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176 ネクロスの書


 あれから、サリエラは泣き続けて今は泣き疲れたのか俺の膝の上で寝ってしまっている。

 そんなサリエラの気持ちよさそうな寝顔を見ながら俺は思う。


 精神はまだ未熟ということか……。

 もう少し側にいてやらないと駄目かもな。


 俺はそんな事を考え、何故かホッとしてしまう自分に嫌な感情を覚える。


 今回は俺の判断ミスでもあるのに何を考えているんだ……。

 それに、あの転移魔法陣を踏むミスだ……。

 まさか、サリエラに何かあったらと思った瞬間、頭が真っ白になってあんな馬鹿な行動をするなんてな。

 

 俺は大きく溜め息を吐いて頭を振る。


 次はしっかりやらないと、守れるものも守れなくなる。

 なんせお前はもうただの加護無しなんだからな……。

 しっかりしろキリク。


 俺は心の中で自分自身に喝を入れた後、デボットに使った筒型の魔導具を出して見る。

 これは魔王のダンジョンで見たあのクリスタル状の蔦の壁からヒントを得て作ったのだ。


 使ってみた感じは短い時間だが、想定した通り動きを止めるバインドの様な使い方ができるな。

 これなら他のも使えそうだが、それよりもボリスとグラドラスが造ったこの剣だな……。

 

 俺はデボットの右腕を斬り落とした時の事を思い出す。


 斬った後に生命力と魔力を吸い取るとああなるのか……。

 それに魔石を使わなくても剣の能力が使えるなんて、あいつらとんでもないものを造ったな。


 俺は呆れながらも、ボリス達に感謝する。


 霊薬は既にないわけだから、今後はこいつらが俺の新しい力になる。

 だから、しっかりと使いこなして自分のできる範囲を見定めていかないとな。

 なんせ、グラドラスにもクギを刺されているし、それに……。


 俺はサリエラの頭を撫でる。


 願わくばお前の……。


 だが、その先を言おうとした時、燃える町や城、そして沢山の人々が頭にチラつき、あの日の記憶を思い出した俺はそれ以上は言う事ができなかった。

 魔王バーランドとの戦い以降、あの光景がチラつく様になったのだ。

 そして、離れた場所に小さかった俺が佇んで淀んだ瞳で見つめてくるのである。

 決して忘れるなと……。


「ああ、そうだな……」


 俺はサリエラから視線を外すとそう呟くのだった。



◇◇◇◇



 あの後、しばらくしてサリエラが起きだしたので俺達は孤児院へと戻ることにした。

 孤児院に到着すると鉄獅子を含む冒険者パーティーが周りを調べたり負傷者を馬車に運んでいるところだった。

 そんな中、ランドが俺達に気づくと駆け寄ってきたので、俺はここであった事を報告するとかなり驚かれてしまった。


「まさか、ダークエルフが関わっているとはな。魔王と関係があるのだろうか……」


「わからない。ちなみにアジトでは何か情報は掴めなかったのか?」


「誘拐された人々は助け出す事ができたが、情報は何も得られなかったな」


「そうか……」


「結局は蜥蜴の尻尾切りって感じだが、とりあえずは東側のアジトは一掃出来たわけだから、良しとするしかないだろう」


 そう言うランドだったが、その表情は全く納得している様子はなかった。

 その後、色々と調査をしたが、孤児院からも、サリエラに倒されたダークエルフからも何も得られず、レオスハルト王国領での穢れた血縁者の一斉掃除は消化不良気味で終了した。

 ちなみにダークエルフ達に攫われたバナールとダッツはダークエルフと共にあの日から今日まで見つかっていない。

 そして、今回参加した冒険者達は引き続き南側の一斉掃除に向かう為、何日後には南側に旅立つ予定である。

 そんな中、力不足を痛感したサリエラは色々な勉強や鍛錬を精力的にする様になっていた。

 

「キリクさん、ルイさんに魔法を習ってきますね」


「ああ、しっかり習ってこいよ」


「キリクさんはちゃんとここにいて下さいね」


 そう言ってサリエラは微笑む。

 付け足すとあの日以降、サリエラは俺に対して何故か更に度が過ぎるほど心配症にもなったのだ。


「過保護だな……。心配しなくてもここで本を読んで良い子にしてるさ」


 俺は冒険者ギルドの資料室で本を読みながら手をパタパタ振る。


「もう!本当に心配してるんですからね!」


 そう言うとサリエラは俺に駆け寄ってきて睨んできた。

 しかし、全く怖くないので俺は手をすくめる。


「待ってるから早く行った方がいいぞ……」


「むう、最近また距離があいたような気が……」


 サリエラはそう言って不満そうな表情をしたが、すぐに大きな溜息を吐くとぶつぶつ言いながら去っていった。

 そんなサリエラの去った方向を一瞥した後、俺は収納鞄から禍々しい一冊の黒い本、ネクロスの書を取り出す。


 さてと、続きを読むか。


 俺は早速、ネクロスの書を開くと何も書いていない白紙のページに次々と文字や絵が浮き出てきた。

 これは読む者が知りたい死に関しての情報が浮き出るのだ。

 そこでわかったのだが、ヨトスという存在が死んだままこの世界に現れている為、長くこちらにいられない事がわかり、更にはこちらで復活するにはまた別の儀式がする必要があることもわかった。

 ただ、復活の儀式に関してはネクロスの書にはほとんど書かれていない為、ヨトスはおそらく復活していないはずである。

 それに、魔王バーランドはヨトスの事を、中央への道を作る道具としてしか思っていなかったはずだ。


 きっとヨトスは今頃、焦っているだろう。

 なにせ、呼び出した魔王バーランドが死んだのだからな。


 俺はそう思いながらも、あの狡猾と言われる魔王が何もせずに死んだとは思えなかった。

 

 やはり、南側の魔王を問い詰めに行くしかないだろうな。

 まあ、その役目はもちろん俺ではない事は確かだが。


 俺はそう思いながらも何か情報が得られないだろうか、ネクロスの書を読み進めるのだった。


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