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018 様変わりしたレクタル

 あの後、俺達も急いで遺跡を出ると、レクタルへと向かったのだが俺は近づく度に強く感じる異様な気配に確信してしまう。


 呼ばれてしまったか……。


 隣りにいたオルトスも気づいたのか真顔になり俺を見てくる。


「……おい、キリク。あれはやべえんじゃないか?」


「そうかもしれないがやるしかないだろ。もし、周りに興味を持つタイプだったら逃げても無駄になるしな」


「だよなあ……」


「あの、お二人共あの気配が何かわかるんですか?」


「不死の門が開いてるって事はわかる」


「そしてあの町は既に別世界みたいになってんのもな。エルフの嬢ちゃん、レクタルの上空を見てみろ」


 オルトスに言われてサリエラはレクタルの上空に目を向けるとすぐに驚いた表情になり、口元を手で押さえながら俺達を見てきた。

 そんなサリエラの行動がオルトスは面白かったのか、ニヤニヤしているだけだったので俺が仕方なく答える。


「安心しろ。あれは俺達に害はないぞ」


「ほ、本当ですか⁉︎」


「ああ、あの色は不死の領域の空気が漏れだして、向こうの空の色になっているだけだ」


「そ、そうなんですか……って、なんでキリクさんが、不死の領域のことがわかるんですか⁉︎」


「そ、それは勉強したからだ」


「もしかして、ネルガンとの戦争をですか?」


「……そうだ。俺みたいな加護無しは知識などでカバーしなきゃいけないからな。それより、野営地がおかしいぞ」


 馬車が野営地に近づいてくると、いくつかのテントが潰れているのが見えてきた。

 しかも避難していたはずの街の人や兵士が一人も居なくなっていたのだ。


「まさか、レクタルに戻ってしまったんじゃ……」


「いや、レクタルまで走った後があるし血痕もある。おそらくここを襲われて逃げ込んだんだろう」


「どうせ死霊術師がゾンビやグール辺りに襲わせたんだろうぜ。奴らの触媒を増やす為にな」


「酷い!じゃあ避難していた皆さんは……」


「いや、まだ生きてる人達もいるかもしれない」


「そ、そうですよね……。依頼を受けていた私がもっと早く気づいていれば」


 サリエラはそう言うと下を向いてしまったが、その表情はずいぶんと青白くなっていた。

 そんなサリエラの肩を軽く叩く。


「しっかりしろ。そんなんじゃ助けられる人も助けられないぞ」


「は、はい。でも……」


「サリエラ、人は万能じゃないんだからできる範囲をやれば良いんだ。それともお前は万能なのか?」


「違います……」


「だったら切り替えてアダマンタイト級冒険者としての自覚をしろ」


「……そうですね。キリクさんありがとうございます!」


 そう俺を見るサリエラの瞳には先程と違い、強い意志が灯っていた。


 ふう、スチール級の俺の言葉が届くか心配だったが、どうやらサリエラはスイッチを切り替える事ができたみたいだな。


 俺はそう思い、ホッとしたのだが、レクタルに入るとサリエラの瞳はすぐに恐怖の色に変わってしまった。

 何故なら、町の中が見たことない程、異様な形に様変わりしていたからだった。

 建物はありえないくらい伸びて捻られていたり、変な方向に曲がっていたり、壁には珊瑚みたいなものや地面には海藻らしきものも生えていた。


「……な、なんなんですかこれは?」


「不死の領域に浸食されたんだ。奥に行くともっと凄いぞ。多分、不死の領域の領主が更に手を加えてるはずだ」


 ちなみ不死の領域は領主が自分好みに作り変えている為、領域によって全く別世界になっているのだ。

 オルトスは周りの異様な光景を見て顔を顰める。


「キリク、こりゃあ、ずいぶんと浸食が進んでるな。どうするよ?」


「とりあえず、領主に会わない限り人には影響はないはずだから、まずは生きてる人達を探そう」


「そ、それなら、冒険者ギルドに避難してるかもしれません。あそこは前回の件で更に強い結界が張れる魔導具を置いていますから」


「なら決定だな」


 俺達は頷きあい冒険者ギルドに向かって走り出す。

 しかし、路地裏から突然タナクスナイトが現れるとすぐさま武器を抜いて襲ってきた。

 そんなタナクスナイトにすぐ反応したオルトスは全ての攻撃を弾くと、タナクスナイトに一撃を入れて吹き飛ばしてしまう。


「やるな」


「ふん、当たり前だぜ。キリク、こいつは俺が一人でやるから先に行って状況を調べとけ」


 そういうとオルトスはタナクスナイトに向かっていってしまった。

 そんなオルトスをサリエラは心配そうに見ていたが、俺が冒険者ギルドの方に走り出すと慌てて後ろからついて来た。


「き、キリクさん!オルトスさんは本当に大丈夫なんですか⁉︎」


「あいつがやるって言ってるから大丈夫だろ」


「えっ⁉︎そんな適当で良いんですか」


 適当で言ってるわけではない。

 オルトスとは三十年以上の付き合いだから、任せて大丈夫かわかるのだ。

 まあ、サリエラには言えないが。


「心配なら戻って手伝ってきてもいいぞ」


「何を言ってるんですか!オルトスさんより、アイアン級でこんな危ない場所を走っているキリクさんの方が心配ですよ!」


「スチール級だ」


「えっ?」


「スチール級にランクアップした」


「そ、それはおめでとうございます!ってそうじゃありません!スチール級だって十分危ないですよ!」


「わかってる、だから冒険者ギルドの状況を見るだけだ」


「本当に状況だけですからね!もう、貴方を見ているとなんだか心配になりますよ」


「安心しろ、まだ死にたくないからな」


 そう言ったがサリエラは黙ってジト目で俺を見てくるだけだった。

 そんなサリエラに俺は心配ないと言おうとしたのだが、口を開きかけた時、前方から異様な気配が漂ってきた。


 これは冒険者ギルドの方向か。

 

 俺達は視線で合図をしあい、慎重に冒険者ギルドに向かう。

 すると、そこには魔物の大軍に押され、劣勢状態の冒険者達がいたのであった。


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