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165 力量不足と修行の場


 二階の個室に入るとサジが笑顔で出迎えてくれた。


「キリクさん、サリエラさん、どうぞ好きな場所に座って下さい」


「わかった」


「はい」


 俺はサジの隣りに座るとサリエラは俺の隣りに当然の様に座ってくる。

 すると、遅れて戻って来たミナスティリアとファルネリアがその光景を見てヒソヒソと話しをした後、サジを連れて部屋を出て行った。

 そして三人が戻って来ると俺の隣りに何故か満面の笑みを浮かべたファルネリアが座ってきたのだ。


「くっ、なぜチョキを出してしまったの……バカバカ私のバカ」


 ミナスティリアはぶつぶつ言いながらサリエラの隣りに座り、サジはそれを見て苦笑いを浮かべながらエールの入った木のマグカップを持ち上げだ。


「では、皆さん乾杯しましょう」


 サジの言葉に俺達もマグカップを持ち上げた。


「「「「「乾杯!」」」」」


 俺達はそう言ってマグカップを当てた後にエールを飲む。

 もちろん、俺はほとんど味かしないので軽く口をつける程度にし、後は栄養がありそうな食べ物を選別して食べていた。

 そんな感じで料理関係はあれだったが、久々のミナスティリア達との会話に十分楽しい時間を過ごせていた。

 そんな中、サリエラがミナスティリア達に興奮した様子で質問しだした。


「皆さんはこれで英雄譚の仲間入りじゃないですか!そうなると酒場で歌われるわけですよ!いったい、どんな感じの英雄譚になるんでしょうね⁉︎」


 サリエラの興奮した様子にミナスティリアは苦笑しながらも答える。


「おそらく、誇張した感じになるわよ。ちなみに進軍に参加した冒険者達、つまりサリエラも詩にきっと入るはずよ」


「えーー!本当ですか⁉︎」


「そりゃそうよ。特にあなたは魔王と直接戦ったわけだからね」


 そう言った後にミナスティリアは俺の方をチラッと見たので、俺は気にするなとジェスチャーしてやる。

 そんなやり取りに気づかなかったサリエラは両手で顔を覆って首を振った。


「うー、恥ずかしいですよ……」


「もし嫌なら詩ができた時に申請許可が出るはずだから、嫌ならゴネれば良いのよ。まあ、私達はゴネても絶対に出されるけど……」


「確かに、勇者パーティーの英雄譚を出さないってわけにはいきませんよね」


「まあね。けど勇者アレスの英雄譚に並べるなんて幸せよ……」


「確かにそうですね。そうなると皆さんの単独の詩も出るかもしれませんね!」


 サリエラが楽しそうにそう話すと、ファルネリアが肉串を齧りながら喋る。


「私は既に詩を作ってしまったわよ」


「えっ、ファルネリアさん自分で作ったんですか?」


「ええ、最高の詩をね」


「どんな内容なんですか⁉︎」


「魔導師の加護を持つ可憐で儚い獣人の少女が魔王と戦って傷ついている時に、少女を愛する黒髪の男が助けに……」


「却下ね……」


 ファルネリアは悦に浸りながら喋っていたが、途中で鬼の様な形相を浮かべたミナスティリアが遮った。


「なんでよ⁉︎じゃあ、勇者アレスと可憐で儚い獣人の少女ファルネリアの禁断……」


「却下、却下、却下」


「ちょっと何が駄目なのよ⁉︎」


「可憐で儚いはまずないわね。女狐の妄想歌で良いんじゃないかしら。あっ、私上手い事言ったわ。とにかく人気なんか出ないで自分が傷つくだけだからやめておきなさい」


「くっ、自信あるわよ!みんな聞いてくれるわよね⁉︎」


 ファルネリアは周りを見回すがサリエラ以外は誰も目を合わせるものはいなかった。


「……しょんなあーー」


 ファルネリアは狐耳が垂れ、ガクッと肩を落と最後はテーブルに突っ伏してしまった。

 そんなファルネリアにサジは哀れみの表情を浮かべ祈りを捧げる。


「……詩は詩人達に任せましょう。それより、今日集まったもう一つの目的を話しましょうか。ミナスティリアさんお願いします」


 サジはそう言って、ミナスティリアを見る。


「そうね、キリク、聞いてくれるかしら?」


「良いぞ」


「私達は凱旋パレードが終わり次第、南側に行くのは知ってるわよね?」


「ああ」


「ただ、魔王のいるダンジョンに潜るのはかなり難しくなりそうなのよ」


「ああ、聞いたぞ。上の連中が揉めているんだってな」


「ええそうなのよ。まあ、だけどそれだけじゃないのよね……」


「どういう事だ?」


「先程、進軍に参加した冒険者達で話しあったんだけど、南側の魔王がいるダンジョンを攻略できるか聞いたら満場一致で無理だろうって……」


「なるほど……」


「それで、南側にはすぐには行かずにしばらくは、知識と力を付ける為にみんなそれぞれ修行したりダンジョンに篭ることにしたの」


「良い事じゃないか。けれど何故俺にそんな話しを?」


「物知りなあなたなら、私達や今度、進軍に参加するミランダ達にお勧め出来そうなダンジョンか力を付けれそうな場所を教えてくれると思ってね」


「なるほど……」


 確かに冒険者ギルドが知らないダンジョンの情報を俺はいくつも知っている。

 特に西側の情報はおそらく俺が一番知っているだろう。

 そして、すぐに二つの勇者パーティーに合った狩場やダンジョン候補が頭の中に浮かんだので、紙に書いてミナスティリアに渡した。


「ありがとう。これで後は宝具辺りを手に入れられれば良いんだけどねえ……」


「宝具か、確かにあるとないじゃ全然違うからな」


「そうなのよ。だから、創造神ガロンの祠もこの機会に探そうかと思ってるの」


 ミナスティリアがそう言うとサリエラが首を傾げて俺達に聞いてきた。


「あの、私はダンジョンにちゃんと潜った事がないのでわからないのですが、創造神ガロンの祠ってなんですか?それに宝具は神々から送られるものじゃないんですか?」


「サリエラが言ってるのは私が身につけてるこの二つの宝具のみの話しで、本来の宝具はダンジョンに極稀に現れる創造神ガロンの祠に祈りを捧げて試練を受けてクリアすれば手に入れられるのよ」


「へっ、ダンジョンって魔神グレモスが作ってるんですよね?」


「ダンジョンを作ったのは魔神グレモスだけど創造神ガロンはそこに干渉して色々と作ってしまったの。ちなみにダンジョンに宝箱が現れる様に細工したのは創造神ガロンだって言われてるわ。そして魔神グレモスはそれを何故か容認してるとも言われてるの」


「なんかその話しを聞くと魔神グレモスのイメージが変わりますね……」


「まあ、それでも基本的に魔神グレモスは人々の敵であるのには変わらないわ」


「確かにそうですよね……」


「まあ、そういうわけだからしばらく私達はダンジョンに土竜みたいに篭る感じよ」


 そう言うとミナスティリアは溜め息を吐いた後、エールをグッと飲み干すのだった。


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