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127 過去編18 聖オルレリウス歴3550年一ノ月


 あれから、オルトス、グラドラス、ブレドとは戦場で良く会うようになり、あいつらは会うたびに俺に絡んでくるようになった。


「おい、アレス。飯行こうぜ!」


「俺は一人で食べるからほっといてくれ」


「ちっ、相変わらずかよ」


「オルトス、それくらいにしとけ。アレスにも事情があるのだろう。済まなかったな」


 ブレドが申し訳なさそうに頭を下げてくるが、その隣りで本来、申し訳なさそうな顔をしなきゃいけない男は舌打ちした後、持ってる酒を飲んでゲップをしていた。


「……気にしてない」


 俺は呟くようにそう言うと、さっさと二人から離れて借りてる宿に戻る。

 その後、俺は部屋で簡単に食事を取ると書店に向かった。

 なぜかと言うと勇者の加護と一緒に現れた、他の加護を詳しく調べる為である。

 正直、勇者の加護で大概事足りるのだが、本格的に勇者として活動するようになり学んどいて損はないと思ったのだ。

 その中でも今、魔導師の加護については深く調べてる最中なのである。

 俺は町にある大きめの書店に入るとすぐに馴染みの店主が駆け寄ってきた。


「勇者様、よくぞ我がボードランズ書店へ。本日は何用でございますか?」


「いつも通りだ。悪いが見せてもらうぞ」


「わかりました」


 店主は頭を下げるとすぐに別の客に対応しにいったので、俺は魔力や魔法について書かれている本が並んでいる棚に移動する。


 魔力操作に多重魔法か……。


 俺は棚に並んで置いてある興味深いタイトルを次々に掴んでいく。

 片手いっぱいになったところで、カウンターに持って行こうとしたのだが、最近ここの住人と化してる会いたくない人物に会ってしまった。


「アレス、勇者の加護は魔法が使えないはずだが、魔法に興味があるのかい?」


 眼鏡を片手で軽く持ち上げ、興味深そうに俺を見てくる神経質そうな男、グラドラスが声をかけてきた。


「……魔法対策にな」


「ふむ、魔法対策は大切だからな。良ければ僕が魔法対策に関する歴史を教えてあげよう。魔法対策とは遥か昔に神々が……」


 グラドラスは勝手に話しを始めるが、俺は気にせずさっさと横を通ってカウンターに本を並べていく。

 その際、グラドラスは後ろをついて来ながらひたすら魔法対策の歴史を喋り続けているが、俺も店主も最近は慣れたから無視して会計のやり取りを淡々とこなしていく。


「毎度ありがとうございました」


「ああ」


「……という事なんだよ。わかったかいアレス」


「ああ」


 俺の返事にグラドラスは満足そうな表情をすると、古代アーティファクトという本棚の方に行ってしまった。


 ふう、今日はこの程度で済んだか……。


 俺は溜め息を吐いた後、書店を出るが、すぐに冒険者ギルドの使いの者に捕まってしまった。

 どうやら、緊急の要件らしい。

 仕方なく冒険者ギルドに向かうと、そのまま応接室に案内され、ギルド長が流れるように説明しだした。


「西側のワバリア領から緊急依頼で魔王軍討伐の要請があった」


「あの小国があるところか。確か冒険者は必要ないとか突っぱねていなかったか?」


「ああ、今までは魔王軍が攻めて来てなかったからな。だが、攻めてきて戦ったところボロ負けしたらしい。それで一気に巻き返したいので君をご指名ということだ。どうかな?」


「……ふむ、魔王の居場所を知ってるかもしれない魔族が来るなら好都合だ。わかった。」


「助かるよ。ああ、そうそう。あの三人もいつも通り行かせるので仲良くな」


 ……終わったな。


 俺は冒険者ギルドを出た後に、盛大に溜め息を吐く。

 最近は溜め息を吐く回数が多くなっている気がする。

 そんな事を思っているとその原因である三人がこっちに歩いてきた。


「お、アレス、お前も話しを聞いたようだな。私達も一緒にワバリア領に行く事になったからよろしく頼むぞ!何、このスノール王国の若きディーアと呼ばれるこのブレドがいれば安心だぞ!はっはっは!」


 高笑いするブレドを前に、俺は鹿に似た魔物のディーアの子供を思い出す。

 なるほど、角が生えてない未熟者ということか……。

 誰がこの脳筋王子に教えたんだ……。


 そんな事を思いながら、顔はモテそうだが中身が残念なブレドの方を見ると犯人がすぐにわかってしまった。


 こいつらか……。


 オルトスとグラドラスである。

 ブレドの横で必死に笑わないように堪えているので、間違いないだろう。


 やれやれ。


「では、若きディーア殿とその仲間達には期待してるよ」


 俺は少し大きめの声でそう言うと周りの冒険者達から失笑が聞こえてくる。

 その失笑の意味に気づいた二人の表情はすぐに真っ青になった。

 

「やべえ!俺達も同類だと思われちまった!」


「……迂闊‼︎」


「どうした?俺達はあの勇者殿に期待されてるんだぞ。しかも、若きディーアという二つ名で言ってくれたんだ!こんなに嬉しい事はないだろう兄弟達よ!」


 ブレドは嬉しそうにオルトスとグラドラスの肩を掴み引き寄せると、周りに向かって大笑いする。

 それが、きっかけになり周りは遂に三人を見ながら爆笑しだし、それを歓声か何かと勘違いしたブレドは喜び、オルトスとグラドラスは諦めたように俯くのだった。


 まあ、少しは真面目になれよ。


 俺はそんな三人を一瞥し宿に戻るのだった。


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