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002 差別2

「おい、嘘吐き野郎!ナルちゃんを脅してんじゃねえ!」


「そうよ!弱い者いじめして楽しいの⁉︎」


 周りにいた連中は口々に俺を罵り始める。

 そんな最初から俺を悪者扱いする連中には、正直何も言う気も起きなかったのだが、この状況をさっさと終わらすにはどうするかを考えていると、奥から騒ぎを聞きつけたギルド長がやって来た。


「騒々しいですね。皆さんどうしたんですか?」


「あ、ギルド長!こいつが私を脅して来たんです!こいつを捕まえて下さい!」


 ナルは理不尽な事を言って俺を指差してくる。


 おいおい、脅しにまでランクアップか。


 俺はナルを呆れた表情で見てると、ギルド長が顎に手を当てながら俺と周りをしばらく見つめる。

 そんなすぐに何か言って来ないギルド長に俺は感心する。


 どうやらここのギルド長は冷静な判断ができるかもしれないな。

 まあ、本来、冒険者ギルド職員はそれができなければならないんだが……。


 俺はさっきから睨んでくるナルと周りのギルド職員を見て溜め息を吐く。

 本来、冒険者ギルドで働いてる職員はまともな人格者が選ばれるはずだからだ。

 そんな事を思いながらギルド長が喋りだすのを待っていると、ギルド長が顎から手を外し、俺の方を真っ直ぐ見てきた。


「本当に彼女を脅したのですか?」


「いや、俺に冒険者を辞めろと言ってきたり、愚弄したから睨んだだけだ。なんなら真実の玉を使っても良いぞ」


 俺が真実の玉という言葉を出すと効果的面だったらしく、ナルはビクッとなり冷や汗を流し始めた。

 ちなみに真実の玉は本当か嘘かを見破る魔導具であり、使えば間違いなくナルの言った事が嘘だとバレるのである。


 これで、片がつくな。


 そう思っていたら周りの連中が何故か騒ぎだし始めた。


「ふざけんな!そんなの使わなくてもお前が嘘を吐いているに決まってるだろ!」


「最低な奴だな!加護無しで役立たずの分際が!」


「おい、嘘吐き!ナル嬢にさっさと謝れ!」


 俺は飛んでくる暴言罵倒に内心呆れてしまう。

 だが、黙っていると肯定と受け止められそうな雰囲気だったので反論することにした。


「いい加減にしろよ。これはそもそも俺とこの受付との問題だ。お前達には関係ないだろ。それにお前達の言っているその嘘吐きってのも何が嘘吐きなんだ?ついでにそれも今日はっきりさせるか?」


 俺が周りを見ずにそう言うと、連中は怒った様で拳を固めながらにじり寄ってきた。

 それを見て流石にやりあうしかないかと思った時、手を叩きながらサリエラというエルフが俺と皆んなの間に入った。


「皆さん熱くならないで下さい!」


「サ、サリエラちゃん!」


「サリエラさんが何か言うらしい、皆んな黙ってろ」


 すると周りは急に静かになり、俺に掴みかかろうとした連中も慌てて下がっていったので、俺はこのサリエラという人物が力のある有名人だということを理解した。

 ちなみに俺が理解してなかったのは、パーティー活動に専念というか、周りを気にしている余裕がなかったからである。

 そんな事を思っていたらサリエラがナルの方を見て溜め息を吐く。


「ここは真実の玉を使い、はっきりさせましょう」


「あうっ⁉︎」


 サリエラの発言にナルは声を上げ、驚愕したまま固まってしまった。

 すると、今まで静かにしていた連中がまた騒ぎ始める。


「いくらサリエラちゃんの言葉でも、賛成できないぜ!」


「そうだよ!サリエラさんはそいつの言う事を信じるのかよ!」


「そうだそうだ!」


 周りの連中は自分達の考えが間違っていないと信じているのか、サリエラに対しても不満を漏らしだした。

 そんな連中にサリエラは穏やかな表情をしながら見つめると、途端に皆んな顔を赤くして黙ってしまった。


「私はきちんと公平にやろうとしているだけですよ」


「で、でも!」


「でもはないです。それとも二人の会話を聞いていた私が証言して事を大きくしましょうか?それにあなた達がこの方、キリクさんを愚弄しているのも問題ですね。これもはっきりさせますか?」


