028 怯える精霊
ラニ村に到着した俺達は近くにいた村人に依頼の件で来たと伝えると、快く村長の家に案内してくれた。
「よく、来て下さいました」
「村長、早速だがラニ村に出る化け物について教えて欲しい」
「はい、化け物は二年前に突然この村に現れたんです。それで村人が襲われて死人まで出たので冒険者ギルドに依頼して倒して頂いたんですが、しばらくしたらまた現れたんです。それで、都度お願いしていたのですが……」
「金に余裕がなくなってしまったか」
「はい……。うちは自給自足に近い生活をしてますのでお金を用意するのは大変で……」
「そこで、ああいう依頼書にしたのか」
「はい。冒険者ギルドからの計らいで。おかげさまで助かっております」
「なるほど。それで、倒した化け物が姿を変えると書いてあったがどういうことだ?」
「……はい、化け物は現れるたびに猪、狼、鳥、蛇、豚と姿が変わるんですよ」
「村長、魔物は入ってないのか?ここら辺にはボアやマウンテンウルフもいるだろ?」
ちなみにボアと猪は姿が似ているがボアは魔物で猪は動物であるから別の生き物である。
この世界にはこんな感じで似た様な生き物が沢山いるのだ。
しかも混血種もいたりするのだから覚えるのが大変なのである。
「いえ、全て動物でしたね。しかも全て大人の背を超える程の大きさで……」
村長が姿を思い出したのか身震いしていると、部屋の隅みに隠れて聞き耳を立てていた村長の子供が飛び出してきて嬉しそうに言ってきた。
「あいつ、喋るんだよ!」
「喋る?」
「おい、ノル、変な事を話すな」
「父ちゃん、俺や友達だって聞いてるんだよ!」
「お前達、悪ガキ連中の作り話だろ。大人は誰も聞いてないんだ。あっちへ行ってなさい」
「なんだよ!父ちゃんの馬鹿やろう!」
ノルという子供は壁を蹴ってから外に出ていってしまった。
そんなノルがいなくなった方向を苦笑いしながら村長は見る。
「すいませんね。あいつ冒険者に憧れてまして」
「……いや、大丈夫だ。それより化け物は他の村には来ないのか?」
「それが、隣りの村とは関わりがありませんので……」
そう話した村長の表情が一瞬だけ険しくなったのを俺は見逃さなかったが、今は突っ込まないでおくことにした。
「……では山に結界が張ってあるのは知ってるか?」
「結界ですか?知らないですね。」
村長は首を傾げるが、その表情などから本当に知らない様子だった。
なるほど。
これは色々調べた方が良いかもしれないな。
俺は少し頭の中で纏めようとしていると、今度はサリエラが村長に質問を始めた。
「あの、今は皆さん夜になったらどうされてるんですか?」
「夜になったら頑丈な家に集まって朝まで一歩も出ない様にしていますね。化け物は壁を叩いたりしますが壊すまではしてこないんです」
「それは家を守る精霊が化け物の侵入を防いでいるからですよ。このラニ村は自然に対して優しく接してるみたいですね」
「はい、この村は精霊神オベリア様を信仰してますから、自然との共存を大事にしているんです」
村長はそう言うと、胸ポケットから精霊文字か沢山書かれた三センチ程の木片を出し、俺に見せてきた。
これは精霊神オベリアを信仰している者が持つお守りであり、祈りを捧げることで、一定時間、器用さに素早さや耐性などがほんの気持ち程度だけ高まるらしい。
精霊神オベリアを信仰してる村か。
なんだか引っかかるが、とりあえずこんなところでいいだろう。
「では、そろそろ俺達は村の周辺を調べにいくよ」
「えっ、夜まで待たれないのですか?」
「いや、それだと倒してもまた現れるだろう?俺達は化け物とやらが二度と出ないようにする為にきたんだ」
「そ、そうだったんですか!で、でも、お金を全然払えないのですがよろしいのですか……?」
「ああ、問題ない」
「あ、ありがとうございます!」
村長は涙目で何度も頭を下げてくる。
おそらく、倒してもまた化け物が現れると諦めが入っていたのだろう。
これはしっかりとやらないとな……。
俺は涙を堪えながら何度も頭を下げてくる村長を見ながらそう思うのだった。
その後、村長にしばらくしたら戻ると伝え俺達は外に出たのだが、すぐにサリエラが声をかけてきた。
「家にいた精霊に化け物の話を聞いたら、怯えて何も話してくれませんでしたよ。相当、化け物が怖いんでしょうね……」
「あんな感じに毎晩来られてたらそうなるかもな」
俺は所々がへこんだり引っ掻かれたりしている村長の家の壁や扉を見たのだが、よく見ると他の家も同じ感じになっていた。
「早く解決してあげたいですね。でも、これからどうするんですか?」
「まず、依頼者からの情報収集が終わったが、ここまででサリエラが気になった事はあるか?」
「やはり、精霊を通さない結界が気になりますね。誰がこれをやったか調べた方が良いと思います」
「ああ、俺も結界は何かしら関係してると思ってる」
「じゃあ、早速調べに行きましょう」
「いや、その前にやる事がある」
俺は近くの切り株の上に立てた薪に、石を投げて遊んでいるノルと二人の子供の方に歩いていく。
「その薪を倒したら勝ちなのか?」
遊びに夢中になっていた子供達はいつの間にか近くにいた俺にびっくりする。
「いつの間にそこに⁉︎」
「気づかなかった!」
「冒険者の人だーー!」
「ああ、冒険者だ。そしてこういう事ができるぞ」
俺は石を拾うと素早く薪に向かって投げる。
すると石は薪の中心に当たり切り株から落ちていった。
「すげー!一発で落とした!」
「兄ちゃんすげー!」
「冒険者はやっぱ、すげーな」
「コツさえ掴めばできる」
俺は子供達に石を投げるコツを教えると、子供達は飲み込みも早くすぐに薪に当てれる様になった。
「一発で当てれる様になったよ。ありがとう」
「お前達の腕が良かったんだよ。ところで夜に現れる化け物について教えてくれるか?」
「へへ、石の投げ方を教えてもらったから教えるよ!」
「お、俺も!」
「私もー!」
そう言うと子供達はこぞって俺達に夜に現れる化け物の話をしてくれたのだった。
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