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171 問題児


 俺達の間に入ったブロックはバナールを眼鏡ごしに睨みつける。


「バナール、何をしている?」


「その男が卑怯な手を使ってその女性に言う事を効かせているんだ‼︎」


「ほお、魔王討伐に参加したダマスカス級のサリエラをシルバー級のキリクが何かできるとでも?」


「なっ、そんなに凄い女性なのか⁉︎それなら、言うことを聞くように家族を脅しているか、何かの薬を飲ませているんだ‼︎」


「はあ、それは絶対にないよ。なんなら私がキリクの名誉を保障しよう」


「何故だ⁉︎ギルド長ともあろう者が何故その男の事を信じる⁉︎」


「実績だよ。彼は色々と冒険者ギルドに貢献してくれているんだ。お前達問題児と違ってな。これ以上、馬鹿な事を続けると冒険者ライセンスを剥奪するぞ」


 ブロックはそう言うと威圧しながらバナールの方へと一歩足を踏み出す。

 すると、バナールは一瞬怯んだ後に悔しそうな表情を浮かべ、後ろに下がった。


「くっ、冒険者ギルドさえ騙すとは何処までも卑怯な男だな……。俺は絶対にお前を許さないからな。必ず彼女を救い出してみせる」


 バナールはそう言って俺に憎悪の目を向けると、同じように俺を睨むダッツと共に去っていった。

 そんな二人の後ろ姿を見てブロックは目頭を押さえながら呟く。


「全く、冒険者を初めた頃は純粋で真面目だったんだがな……」


「みんな最初はそんなものだろう」


「確かにそうかもしれないな……。しかし、成長が速いバナールには期待していたんだが、君の様にはならなかったらしい」


 ブロックはそう言ってサリエラの方を見る。


「わ、私はまだまだですよ!ねえ、キリクさん!」


「何を言ってるんだ……。短い年数でダマスカス級に魔王討伐の英雄だぞ。胸を張って誇って良いぐらいだ」


「うう……キリクさんにそう言われると恥ずかしいですよ」


「ふむ、そういう慎ましやかなところが君が真っ直ぐに強くなれたのかもしれないね」


 ブロックはそう言って柔かに笑った後、俺の方を見る。


「キリク、もし彼らがまた絡んできたらすぐ報告してくれ」


「どうするつもりだ?」


「内容次第では処分する。どうやらバナールの方が歯止めが効かなくなって来てるらしい。ちなみにキリクが見た感じだと改善できると思うか?」


 ブロックは俺に聞いてくるが、俺はかぶりを振った。

 なんせ、あそこまで自分の考えに固執していたら、取り返しのつかない失敗をしない限り考えを改めないからだ。

 いや、むしろ失敗しても責任転換をして結局は改めないだろう……。


「……俺の考えだと正直、難しいだろうな」


「やはり、皆と同じ考えか……。わかった、ありがとう」


 ブロックはそう言うと残念そうな表情を浮かべて俺達から離れていった。


「ギルド長って大変なんですね……」


「荒くれ者を纏める役だからな。それより、ギルド長が来たという事は説明が始まるぞ」


 俺がそう言い終わると、丁度ブロックが今回やる作戦の詳細な説明を始めたのだが、その内容が中々だったので、周りの冒険者の緊張感が高まったのがわかった。

 

 段階を踏む間が早すぎるな……。

 まあ、それだけ穢れた血縁者を逃がしたくないって事だろうが、そうなると主軸で動く連中の足手まといにだけは、ならないよう気をつけないとな。


 俺はそう思いながら、ブロックの説明に集中するのだった。



◇◇◇◇



 ブロックの説明が終わった後、俺達は鉄獅子と合流して目的地の貴族の屋敷に向かった。


「貴族の名前はロッツイ名誉伯爵で家族はおらず、しかもこの一年近く本人を見た者がいないらしい。更に屋敷から不審者の出入りが頻繁になったと報告があり、調べた結果、穢れた血縁者に属してた者だとわかった。そこで、まずは屋敷にどれくらいの人数がいるか確認したい」


 屋敷の近くの茂みに隠れながらランドはそう説明した後にサリエラを見た。


「私の精霊で人数を探って欲しいんですね。わかりました」


 サリエラは頷くと頭上に小さな光が二つ現れて点滅すると屋敷の方へと飛んでいった。


「便利ねえ」


 それを見ていたルイが感心しているとサリエラが首を傾げた。


「あれ?失礼ですがルイさんはサーチとかできないのですか?」


「できるわよ。ただ、サーチは魔法探知に引っかかるから、あまり対人では使えないのよ」


「そうなんですか⁉︎知らなかったです……」


「サリエラさんは魔法はあまり使わない感じでしょう」


「はい……」


「魔力のうねりが弱いからそうだと思った。けど、なんか違和感あるわね」


「違和感ですか?」


「ええ、私、魔力が少しだけ目視できるのよ。あなたは何か顔の辺りに違和感があるわ。もしかしたら私みたいに何かしらを見れる目なのかもね」


「……すみません。私には多分ないと思います……」


「そっか、まあ、みんなそれぞれ魔力のうねりは違うからサリエラさんのはそういうものなのかもね」


 ルイはそう言うと今度は俺を一瞥したが、すぐに目を逸らす。

 そんなルイを見て、おそらく俺のぽっかり空いた穴の様なものも見えているのだろうと理解し、同時にルイはエルフの血が流れているのだろうとも理解した。


 なにせ、精霊眼を持てるのはエルフの血を持つ者だけだからな。


 俺がそんな事を思いながらルイの背中を見ていると、精霊が屋敷から飛び出しサリエラの元に戻ってきた。


「人数は十三人で全員何かしらの武器を所持していますね……」


 サリエラがそう教えてくれると、鉄獅子の緊張感が高まっていくのがわかった。

 なにせ、教えられた情報にはアダマンタイト級並みに強い連中がいると書いてあったからだ。


 こっちの人数より多いが、この奇襲できれば何とかなるかもな。


 俺はそう判断してサリエラを見ると力強く頷いてくる為、内心、俺は苦笑する。

 

 やれやれ、こいつのお荷物にならないようにしないとな。


 俺はそう思いながらサリエラに期待するのだった。




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