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023 国王との攻防

「このたびはレクタルの件ご苦労だった」


「……いえ」


「楽にして良いぞ。キリクよ」


 目の前にいる穏やかな老人は大陸の東側のレオスハルト王国領を治める国王バラハルトである。

 初めてその顔を見たが、見た目では判断しない方が良いと俺の勘が言っていた。


「わかりました。しかし、俺の様な者に話とは?」


「うむ、それはお主が不死の住人と会話をし、元の世界に帰ってもらったと、ここにいる者達から報告を受けたのだ」


 バラハルトの隣にはオルトス、サリエラ、リミア、そしてミナスティリアがいる。

 ちなみに当たり前だが、バラハルトを守る近衛騎士以外は皆んな武器や防具は外している。


「なるほど、しかし報告書はギルドに提出してますが……。それとも俺の口から聞きたいという事ですか?」


「ふむ、単刀直入に聞こう。死霊術師から本を盗んだと聞いたが、死霊術師の幹部でも片言がせいぜいなのに、お主は向こうの住人と普通に会話をしていたと聞く。何故お主が不死の領域の言葉を流暢に喋れるのかを聞きたい」


 バラハルトは穏やかな表情で言ってくるがその鋭い眼光は間違いなく俺を疑っていた。

 更に近くにいたミナスティリアも俺に向けて威圧をかけてきたのだ。


 ……そう来たか。


 俺は内心舌打ちをしてしまう。

 それと同時にまあ、当然かとも思う。

 なんせ、向こうの言葉を喋れる怪しい俺は、この国にとっては危険な人物になるかもしれないのだ。

 まあ、だからといって国王がいる場所に呼ばれるという事は危険人物とまでは思っていないはずだ。

 そうなるとバラハルト自ら俺を見定めようとして呼んだか……。

 だが、本当の話をすれば俺がアレスだとバレる。

 それは俺を助けてくれた連中にも迷惑がかかる為、絶対に避けたい。


 俺はオルトスを睨むと目を逸らされてしまった。


 あいつ、ミナスティリアと話す時、もう少し上手く濁せなかったのか。

 まあ、オルトスの頭ではそんなの無理だし、側にはサリエラもいたから結局は報告されていたか。

 ここは仕方ない。


 俺はゆっくりとバラハルトの鋭い眼光を真正面から見つめ返しながら答えた。


「俺は彼らに話した通り、死霊術師から本を盗んで学んだだけです」


 俺はそう言って黙ってバラハルトを見つめると、バラハルトは俺を値踏みする様に見てきた。

 そして、俺達はお互いに目を合わせ、探り合いと牽制をしあっていたのだが、しばらくするとバラハルトは、ふっと笑い目を閉じた。


「なるほど。わかった。わしはお主を信用しよう」


 バラハルトがそう言うとミナスティリアが驚いた表情でバラハルトを見た。


「国王様、信じるのですか?」


「うむ、色々と腹には抱えてそうだがな」


「では、真実の玉を使用して」


「ミナスティリアよ、このわしが信じると言ったのだ。それを理解した上でそれを使うという意味はわかるな?」


「……すみません」


 ミナスティリアはバラハルトに謝るが、その顔は全く納得してない表情で、しまいには俺の方を一瞬だけ睨みつけてきた。

 俺はそんなミナスティリアの睨みに気づかないフリをしていると、バラハルトが俺に満足そうな顔をしながら話しかけてくる。


「さて、キリクよ、疑って悪かったな。詫びも含めて今回、レクタルで活躍したお主に我が国から報酬を出す」


「ありがとうございます」


 俺は召使いから白金貨も何枚か入っている袋を渡される。

 今回、冒険者ギルドからも死霊術師討伐に情報収集、そしてレクタルの魔物討伐の報酬が出たので、もうただの村人なら働かなくても良いくらい稼ぐ事ができた。


「では、キリクよ。このレオスハルト王国の為にまた活躍をしてくれよ」


「頑張ります……」


 そう言い、俺はバラハルトに挨拶して謁見の間を出るというか逃げることができた。


 なんとか逃げ切れた……。

 まあ、他にも手札があったが視線だけでの会話が通じて良かった。

 なんせあれが一番楽なやつだからな。

 とりあえず、ミナスティリアが何か言ってきそうだからさっさと城から出るか。

 それに死霊術師の件も一応片付いただろうからソロ冒険者として活動できるか冒険者ギルドに確認しに行ってみても良いな。

 

 そんなことを考えていたら謁見の間からサリエラ、オルトス、リミアが出てきた。


「追い出されちまったぜ」


「俺の事か」


「間違いないな。面倒事になる前にさっさと城を出ようぜ」


「依頼は良いのか?」


「俺とエルフの嬢ちゃんは今回の件で依頼は終了だ」


「死霊術師が不死の世界に行ったんだぞ。もしかしたらネクロスの書を取ってきてしまうかもしれないのに……そうか勇者パーティーが引き継ぐのか」


「そういう事だ。俺達はお払い箱だよ」


「私達じゃ今回力不足でしたからね」


「それを言うなら騎士団もね。今回、我々は全く役に立たなかったわ。だから、有能なキリクを引き入れようと国王様は思っているわよ」


「だが俺は勇者に怪しまれてるぞ」


「そんな事はあの方には関係ないわ。それに今日だって国王様自ら貴方を見定めたかったみたい。まあ、最初は勇者が言ってきたみたいなんだけど、報告を聞いているうちにあなたに興味を持ったみたいね。うちの国王様は穏やかそうな見た目だけど良い意味で腹黒いのよ」


「なるほど……」


 どうやら、逃げ切ったわけじゃなくて逃がしてくれたの間違いか……。


「とにかく、今後、何かあれば声がかかるかもね」


「まあ、俺にできる範囲ぐらいならやるさ」


「そう伝えておくわ。キリク、私もあなたには期待してるわよ」


 そう言うとリミアは俺達に敬礼してから去っていった。


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