103 過去編13 聖オルレリウス歴354X年三ノ月
「なんだこの小さい奴は?」
「アーリエ男爵令嬢の護衛だ」
「護衛ってそんな大きさでかよ?おい、聞いたか⁉︎」
クズマは後ろに連れている騎士二人に声をかけると三人は一緒になって笑い出した。
「いやあ、まさか、アーリエに会う前に道化師に会えるなんてな。めちゃくちゃ笑ったぜ!中には勘違いした子供が入ってんのか?それとも土臭いドワーフか?ギャハハ‼︎いやあ、面白いなあ!」
「笑うのは構わないが笑い終えたらさっさと帰れ」
俺は呆れながらもそう言うとクズマは笑うのをやめて目を細めて俺を見る。
「あっ?貴様、今なんて言った?」
クズマはそう言って俺に近づき睨みつけてきたが、俺は気にせずラナルカに向きなおる。
「ラナルカ男爵、この領地とはもう接点は切れるんだろ?」
「あ、ああ、そうだね」
「何かこいつらに弱みを握られてるとかはないよな?」
「大丈夫だ……ってアレス殿危ない!」
「おい!無視すんじゃねーー‼︎」
後ろでクズマが武器を抜き、斬りかかってきたが俺は気にせずにいると、バキッという音とともに折れた刃先が床に落ち振り向くと折れた剣を握ったクズマが驚いた顔をして立っていた。
「なんだ?俺を斬れるとでも思ったのか?残念ながらお前が俺に傷をつけることは無理だぞ。さあ、面倒くさいからさっさと帰れ」
俺はそう言って手で追い払うよな仕草をすると、クズマは驚いた顔から段々と真っ赤な顔になり地団駄を踏みならしながら怒鳴ってきた。
「ふ、ふざけるなーー!俺様はニールズの領を治めるニールズ王国第一王子クズマ様だぞ!」
「俺にとってはどうでもいい肩書きだ。怪我をする前にさっさと帰れ。それと、ここのご令嬢は馬鹿者に興味はないみたいだぞ」
「う、嘘を吐くな!俺とアーリエは愛しあって……」
「そんなの嘘です‼︎」
クーズマが大声で喋っている途中、俺の後ろにある部屋の扉が開き、中から一人の美しいエルフの女性が叫びながら出てきた。
「アーリエ!」
クーズマはエルフの女性をアーリエと呼んで向かっていこうとしたので、俺が威圧すると、クズマは恐怖の表情を浮かべ飛び上がった。
「ひーー‼︎」
クズマは更に体勢を崩し尻餅をつき後ずさっていくが、そんなクズマをアーリエと呼ばれたエルフの女性は呆れた表情で見る。
「誰があなたと婚約したいなんて言いましたか?しかも愛しあってる?うーー!寒気がするわ‼︎」
「な、な、な、何んだと⁉︎この俺様が……」
「黙って!そもそも、あなたは私にしつこく付き纏って来ただけじゃない。いくら言っても理解しない!もう、顔も見たくないし声も聞きたくないの!出ていって‼︎」
アーリエは捲し立てるように喋ると荒い息をしながら言ってやったぞ、というような清々しい表情をしてクズマを睨んでいた。
それを見た屋敷の住人は笑いを堪えられなかったのか笑いだしてしまった。
「ははは。いやあ、さすが我が娘だね」
「笑い事じゃないわよ、お父様。何とか穏便に済まそうと頑張りましたけどもう我慢の限界ですわ」
「そうだったね。本当にすまなかった。だが、もうニールズ王国に義理だてする必要はないからお前のやりたいようにやりなさい」
「わかったわ。それより、そちらの方は?」
アーリエは俺の方を興味深そうな表情で見てくる。
その為、俺はアーリエに挨拶することにした。
「アーリエ男爵令嬢、俺はあなたの護衛に雇われた冒険者のアレスだ。よろしく頼む」
「あら、そうなの?別に私なら大丈夫なのに……」
「いや、大事な娘に何かあったら困るからね。それに先程のを見た限り、アレス殿は優秀だよ」
「わかったわ。アレス、よろしくね」
「ああ」
「さてと、クズマ第一王子様……」
ラナルカは連れの騎士に抱きついて震えているクズマに丁寧に話す。
「もう娘には近づかないで頂きたい。それと今は魔王軍がニールズ領に攻めてきています。少しでもご自分の住まわれている場所に愛着があるなら考えた方がいいですよ。まあ、私はあなたや全く対策を考えない国王様の所為でこの場所に愛着などなくなりましたけどね」
「ら、ラナルカ!貴様、その発言は許さんぞ!逆賊だぞ!くくくっ、これでお前達はもう終わりだ!父親はギロチンで娘は俺様の奴隷にしてやる。アーリエ、たっぷり可愛がってやるからな」
クーズマは丁寧に対応するラナルカに、王族としての自信を取り戻したのか、笑みを浮かべ、更にアーリエをいやらしい目で見つめてきた。
すると、それに気づいたラナルカは二人の間に入って蔑んだ目でクズマを見る。
「はあ、私達は既にニールズ王国とは縁を切ってます。あなたの父でもある国王とも話はついてますからね。それに逆賊って……勝手にこの屋敷に不法侵入して騒いでるあなたに言われたくないんですがね。はっきり言いましょう。クズ王子はさっさと帰りなさい」
「き、貴様!この俺様に向かって!くそが!もう許さないぞ!おい、アーリエ以外こいつら全員斬れ‼︎」
クーズマは唾を飛ばしながら二人の騎士に命令すると、騎士はすぐに剣を抜こうとするが抜くことはできなかった。
何故なら俺が二人の騎士が剣に手をかけた瞬間に殴って気絶させたからだ。
おそらく周りにいた連中には俺の動きが見えてなかったのだろう。
いきなり倒れた二人の騎士を驚いて何事かという表情で見ていた。
更に俺はクズマの頭を鷲掴みし軽く揺すってやると、すぐにクズマは白目を向いて気絶してしまった。
「ラナルカ男爵、こいつらにはもう帰ってもらうぞ」
俺はそう言うとクズマと二人の騎士を外に止めてある馬車に突っ込んで、御者を見ると空気を読んだのかすぐに走り去ってしまった。
「ふう、もう来ないでほしいんだけどね」
俺が屋敷に戻るとラナルカが話しかけてきた。
「まあ、また追い返せばいい。ただ、次は喋りだす前に叩きだすがな」
「それは心強い。それではアレス殿よろしく頼むよ」
その後、ラナルカと俺は正式な手続きをし、アーリエの護衛を開始したのだが、らアーリエの部屋の前で護衛をしていると、部屋からアーリエが出てきて俺に声をかけてきたのだった。
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