020 不死の領域を治める領主
「おい、加護無しの嘘つき野郎。お前がいなくても俺達で倒せたんだぞ!」
「そうよ!余計な事してくれちゃって!」
二人は俺に食って掛かる様に来るとマリィとルナが慌てて止めに入る。
「ちょっと二人共、何言ってんのよ!キリクがいなかったら私達やばかったのよ!」
「マリィの言うとおりです!助けてもらってその態度は何ですか!」
「うるせーんだよ!マリィにルナは俺の言う事だけ聞いてれば良いんだよ!」
「ワーロイ!あなた、私達を何だと思ってんの!」
「あっ、そんなの決まってんだろ。俺のパーティーにいんだから俺のもんだよ」
ワーロイは舐め回す様に二人を見て笑みを浮かべる。
そんなワーロイの視線にマリィとルナは身震いした後、心底嫌そうにワーロイから距離を取った。
「やっぱりそういう目で見てたのね。本当に気持ち悪い!」
「私達を彼女のケイと一緒にしないでくれませんか!」
「なっ⁉︎」
「ワーロイ、まさか二人をそう見てたの⁉︎」
ケイにも睨まれワーロイはたじろいだが、すぐに俺を指差して叫んだ。
「こいつが全部悪いんだ!パーティーに入ってきたそうそうああだこうだ言いやがって! おかげで俺のパーティーは滅茶苦茶だぞ!」
完全に擦りつけであったので、俺は無視していると、ワーロイは怒りの形相で俺に掴みかかろうとしてきた。
だが、その時、俺達の方にレクタルのギルド長、サリエラ、オルトスが駆け寄ってくるのが見えた。
するとワーロイは舌打ちをしてすぐに後ろに下がってしまい、そんなワーロイと入れ替えにサリエラが俺の側に来て心配そうな顔で話しかけてきた。
「キリクさん、急にいなくなったので心配しましたよ!大丈夫でしたか⁉︎」
「ああ、問題ない。それより冒険者ギルドは?」
「なんとか落ち着きました。中にも住人が沢山避難してましたよ」
「そうか」
「おい、キリク、あれ向こうの生き物になった奴じゃねえか?」
側に来ていたオルトスが倒れてるラーニャの胴体を指差すと、ワーロイがはっとし顔をした後、ギルド長に駆け寄っていき俺を指差しながら喋りだした。
「ギルド長、俺達が倒せそうな時に嘘つ……キリクが横取りをしたんだ!だからあれは俺達が倒した様なものだよな?」
「そうよ。キリクがいなくても倒せたのよ。だから討伐報酬は私達のものね」
そう、ワーロイとケイに言われ、困り顔で俺の方をギルド長は見てくる為、俺が手を竦めてみせるとギルド長は溜め息を吐いた。
「では、今回の件が片付いたら真実の玉ではっきりさせましょう。ああ、これは決定事項なのでお願いしますね」
ギルド長からそう伝えられるとワーロイとケイは顔が真っ青になり、そんな二人を見てギルド長はもう一度溜め息を吐いた後、俺に話しかけてきた。
「後はレクタルの中心にいる不死の領域から出てきた住人ですが、キリクさんに聞けば対応できるかもとオルトスさんが言ってくれまして、冒険者達や兵士達は待機してもらってます」
ギルド長にそう言われオルトスを見るとニヤッと笑みを浮かべられた。
その笑いはなんの笑いかは分からなかったが、まあ、下手に死人を出さなくて良かった。
「わかった。では、結論から言うが行くのは俺だけで良い」
「えっ⁉︎何故ですか?」
「向こうの住人達の言葉に耳を貸すと厄介な事にしかならない。だから、話しかけられても絶対に耳を貸すなよ。もし会話が出来ても彼らは俺達の言葉の意味に独自の解釈をするからな」
俺はラーニャの胴体を見ると皆んな理解した表情をする。
「わ、わかりました。全員に伝えておきますが、キリクさんは一人でどうする気ですか?」
「俺はある程度、向こうの知識があるからやれる事はやってみる」
「だ、大丈夫なんですか?」
「わからないが、最悪駄目だったら皆んなここから逃げてくれ。間違いなく先にいるやつは勇者パーティーじゃないと倒せないからな」
「わかってます。正直、冒険者ギルドにいる戦えるものが全員でいっても勝でないでしょうね……」
「わかってればいい。逃げる準備だけしといてくれ」
そう言うと俺は町の中心に向かって走りだしたのだが、すぐに後ろからオルトスとサリエラがついてきた。
「道は切り開いてやるよ」
「助かる」
「キリクさん大丈夫なんですか?」
「わからないな。相手次第だ」
「ち、ちょっと!それなら勇者様を待った方が!」
「これから会うやつがわからなかったら待ってたな」
「えっ⁉︎」
「キリク、誰だ?」
「住人じゃなく、領主のクトゥンだ。あの首から蛸の足が生えたラーニャという冒険者が言ったんだ。まあ、だいたいこの町の変化と蛸の足でだいたい見当はついたがな」
「俺はてっきりアンクルかと思ったぜ」
「彼女はこっち側に興味がないからな……」
「ふん、どうだかな……」
オルトスは不満そうな顔をして言うが俺は無視して話を続ける。
「……まあ、とにかくクトゥンならもしかしたら帰ってもらえるはずだ。……本に書いてある通りならな」
俺がそう言うとサリエラが軽く手を挙げて言ってくる。
「あ、あの、私、不死の領域に対しては疎いので全然話についていけません」
「エルフの嬢ちゃん、要はキリクをクトゥンまで送り届けりゃいいんだよ」
そういうと、目の前に現れたリッチをオルトスは素早く倒した。
「……わかりました」
あまり納得していない様だがサリエラは剣を抜くと道に現れる魔物を倒していく。
そしてサリエラとオルトスが魔物を倒してくれたおかげで、無事に町の中心に移動する事ができたのだが、中心につくと町の見た目は更に変化しており、さながら海の中にいる様な錯覚になっていた。
そんな中、俺達は異様な気配を辿って慎重に進んで行くと、丸くぽっかりと穴の開いた真っ黒い空間と、その近くに鼻歌らしきものを歌いながら建物を変化させているものを発見した。
その見た目は魚と蛸が混ざった様な姿で、背は大人の背丈の三倍ぐらいあり、海を連想させる刺繍がされた青いローブを着ていた。
間違いなくクトゥンだな。
俺はサリエラとオルトスに目配せして下がらせると、慎重にクトゥンに近づいていく。
すると、クトゥンは俺に気づき、振り向くと同時に両手を勢いよく広げたのだった。
◆ 次の話が気になるという方は
是非、ブックマークと下の方に【★】星マークで評価をお願いします
よろしくお願いします