 サリエラはそう言いながら微笑むとナルが驚愕の表情を浮かべた後、へたりこんでしまい、更に今まで勢いづいていた連中は、分が悪いと思ったのかそそくさと逃げていってしまった。


「ふう……」


 それを見てサリエラは溜め息を吐きながら髪を弄ったのだが、その時に見えたサリエラの左腕にはめられた腕輪を見て俺は納得した。


 なるほど、アダマンタイト級なのか。


 アダマンタイト級は国から内密の依頼も任される程、信頼と信用をされる上位冒険者である。

 ちなみに、ランクはカッパー、ブロンズ、アイアン、スチール、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、アダマンタイト、ダマスカス、オリハルコンの十一段階あり、俺は現在アイアン級である。

 そのアダマンタイト級冒険者が証言するとなると真実の玉を使うより大事になる。

 おそらく、ナルは職を失うだけじゃなく罪も問われるだろう。

 そう思うと目の前でへたりこんでいるこいつが哀れに思えてきた。


 やれやれ、どうするかな……。

 まあ、反省してれば……ん?


 俺がナルに対してどう対応するか考えていると急に視線を感じたので、そちらの方に顔を向ける。

 視線はどうやらサリエラらしく、俺を値踏みする様に見つめていたいたが、俺と目が合うとすぐに目を逸らしてしまった。


 今の人を値踏みする様な目はなんだ?

 ……まさか、この装備品の価値を理解したのか?


 俺の装備は見た目はただの安いものに見えるが、実をいうとかなり良い素材を使っているのだ。


 まあ、アダマンタイト級が礼に寄越せとかは言ってくる事はないだろうが、ここは早めに退散した方が良さそうだ。


 俺は、突っ立ってるだけのギルド長を見ると、はっとした表情になりあたふたし始める。


「で、では、私は真実の玉を持ってきます!」


「その必要はない」


「えっ?」


 その場にいたギルド長、サリエラ、ナルが驚いて俺を見つめた。


「もう、真実はわかっただろ。それでいい」


「よ、よろしいのですか?」


「ああ、これ以上やれば本当に弱い者虐めになるからな。それより手続きを頼む。ソロ希望に移動手続きも」


「わ、わかりました」


 ギルド長は座り込んてボーッとしているナルを一瞥すると、慌ててナルの席から紙を取り出してギルド長自ら手続きを始める。

 そんな中、俺はサリエラに向き直ると頭を下げた。


「助けられた。礼をいう」


「い、いえ……。私がもっと早く行動するべきでした」


「いや、大きな案件を抱えていたんだ。仕方ないだろう」


「えっ、どうしてわかるんですか?」


「それは先程書いていた紙はここでは絶対扱わない高価な厚手の羊皮紙だ。しかも、扱っていたのはアダマンタイト級冒険。そして周りに知られたくない内容だから受付内で書いていたからおそらく王族からの依頼だろう」


 だが、俺とナルが揉めだした為、見て見ぬふりができず介入したというところだろうな。

 俺がそう説明すると驚いた顔でサリエラは俺を見てくる。

 そして何か言おうとしたが、ギルド長が俺に記入した用紙を持ってきたので慌てて口を閉じてしまった。


「キリクさん、手続きが終わりました」


「そうか……」


 俺は用紙を空間魔法が掛けられた小さな鞄に入れるとさっさと出口に向かった。

 正直、もうこの冒険者ギルドにいたくなかったからだ。

 後、なんとなく面倒臭い事が起きる予感もしたのである。

 案の定、冒険者ギルドを出るとすぐに俺は呼び止められたのだった。


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