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236 ローグ王国の問題児

 ローグ王国の中心にある多重結界と巨大な壁に囲まれた最重要機密区域エインへリアル。

 私はどうにか一番奥にあると言われる異界の門に入れないか常日頃から考えていた。

 それは、あの中に封じられていると言われる、神々の母であり、この世界を作ったアステリアに用があるのだ。

 しかし、この国の国王でさえエインへリアルに入れないのだから、当然、私も入れるわけなく、常に悶々としていたのだが、最近、チャンスが巡ってきた。

 それはローグ王国に賊が侵入し町に張られた結界が破壊されたのだ。

 しかも、賊はエインへリアルを狙っていると情報も流れたのだ。

 だから、私はこの機会を絶対に活かさないといけない。


 この世界を作った彼女ならきっとキール兄様の魂の居場所を知ってるはず。

 だから、待ってて。

 必ず迎えにいくから。


 私はそんな事を思いながら部屋で機会を伺っていると、ローグ王国の王妃であり私の姉てもあるライラがノックをした後、部屋に入ってきた。


「アリシア、ここにいたのね」


「……どうしたの姉様?」


「あなたの耳に入れたいことがあってね。この国に賊が入ってきたと報告があったの」


「ええ、城中、騒いでるんだから知ってるわよ」


「そう……。それでね、その賊が最重要機密区域に入ろうとしてるらしいの」


「へえ、そうなの?」


 私がわざととぼけながら聞くと、ライラは明らかにほっとした様子になる。

 私がこの件に興味がない事に安心したのだろう。

 なんせ、私は隙あらばエインへリアルに入ろうとしている問題児なのだから。


 おかげで監視までついてるし、理由まで皆んなに知られてるから最悪よ……。

 全く、若い頃の駄々を捏ねてるだけの私を叩いてあげたいわ。


 私が昔の事を思い出して頭を抱えていると、ライラが隣りに座り、小声で声をかけてきた。


「今さっき外周の東側にあるレオスハルト王国から報告が来たわ。南側のダンジョンで魔王が倒されて新しい魔王が現れたと」


「魔王が倒されて新しい魔王が現れた?どういう事?」


「今回、ローグ王国に入った賊が新たな魔王を作り出したの。それで本当は黙っていたかったのだけど、あなたがまた後から知って傷つくのは嫌だから言うわ……」


 ライラはそう言うが俯いて黙り込んでしまう。

 そんなライラを見て何か嫌な予感がしていると、ライラはゆっくりと顔をあげて言ったのだ。


「その魔王になる前のキリクという冒険者から出てきた闇の力が具現化したものがね……言ったそうよ。キール・オルフェリア・H・セイラムと……」


 そう言うと、至急、東側から取り寄せたキリクという冒険者の似顔絵が描かれている一枚の紙を私に渡してきた。

 私は若干震える手でそれを受け取り見て目を見開く。

 そこに描かれている顔は黒髪に黒目だったが、キール兄様に似ていた。


「どういうこと……」


 だって、キール兄様はあの日に死んだんじゃ……。

 いや、勝手に死んだと思い込んでいたのは私達だ……。


「……でも、なんで連絡を……ああ、私達に連絡する手段も方法もなかったのね……」


「城は焼けてしまってたものね……。それに自分がオルフェリア王国の王族だと証明するものもなかったのかもしれないわ……」


「……じゃあ、キール兄様は生き延びていたの?」


 私がそう聞くとライラはわからないと首を振る。


「本当にこの人物がキールかはわからないわ。こんなことなら、勇者アレスにも接触すべきだったわ……」


「勇者アレス……」


 私はその名を聞いて拳を握りしめてしまう。

 だって、本人ならあの日の約束を守れなかったことになるのだからと、あの時はそう思っていた。


 けど、アレスはキールお兄様を助けていたの?


 アレスに聞きたいけど、もうアレスはこの世にはいないのだ。

 彼は北側のスノール王国で亡くなったと言われている。


「その魔王はローグ王国に入って来てるのよね。今、どこら辺にいるかわかる?」


「……アリシア、まさか会いに行こうなんて考えてないでしょうね?」


「……もちろん、一人で会いに行こうなんて馬鹿な行動はしないわよ。でも、沢山味方がいる最重要機密の場所で待つというのはありよね」


 私はそう言って立ち上がると、ライラが慌てて私の腕を掴もうとする。


「駄目よ!アリシア‼︎」


 けれど、私はその手から逃れるとライラが何か言う前に部屋から飛び出した。


 ごめんなさい。

 やはり、自分で確認したいのよ。


 私は心の中でライラに謝罪しながら、賊が向かったとされる、エインへリアルに向かって走るのだった。



◇◇◇◇



 エインへリアルの近くに到着すると、その相変わらずの厳重さに、安心感と腹立たしさの両方が生まれる。

 けど、今はこの厳重さの方が大事だというのは私でもわかる。

 なんせ、この壁の結界は魔王と呼ばれる存在を中に入れない為のものでもあるのだから。

 私は眼前に聳え立つ巨大な壁を見上げる。

 この壁は四方を囲っており、中に後、二つの壁があるのだ。

 その壁と壁の間の距離は一キロは離れており、私が今まで行けたのは二つ目の壁の手前までだ。

 だから、三つ目の壁の向こうがどうなっているのかわからない。

 だが、異界の門があるのは知っている。

 そして中にいる生き物と神と呼ばれる存在も。

 本当はこの賊の騒動に紛れて先に入ってしまおうかと思っていたのだが、ライラの話しを聞いて状況が変わってしまった。


 生きてるなら行く必要はないものね。

 でも、魔王は本当にキール兄様なの?

 もし、本当だったら私はどうすればいいの……。


 私はどうしていいか分からず、目の前の壁を見上げていると、聞きたくない声と共に見たくない人物が視界に入ってきたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 題名が『ローブ』なのに、開幕早々『ローグ』なのはこれは如何に?
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