250 キリクの世界
キリクさんは私を見るなり溜め息を吐く。
「ふう、何故来たんだ……」
「キリクさんに会いたかったからです」
「悪いが、俺はもう誰とも会いたくない……」
「….…どうしてですか?」
「どうしてだと?もう、疲れたんだよ。俺はゆっくり眠りたいんだ」
「……キリクさん、それは闇に飲まれたからそう思わされているんですよ!」
「いや、俺は約束の為に生きてただけで、本当はあの日からずっと思っていたんだ……。まあ、そんな約束さえも守れなかったがな……」
「なら、その約束を叶えましょうよ」
「もう、いいんだ。俺には無理なんだよ。頼むからこのまま眠らせてくれ……」
キリクさんはそう言うと身体が地面に沈み始めてしまう。
そんなキリクさんを見たアンクルは焦った表情になる。
「まずいわ。これ以上、沈んだらもう引き上げられない……」
「えっ……」
私は急いでキリクさんを掴んで、引っ張るが全く動かず、どんどん沈み込み膝までいってしまった。
嫌だ……。
何でよ!
「キリクさん!」
「サリエラ、未来あるお前が、先のない俺なんかに構うな」
「嫌です!私はキリクさんが良いんですよ‼︎キリクさんと一緒に幸せになりたいんですよ‼︎」
「……サリエラ。気持ちはありがたいが、それでも駄目だ」
「どうしてですか⁉︎」
「皆んながあんな風に死んだんだ。俺だけ幸せになってはいけないんだよ」
キリクさんはそう言って俯く。
そんなキリクさんはもう腰まで沈んでいってしまっていた。
私は全く止められないこの状況にどうしていいのかわからなくなり、思わずアンクルの方を見るが、アンクルは道を切り開くのに精一杯で頼れる状況じゃなかった。
どうしよう……。
私の言葉じゃ届かないよ……。
私じゃキリクさんを助けられないの?
嫌よ、二度と会えないなんて……。
「……キリクさん、私を置いてかないで!一人にしないで……」
私は俯いて思わず泣いてしまう。
するとキリクさんは私の涙を指で拭いながら言ってきた。
「……すまない」
「キリクさん……」
私は呟くようにそう言うが、キリクさんは答えることもなく、顔まで沈んでいき私が掴んでいた腕だけになってしまう。
そしてその腕も沈み込もうとした為、私は必死になって引っ張るが全く引き上げる事ができなかった。
そして、ついに手首辺りまで沈んでしまい、もう駄目かと思って私は絶望しそうになったその時、横からキリクさんの腕を掴む者が現れた。
「はあっ、本当に君って人は駄目だね」
そう言って呆れた顔をするのは金髪に青い目をした少年だった。
私は思わずその少年を見るとこっちを見て笑う。
「駄目だよ。彼はもっと強く言ってやらないと。なんせ何度言っても響かないやつなんだからね」
少年はそう言ってくるので私は思わず、目を瞬きしていると少年は言ってきた。
「ああ、僕は彼の友人だよ。さあ、思いっきり引っ張ろう」
「は、はい」
私は思わず言われた通りやるとさっきまではできなかったのに、今は少しずつだが、引っ張りだす事ができた。
そして顔が出てくると驚いた表情で隣りにいた少年を見る。
「……なんで、お前がここにいるんだ?」
「どうせ、君の事だからうじうじしてるだろうと思ってね。待っててあげたんだよ。そしたら、君が片足をこっちに突っ込んでるのが見えてね」
「……すまない」
「謝るのはまだ早くない?これからでも色々とやれるでしょ?」
「俺には無理だよ……。もう疲れた……」
キリクさんはそう言うと、ゆっくりまた沈み始める。
すると少年が溜め息を吐きながら私に言ってきた。
「中々、闇が深いね……。これは僕達では難しいかもしれないな……」
少年はそう言ってキリクさんを悲しげに見つめると、その横から手が伸びてキリクさんを掴んだ。
「なら、私達も手伝うわよ」
そう言ってミナスティリアさんは私達を見てくると、私の隣りにファルネリアさん、ミランダさん、リリアナさん、マルーさんが来てキリクさんを囲うよにして掴んだ。
「皆んなでやればいけるわ」
「そうそう、あたし達でいけばね」
「掴んだら離さない。死ぬまで一緒」
「キリク、もう自分を傷つけないでよ!」
皆んなはそう言うと目を合わせて頷き、一斉に力を入れてキリクさんを上半身まで引き上げる。
すると突然、キリクさんに黒いモヤが絡みつき水牛の角が生えた女性に変わった。
「こいつを楽にしてやれ。また傷つける気か?」
女性はそう言って私達を睨んでくる。
突然、現れた存在に私達が警戒しているとアンクルが駆け寄ってきてキリクさんを掴むと私達に向かって言った。
「気にせずに引き上げなさい」
私達はその言葉にキリクさんを引き上げ始めると、女性は間近でアンクルを睨みつけてきた。
「ちっ、邪魔をするな」
「邪魔をしているのはあなたよ」
アンクルはそう言うと私達を見回し言ってきた。
「今から皆んなの魔力を高めて聖属性の結界を作るわ。いくわよ」
アンクルがそう言うと同時に私達の魔力がごっそり取られて、私達を囲うように聖なる結界が囲い、キリクさんにまとわりついていた黒いモヤと女性がかき消えた。
いける!
私は皆んなを見ると同じ思いだったらしく頷いてくる。
だから、皆んなで叫んだ。
「「「「「「「せーのっ‼︎」」」」」」」
私達は一気にキリクさんを引っ張りあげ、完全に引き上げる事に成功したのだった。
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