていた奴に殺されたんだぞ!」


「うるさい!うるさい!うるさい!」


「この……!」


 村長は顔を真っ赤にさせながら、また殴ろうと拳を振り上げたので、俺はその腕を掴んだ。


「もうやめておけ」


「キリクさん離してください!こいつは痛みで理解するしかない!」


「いや、おそらくそれでも無理だろう。村長、世の中には何を言っても響かない奴もいるんだ」


 俺は今だにこちらを睨んでくる、村長の兄を見て言うと、村長は肩を落として頷いた。


「ああ……そうですね。それでこれからどうされるのですか?」


「今回の件で犯罪をしているのは確定だから、冒険者ギルドに引き渡す。まあ、おそらく余罪も出るだろうな」


 俺がそう言うと話しを聞いていた村長の兄が再び怒鳴ってきた。


「ふざけるな!トキ村から村人を奪ったから俺は仕返ししただけだ!俺は悪くない‼︎」


 村長の兄が唾を飛ばしながらそう言ってくるが、俺は首を振る。


「言い訳は冒険者ギルドでしてくれ。ああ、そうだ。その前にお前達は精霊達に言い訳をしないとな。サリエラ、後で精霊達と話をさせてやってくれ。もちろん、死なない程度なら可愛がって良いともな」


「わかりました。しっかりと伝えておきます」


 サリエラが笑顔でそう言うと、三人は血の気が引いた顔になり黙り込んでしまうのだった。



◇◇◇◇



 あれから、三人が精霊達と話し合いをしている最中、俺達はトキ村を見て回ったのだが、村には三人以外誰もいない事がわかった。

 現在は気絶した三人を村人に抱えてもらい、ラニ村に戻っているところである。


「残ってた村人も嫌気がさしてしまって出て行ったんでしょうね」


「まあ、それも含めてこいつらには喋ってもらうさ。それより……」


 俺は村人達に軽々と運ばれている三人を見る。

 今、三人はサリエラの魔法で体重を軽くしてもらっているのだ。


「やはり魔法は便利だな」


 俺がそう呟くと、サリエラが申し訳なさそうな表情を浮かべて俺に言ってくる。


「あの……私、今回活躍したのこれぐらいの様な気が……」


「何言ってるんだ。精霊達との会話だって十分な活躍だろ。むしろ今回のはサリエラ一人でもできたはずだ」


「いえいえ、結界解除は強引に出来たとしても魔法解除なんて私には無理ですよ!」


「何故だ?アダマンタイト級の魔法剣士ならできるだろ?」


「……自慢じゃないですが、精霊頼りの斬って終わりの討伐依頼ばかりをやってのアダマンタイト級ですから」


 サリエラはそう言って胸を張るが、斬って終わりの討伐依頼だって大変である。

 おそらく、サリエラの剣の腕前は相当なのだろう。

 そして、フォローできる精霊も間違いなく上位の精霊の可能性がある。


「……そういえばサリエラの精霊の属性はなんだ?」


「風と水です」


「なるほど、攻撃系も治療系もできるって事か」


「はい。私もできますけど精霊の方が効果が高いんです」


「要は三人パーティーをしてる様なものだな。なるほど、色々納得した」


「でも、今回の様に結界によって精霊達と離れて一人になってしまった事で、自分が何もできない事がわかりました」


「なら、自分に何が必要か見えただろう」


「はい。知識に経験に魔法にキリクさんです!」


「知識に経験に魔法を頑張れよ」


「ちょっと、最後が一番大事なんですよ!」


「魔法は確かに大事だな。解除系の魔法をしっかり覚えろよ」


「うー……。わかりましたよー」


 サリエラはそう言って、恨めしそうに俺を見てくるので俺は溜め息を吐く。


 全く、また面倒な生徒が増えたな。


 俺はそう思いながらも、久々に充実した冒険者としての一日を送れた気がし、自然と口角が上がるのだった。


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