025 サリエラの限界
「き、キリクさん、冒険者ギルドに行くんですよね?一緒に行ってもいいでしょうか?」
「……別に冒険者ギルドに行くのに俺の許可なんていらないだろ」
「そ、そういう事ではなくて……」
「もしかして俺がギルド長に呼び出された件が気になるのか?まあ、死霊術師の件かもしれないしな。しかし、お前も真面目だな」
俺が呆れた口調でそう言うと、サリエラはなんとも言えない表情で俺を見てくる。
「……ありがとうございます。もう、本当に……」
サリエラはそう言った後、作り笑いを浮かべながら冒険者ギルドの方向にさっさと歩いていってしまった。
そんなサリエラの背中を見て、俺は本当に真面目だなと感心するのだった。
◇◇◇◇
冒険者ギルドに到着すると、俺達はすぐにギルド長のブロックの部屋に通された。
「キリク、忙しいところ悪かったな」
「いや、それで要件は?」
「まずはレクタルの報告資料を読んだ結果、キリクの活躍具合を見て、ランクをシルバー級に上げる事にした。おめでとう」
ブロックはそう言ってくると、シルバー級の証になる腕輪を俺に渡してきたので受け取ると、サリエラが笑顔で拍手してきた。
「キリクさんおめでとうございます!」
「……ああ」
「それと、パーティー疾風の剣がやらかした件だ。ワーロイとケイは虚偽の報告をした事と、同じパーティーのマリィとルナの証言で、キリクの品位を貶める行為をした為、二年間の制約付きでプラチナ級からシルバー級に降格となった」
「なかなかきつい処罰だな」
俺はそう言いながら内心、当然だなとも思った。
なんせ、虚偽の報告をしたワーロイとケイは信頼と信用をするに値しないのだ。
そんな信頼と信用が必要な依頼ができなくなるのが制約付きなのである。
つまり、毎日出ている簡単な依頼しかできなくなるのだ。
更に自分達が今までした事も周りに公表される為、これから二年間はまともに冒険者はできないと宣告された様なものである。
二年間で自分自身を見つめ直してもらいたいものだが……。
まあ、無理だろうな。
俺がそんな事を思っていると、ブロックが苦笑いしながら言ってくる。
「正直、足りないぐらいだよ」
「他に何かやっていたのか?」
「証拠は出なかったけどね。まあ、当面は彼らには目を光らせるつもりだよ。ああ、そういえばマリィとルナもシルバー級に降格になった。現在はパーティーを抜けて二人で当面やるそうだ」
「そうか、まあ、二人はしっかりしているから大丈夫だろう」
「ほお、キリクは彼女達に対して怒ってないのか?」
「思うところはあるが最初はよくしてくれたし、今後、会えば挨拶程度はする」
「そうか、二人はかなり気にしてたみたいだから聞いたら喜ぶと思うぞ。次にレクタルの事なんだが、キリクはネルガンとの戦争を勉強したと書いてあったからな。そこで相談というか質問なんだが……町の形は元に戻るのか?」
「残念ながら無理だろうな。それにあの場所は不死の領域の空気に汚染されているから何が起きるかわからないぞ。まあ、元に戻るとしても何百年先になるかどうかだろう」
「そうか……町の七割が捻れたり変な植物が生えたりしてるからな」
「植物に関しては人に害があるか調べた方が良い。建物はもう人が住める状態じゃないだろう」
「中も凄い事になってるらしい。これはネルガンに襲われたフローズ王国みたいに観光地にするしかないか……」
「場所によっては不死の領域の魔物が生まれる可能性があるから、兵士や冒険者に定期的に見回りさせるならできるだろうな。なんなら、スノール国王に管理の仕方を聞いた方が良いかもな」
「なるほど、では、そう上に報告しておこう」
ブロックはそう言うと、メモしたものを纏め出したので、俺はサリエラに声をかける。
「お前は聞かなくていいのか?」
「えっ?あっ、はい……。ギルド長、死霊術師に関して何か情報はないですか?」
「残念ながらないな。あれから何処からも情報がないんだ」
「そ、そうですか……」
サリエラは何故かブロックの話を聞いた後に俯いてしまう。
おそらく、死霊術師の有力情報がなくて悔しいのかもしれない。
真面目なやつだな。
俺はそう思いながら俯いて何か呟いているサリエラを見つめるのだった。
◇◇◇◇
その後、話も終わり、俺達はギルド長の部屋を出て依頼書が貼ってある掲示板前に移動していた。
「キリクさん、依頼を受けるんですか?」
「ああ。ソロ冒険者としての久々の依頼だ」
「やはり、ソロでやって行くんですね……」
「ああ。そういえばサリエラも一人みたいだな。お前もソロで行動しているのか?」
「はい、今回みたいに臨時で組んだりする事はたまにあるんですけどね」
「ほお、そうなると、ほぼ一人でアダマンタイト級になれたのか。相当優秀じゃないか」
「い、いえいえ!私はほとんど精霊頼みなんです」
サリエラは両手を振りながら大きく首を振る。
「精霊?サリエラは精霊使いなのか」
「後、ほとんど使ってないんですけど魔法剣士の加護も持ってるんです……」
「精霊使いに魔法剣士……サリエラは上位の加護を二つも持ってるのか」
「はい、でも、先程言ったように精霊達の言うことを聞いてたらトントン拍子にランクが上がっていっただけなんです。だから、知識や経験が全く追いつかなくて……。そんな時、キリクさんにお会いしたんですが、精霊がキリクさんに色々教われと囁いてきたんです……」
「なるほど、精霊に言われたのか。だからあの時、じろじろ見ていたんだな」
「あの時は突然過ぎて申し訳ありませんでした。それでですね……。パーティーは組まなくて良いですから、私に色々と教えてもらえないでしょうか?」
サリエラはそう言って不安な表情を浮かべて俺を見つめてくる。
そんなサリエラの表情に俺はかつての教え子達と同じものを感じて悩んでしまう。
精霊が教え以外は全て一人でやってきたが限界を感じたか……。
まあ、冒険者に関しての知識は教えてたし、サリエラが成長するのは冒険者ギルドにとっても本人にとっても良いことか……。
仕方ないな。
俺は溜め息を吐くと頷く。
「……良いぞ」
「ほ、本当ですか⁉︎」
サリエラは大きな声をあげ、もの凄い勢いで俺の手を掴んできた。
それを見た教えは余程、知識や経験不足で悩んでいたのだろうと不憫に思っていると、サリエラは涙まで流し始めてしまったのだ。
すると、場所が悪かったのか周りにいた冒険者達に睨まれてしまったのだ。
「おい、あいつ女を泣かせてるぞ」
「あんな綺麗な子を泣かせやがって!クソが!」
「死ねば良いのに!」
周りの冒険者達は俺がサリエラを泣かせたと思っているのか、睨むだけでなく罵声まで浴びせてきたのだ。
おかげで、俺はサリエラの腕を掴み急いでその場から逃げるはめになったのだった。
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