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022 勇者ミナスティリア

「凄い光景ね」


 ミナスティリアは周りを見回して溜め息を吐くと、オルトスの方に向き直り、懐かしそうな表情で見つめる。


「久しぶりね、オルトス」


「おお、ミナスティリアの嬢ちゃん、久しぶりじゃねえか!まだ、後輩共に抜かれてねえか?」


「あなた相変わらずね。まだまだ抜かれる気はないわよ。それより、もの凄い強い気配をこの辺りにに感じたのだけど、オルトスがもう倒したの?」


「いや、やっこさんなら帰ったぜ」


「帰った?そういえば門もないわね。どういう事かしら?」


 ミナスティリアはそう言って周りを見渡し首を傾げる。

 その時、オルトスが一瞬、俺を見てきたので、俺の事は話すなと目で訴えると、オルトスは任せろと言わんばかりに頷き、ミナスティリアに答えた。


「キリクが話して帰ってもらったぜ」


 そう言った後、オルトスは俺に親指を立ててくる為、俺は盛大に溜め息を吐いた。


 わかってただろう。

 こいつに任せた俺が悪い。


 俺は仕方なくミナスティリアの方を見ると、怪訝な表情を浮かべて見てきた。


「どうやって帰したのかしら?」


「向こうの言葉を使ってな」


「それはどこで覚えたのかしら?」


「答える必要が?」


 ミナスティリアは俺の言葉にこめかみをピクっとさせると、軽く威圧感を込めてくる。


「……ええ、もちろんよ」


 ミナスティリアはそう言って更に威圧感をかけてきたが、あいにく元勇者だった俺にはそういうのは聞かない。

 だが、答えないと面倒な事になるので嘘を吐く事にした。

 

「……死霊術師から奪った本を見て覚えた。ちなみにその本は紛失した」


 俺がそう言い終わると、ミナスティリアは表情こそ変えなかったが、俺に対して疑いを持ったのは確かだった。

 それは一瞬、片方の眉が上がったからだ。

 これはミナスティリアが相手を疑ってる時にする癖である。


 あれだけ注意したが、まだ治ってない様だな。

 だが、どう出てくるか。


 俺はジッとミナスティリアを見つめると俺から視線を外した。


「そう、わかったわ」


 ここでは、探ってこなかったか。


 そう思って安堵しているとミナスティリアは元、人だったもの達を見て目を細めながら質問してきた。


「じゃあ、後はこれを向こうに送ってあげれば良いのね?」


「……ああ、それで勇者殿の仕事は終わりだな。後は俺達で町の掃除はするよ」


「……キリク、遠慮しないで良いのよ。私も一応冒険者だから」


 ミナスティリアはそう言いながら、目の前にいた元、人だった者達を一振りで文字通り消してしまった。

 宝具レバンテイン、どんなものでも斬る事ができる勇者しか扱えない大剣で宝具でもある。

 そして、俺が昔所持していた大剣でもあった。

 ちなみにミナスティリアが着ている鎧も元々俺の鎧である。

 宝具アレスタスの鎧、着る者により形状を変化させる鎧でオリハルコンで作った剣でも傷は付かなく、更に着ると空を飛ぶことができるのだ。

 二つとも力を失った俺では着れなくなってしまったので、後輩でもあったミナスティリアにあげたのだ。


 しかし、俺だと気づかないものだな。


 キリクになって初めて会ったが、全くミナスティリアは俺に気づいてる様子はない。


 まあ、俺は常にフルプレートで全身を覆って気配を常に消していたからな。

 まさか、それがキリクになって活かされるとはな……。


 俺は内心苦笑しながら、ミナスティリアに軽く頭を下げる。


「ありがたい。じゃあ、ネイダール大陸最強の勇者殿に手伝って頂こう」


 俺がそう言うとミナスティリアは眉間に皺を寄せて首を振る。


「私は最強じゃないわ。アレスの足元にも及ばなかったしね」


「だが、彼はもう亡くなっただろ」


「勇者アレスは北の地で亡くなったって言いたいのよね?」


「……ああ」


「そうね。確かに彼は亡くなったわね……」


 ミナスティリアは遠くを見つめ溜め息を吐いた。


 まさか、俺の死を疑っているのだろうか?


 あの時の状況なら間違いなく俺は死んだと思われてるはずだ。


「だから、今の最強は勇者殿だろう?」


 だが、ミナスティリアは答えずに魔物達がいる方に飛びたっていってしまった。


「行ってしまいましたね」


「キリクが機嫌を損ねたからな」


「何でだよ」


「ふっ、わからないとはまだまだだな」


「気遣いと無縁のオルトスに言われたら俺も終わりだな」


「じゃあ引退して北の森で狩人でもやるか?俺も少しやった事あるが、自然の森で過ごすのはなかなか楽しいぞ」


「それは流石に早いだろ……ていうか、森で狩人ってお前エルフじゃなくてドワーフだろ」


「ふっ、寒い森の中で、焼いた肉をかじりながら温めたエールを飲むのは最高だぜ」


「やっぱり、酒に行き着くんだな」


「当たり前だ。俺の身体の半分は酒でできているからな」


「それ、駄目じゃないですか……」


 サリエラの突っ込みにも、気にする様子はなくオルトスはドヤ顔で俺を見る。


 正直、その分厚い皮の下全部が酒の間違いだろうと言ってやりたいが、ああ言えばこう言うオルトスにこれ以上付き合う気はない。

 それにお前は酒を控えるんじゃなかったのかとも言ってやりたい。

 そんな事を考えていたら遠くで魔物が叫ぶ声が聞こえた。


「さあ、くだらない話を終えて、そろそろ残りの魔物を倒そうぜ」


 オルトスはそう言うと、さっさと俺達を置いて走っていってしまった。

 そんなオルトスの背中を見つめながら、俺とサリエラは顔を見合わせて溜め息を吐くと後を追いかけるのだった。

 その後、俺達は残った魔物を倒して回ったが、ミナスティリアもいた事であっという間に町の中にいた魔物を一掃する事ができた。

 それから町の人達の避難も終わり一息ついていると、ミナスティリアが俺の方に来たので、もしかしたら先程の続きがあるのかと身構えてしまったが挨拶をしたら、さっさと飛んで帰ってしまい拍子抜けしてしまった。

 しかし、数日後に王都レオスハルトに突然呼ばれてた事で俺はなぜミナスティリアが何も言わずに去ったかを理解する事になるのだった。


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