017 隠し部屋と手がかり
これはまた派手にやってるな。
古い遺跡に入ると、足の踏み場もない程、そこら中にゾンビやスケルトンの死体がばらばらに散らばっていた。
これは完全にやり過ぎだろ………。
俺はなんとか骨や肉片を避けながら通路を進んでいく。
すると、悪趣味な壁画がある広間に到着したが、どうやらここも既に一掃したようで、大量のグールとヘルハウンドという大型で獰猛な犬の魔物の死体が辺り一面に散乱していた。
プラチナ級の魔物ではあいつらに束になっても勝てないだろうな。
俺は敵ながら哀れに思っていると、奥の通路で戦いを始める音が聞こえてきた。
どうやら三人共奥に向かったか。
まあ、あの騎士団長が先頭だと何も調べずに先へと進んで行くのだろうな。
俺は広間を見渡し、不自然な場所がないか調べていく。
大抵はこういう古い遺跡は隠し部屋があり、本来なら探知魔法で調べれば良いのだが、俺は魔力を封じられており今は使えない状態である。
そこで、魔導具の出番となるわけで、早速、収集鞄から探知魔法の代わりができるペンデュラムという魔導具を取り出す。
これは鎖の先に青い宝石が付いているもので、簡単な質問に反応して動き出すのだ。
ちなみに、この魔導具はネイダール大陸に二つしかなく、俺が持っている物の中で一番高い貴重品である。
早速、魔石をペンデュラムに近づけると砕けて宝石の部分が淡く光り出した。
これでペンデュラムが使用できる状態になったので、俺は念じるように問いかける。
この部屋に隠し通常はあるか?
そう心の中で問いかけるとペンデュラムは肯定をしめす右に回り始めた。
更に色々と質問をしていくと広間の床に怪しい場所があり、調べると隠し通路を見つける事ができた。
気配はないようだが当たりだといいが。
俺は剣を構えながら慎重に進んでいくと小さい部屋に到着した。
そこは書斎になっており、机の上には沢山の書物や紙束が置いてあったので俺はそれに軽く目を通していく。
どうやらここの死霊術師は仲の悪い魔族ともやり取りしてるようだな。
とりあえず全部持っていくか。
俺は全ての書物や紙束を収納鞄に入れ小部屋を後にする。
それから、三人を追って奥の部屋に行くと、ちょうど一人の死霊術師を追い詰めていたところだった。
「さあ、何が目的か言いなさい!」
「くくく。貴様らに邪魔はさせん。この身に変えてもな!不死領域より我に死の力を与えたまえ……サモン・タナクスナイト!」
死霊術師は不気味な笑みを見せながら叫ぶと、黒く禍々しい短剣を自らの胸に突き刺す。
すると死霊術師の身体が膨らんで破裂し、中から六本の腕を持った大型の黒いスケルトンが現れ、腰に差してある六本の剣を全ての手で握ると俺達を見て笑いだした。
「キヒャヒャヒヒャヒッ」
こいつはタナクスナイトというアダマンタイト級以上の強さがある魔物である。
俺はこの魔物ならサポート程度はできると思ったので三人の側に駆け寄り剣を抜いた。
しかし、すぐにサリエラとリミアが強い口調で叫んだ。
「キリクさん!何やってるんですか⁉︎アイアン級じゃ無理ですよ‼︎」
「そうよ!流石にあれと戦いながら貴方を守るのは無理だから下がってて‼︎」
「……わかった」
サポートならできるのだが、女性陣の強い口調と雰囲気に仕方なく部屋の隅まで移動する。
一応、スチール級になったんだがな。
だが、何か言えば二人は更に何か言ってきそうなので、ここはおとなしく静かにしておくか……。
俺がそんなことを思いながら三人の戦いを見ていると、オルトスが戦いながらニヤニヤと不愉快な表情でこちらを見ている事に気づいた。
なので俺は心の中でオルトスが痛い目をみるように祈ったのだったが、結局怪我もなくタナクスナイトは倒されてしまった。
「いやあ、連戦して疲れたからかずいぶんと時間がかかっちまったぜ」
「ふん、お前は酒浸り生活でなまってるからだろ」
「うるせー。俺は本気出してないだけだ。それより騎士の嬢ちゃん、幹部を捕まえんじゃなかったのか?」
「ああなられちゃね。うーん、どうしようかしら……。この感じだとフォンズのところでも情報を得られなさそうね」
リミアはがっかりした顔で天井を見上げているので俺は収納鞄から書物や紙束を出してリミアに渡す。
「情報ならあるぞ」
「えっ、どういうこと⁉︎」
「さっき通った広間の隠し部屋から見つけた」
「キリク、素晴らしいわ」
「キリクさん凄いですね」
「おお、やるじゃねえか」
「まあ、俺にできる事をやっただけだ」
「さて、良い情報が書いてあると良いけど……って、これはまずいわね……」
「リミア団長どうしたんですか?」
「死霊術師達はレクタルで不死の領域へ繋がる門を開こうとしてるみたい……」
「えっ⁉︎それまずいじゃないですか⁉︎」
「不死の門か……。しかし、門を呼び出すのには他にも色々必要なはずだが……。そうか、東側の魔王が用意したという事か」
「ええ、しかも悪い事に決行は今日って書いてあるの……」
「それじゃあ、急いで行かないと!」
「急ぐのは良いが、あそこは今、死霊術師にとって楽園だから大変だぞ」
「どういう事ですかキリクさん?」
「レクタルには死霊系の魔物を大量に呼び出せる死体がまだ山程あるからな。おそらく魔物の巣窟になってるだろうな」
俺の言葉にサリエラは絶句してしまう。
すると考える仕草をしていたリミアが口を開く。
「それなら、三人は馬車でレクタルにそのまま向かって」
「リミア団長はどうするのですか?」
「ふふふ、私は王都レオスハルトに戻って国王様に報告と強力な助っ人を呼ぶわ」
「強力な助っ人ですか?」
「ええ、期待しててね」
リミアはそう言って、不敵な笑みを浮かべると俺達を置いて外に向かって走っていってしまったのだった。
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