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128 過去編19 聖オルレリウス歴3550年一ノ月


 翌日、俺はワバリア王国領にある王都に馬車で向かっていた。

 ちなみに、馬車にはグラドラス、オルトス、ブレドの三人組もいた。


「うーん、エーテルというものがあれば魔力も回復できるのか……。しかしどうやって作るんだ?やはり深淵を覗くしかないか……」


「私はスノール王国の王子ブレドである。この私が来たからにはワバリア領は安全……うーん、固いな。もっと柔らかい感じで……途中でスノール王国の名産品を入れるのもありか……」


「ちっ、酒を持ってくんの忘れたぜ……」


 三人はそれぞれの時間を満喫しているようで関わりたくない俺は外を眺めていたのだが、しばらくすると一番面倒なオルトスがあろうことか俺に声をかけてきた。


「おい、アレス、お前城には行ったことあるか?」


「……まあ、何回かはな」


「ふむ、ならほとんどないって事だな。いいかアレス、勇者だろうがマナーってのは大事なんだぜ」


 オルトスはそう言うとニヤリと笑うが、一番マナーがわかっていなそうな奴に言われた事で俺は少しイラッとしてしまった。

 しかし、ここで揉めるのも不味いので俺は話しを合わせてやる事にした。


「……そうか。ちなみにお前はマナーができるのか?」


「あ?俺なんかができるわけないだろ。何言ってんだよ、わははは!」


 正直、オルトスが笑った瞬間殴ってやりたかったが、なんとか我慢することができた。


「……じゃあ、どうするんだ?」


「そんなのこいつらに全部投げりゃ良いんだよ!」


 オルトスはブレドとグラドラスを指差す為、二人はうんざりした顔でオルトスを睨むが、本人は全く気にする様子もなく再び言ってきた。


「アレス、お偉い連中相手はブレドかグラドラスに任せときゃ良いぞ。わははははは!」


 何が楽しいのか理解できないが、煩いから黙って頷いてやるとオルトスはニヤニヤしながら俺に手を開いて向けてきた。


「……何だその手は?」


「なあ、教えてやった俺って優しいだろ?そんな優しい俺は今は金欠でよ。ちょっと飲める薬を買いに行かなきゃ行けないんだが、あいにく手持ちがねえんだよ」


「……たかりか」


「おいおい、俺とお前の仲だろ?」


「どんな仲か知らんが金はやらん」


「ちっ、勇者ってのはケチなんだな。おい、グラドラス、後で酒場に行って勇者はケチだって広めようぜ」


「酒場に行くのはいいが君には奢らないよ」


「……我が友はブレドだけだな」


「オルトス、酒ばかり飲んでると良くないぞ。そうだ、前回好評だったブレド式野菜ジュースをまた作ってやろう」


「ふざけんな、あれは野菜以外も入ってただろ!クソ不味くて死ぬかと思ったぞ‼︎」


「あれには十七品目の野菜と魔物……ゴホン、まあ、栄養化が高い飲みものだから味が悪いのはしょうがない」


「今、魔物って言ったろ!何の魔物が入ってんだよ⁉︎」


 オルトスは過去にブレド式野菜ジュースという飲み物を飲んだことを思い出したのか、口元を押さえてえずきだした。

 そんなオルトスを見てブレドは必死に笑うのを堪えながら背中をさするのを見て、イタズラで作ったのだと理解した俺は今後、ブレドとは絶対飯を食わないと誓うのだった。

 それからの馬車内は相変わらずうるさくて敵わなかったが、何とか目的地のワバリア王国領へ到着し、俺達はすぐにボエル国王に会いに謁見の間へと向かった。

 だが、謁見の間に到着すると中では沢山の宝石を付けた王族の他、騎士団が言い争いをしていたのだ。


「国王様、魔王軍がもうそこまで来ています!このままだとワバリア王国領は壊滅します。隣りのアルマー王国領にも救援を要請しましょう」


「ならん。奴らに貸しなど作れるか。その為にとっておきの者を用意したのだ」


 玉座に座っている目つきの悪い老人、まあ、ボエル国王だが謁見の間に入ってきた俺達を顎でさしてきた。

 すると王族や宰相連中からは嘲笑まじりの目で見られ、騎士団の方からは何ともいえない目線が飛んできた。

 とりあえず注目を浴びているので挨拶がてら前に出ようとすると、先にブレドの方が前に出ていき優雅に挨拶しだしたのだ。


「私はスノール王国の第二王子ブレドである。私やこの者達が来たからには安心するが良い!スノール王国特産のハチミチ酒でも飲んでワバリア王国領の楽しい歌でも歌って待っていると良いぞ!」


 ブレドはそう言い白い歯を見せて笑う。

 案の定、ボエルは唖然とした表情をしたまま固まってしまい動かなくなった。


 やれやれ……。


 俺は心の中でブレドを罵倒していると、ボエルの隣にはいた太った男が嘲笑うような目で俺達を見てきた。


「父上、こいつらがとっておきですか?こんな奴らでは魔王軍を笑わせる事はできても倒すことなんてできないですよ」


「ポラール、だが、冒険者ギルドが言うには彼らは戦果を上げているんだぞ?」


「そんなの冒険者ギルドが嘘をついてるだけでしょうが。父上は騙されたのですよ」


「……むう、ならどうするのだ?このままではウダンの言う通りアルマー王国領に助けを出す事になってしまうぞ。それだけは避けたいんだがな……」


「ウダン騎士団長は弱虫だから仕方ない」


 ポラールと言われた男は騎士団の先頭にいる鎧を着た壮年の男ウダンを見て笑みを浮かべる。

 その瞬間、ウダンは一瞬だけポラールを睨むが、すぐに目を瞑りその場に跪いた。


「ポラール王子の言う通り私は弱虫です。ですが亡くなった者も含め後ろにいる騎士団は私と違って勇猛果敢な者達です。しかし、それでも魔王軍には太刀打ちできませんでした。ですから、最強と言われる騎士団がいる要塞都市アルマーへ援軍支援をお願いします」


 跪くウダンを見てボエルは考えるような仕草をするが、ポラールは舌打ちをしてウダンを睨んだ。


「使えんな」


「まあ、そう言うなポラール。ウダンは良くやってくれている。しかし、どうするか……」


「父上、名案がありますよ。魔王軍が向かってる町の住人に武器を持たせて戦わせましょう。それなら数も増えて魔王軍に対抗できます。それと……冒険者のこいつらもまあ、壁ぐらいにはなってくれましょう」


 しばらく空気扱いであったが、突然、思い出したかのように俺達を見てポラールは言ってきた。

 すると、それを聞いたブレドとオルトスが眉間にシワを寄せ前に出ようとしたのだが、すぐにグラドラスに肩を掴まれ渋々と引き下がらせられてしまう。

 ちなみに俺はこういう事はいつもの事なので、話しが終わるのをボーッとしながら待っている感じだ。

 その後、考えが纏まったボエルの命にて俺達は魔王軍が進行している町へ向かう事になった。


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