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010 王都の飲んだくれ

 俺は薄らと魔法陣の跡だけが残ったその場所を見て満足する。


 これで死霊術師は片付いたな……。


 ちなみに俺がやったのは死霊術を失敗させただけである。

 失敗すると魔法陣から闇の腕が現れ、周りにあるもの全てをタナクスという不死の住人がいる領域に持っていってしまうのである。


 後は掃除ぐらいか。


 そう思い、ゾンビ辺りを探していると遠くで鉄獅子や俺が抜けたパーティーの一つが戦っているのが見えたので、関わりたくない俺は町を出ることにした。

 それから俺は元々行く予定だったブランシュに向かう事にしたのだが、野営地を通りかかった際に包帯だらけのダント、ラーニャ、ドクの三人と出会ってしまった。

 しかも三人は何故か俺を見つけると面倒なことに声をかけてきたのだ。


「おい、キリク!」


「……」


「おい!俺達が話してやろうってんだぞ!聞けよ!」


「そうよ!待ちなさいよ!私達が困ってんのよ!役に立たないあんたがついに役立つ番なのよ!」


「……」


「加護無し!てめえ、無視すんな!俺達の為に働けよ!」


 なかなか理不尽なことを言ってくるが、言い返しても面倒になるだけなので、俺は無視をしながら歩き続ける。

 その後もダント達三人は後ろで理不尽なことを言い続けてきたが、ひたすら無視をしながら歩き続けていると最終的には追って来なくなった。


 ふう、しつこい連中だったな。

 ブランシュにまでついてくるのかと思ったぞ。


 俺は先程まで三人がいた方向を見ながら溜め息を吐き、再びブランシュに向かって歩き続けるのだった。 



◇◇◇◇



 あれからブランシュに着いた俺は宿で横になりながら今後の方針を考えていた。


 まあ、まずはソロ冒険者としてやっていくことは決定だが……。

 問題はこの東側のレオスハルト王国領でやっていけるかになるな。


 なんせ、東側のレオスハルト王国領には俺が組んでいた二組の勇者パーティーに、キリクになってから組んだ三組のパーティーが活動しているのだ。

 それもあり、東側のレオスハルト王国領での冒険者活動はやりにくいのである。


 それに俺への噂が問題なんだよな……。


 どうやら、ブランシュでも俺の噂が広まっており、先ほど冒険者ギルドで何組かの冒険者に初めて会ったのに嘘吐き呼ばわりされたのだ。

 おそらくブランシュを拠点にしている二つ目のパーティーが俺の噂を流したのだろう。

 こうなったら、噂がない東側の別の場所か北側か南側に行くべきかと悩んでしまう。

 しかし、そんなことを考えていると、ある事が頭に浮かんでしまった。

 それはレクタルの件である。

 なんせ、影でこそこそしている死霊術師があそこまで大がかりな行動をしたのだから、間違いなく何かが動きだしているのだ。


 まあ、死霊術師と協定を結んでいる東側の魔王が関わっているのは間違いなさそうだが、なぜレクタルなんだ?

 もしかして前線で何かあったのだろうか?

 それで前線で戦っている者達の邪魔をしたくて後ろから崩そうとしたのか……。

 まあ、前線に調べに行こうにも今の俺の実力では無理だしな……。


 なんせ前線に出るには最低でもアダマンタイト級の強さがないと簡単に死んでしまうからである。

 なので、現在、力が落ちてる俺には何もやれることはないのだ。


 まあ、俺が気づいたんだから他の連中が気づいて行動してるだろうし、俺が行ったとしてももうやれる事はないはずだ。


 俺は気持ちを切り替えると側に置いてある収納鞄を見つめた。


 レクタルで手に入れたドラゴンゾンビの骨をどうするかな……。

 今の低ランクの俺が持って行っても間違いなく盗んだと疑われてしまうだろうし……。

 やはり、ここは知り合いの出番か。


 俺はそう呟きながら頭の中である人物を思い浮かべるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



 翌日、鍛冶屋ギルドに行き知り合いが何処にいるのか聞きにいった。


「すまないが、オルトスという鍛治師が今、何処にいるか知っていたら教えてほしい」


「オルトスさんですか……。今は王都レオスハルトの酒場で毎日酒を飲んでますね」


「そうか、ありがとう」


 どうやら、あいつはまた酒浸り生活に戻ったのか。


 俺はそれから、ブランシュを出てレオスハルト王国の中心である王都に向かった。

 王都は東側で一番大きな都市であり、象徴となるアーツバルク城は遠くからでも見る事ができるほど巨大で荘厳である。

 そして東側に住んでいる人達は皆んな、王都に一度は住みたいと夢見るものなのだ。

 ちなみに、王国に貢献すれば家賃や税金の半分が免除される。

 その為、冒険者になって王国の依頼を受けて頑張っている者が多く、王都は冒険者とその家族が多く住んでいるのだ。

 王都に着いた俺はすぐにオルトスを探し始めたが、意外なことにすぐにいる場所を知る事ができた。

 適当に入った店の主人が教えてくれたのだが、どうやらここではオルトスは飲んだくれで有名らしい。

 早速、教えてくれた都市の外れにある寂れた酒場のカウンターに行くとオルトスを見つける事ができた。

 俺は髭面の汚い格好をしたドワーフに近づき声をかける。


「オルトス」


「んあ?誰だ?」


 オルトスは声をかけた方向ではなく明後日の方に顔を向けてしまう。

 仕方なく回り込むと相当、酔っているようで目の焦点もあってなく、鼻が真っ赤になっていた。


 これは駄目そうだな。


 俺は近くにいた酒場のマスターに度数が弱い酒を頼むと、その酒に酔いが醒める丸薬を砕いて入れオルトスに出した。


「おー!こんなとこに酒が!バッカスよありがとう!」


「誰が酒の神だ。さっさと飲め」


「おー、しかし何処から声が聞こえんだろうな」


 オルトスはまた明後日の方を見ながら酒を飲み始めたが、しばらくしてうたた寝を始めた。


 どうやら薬が効いたようだな。


 俺はしばらくオルトスを放っておき、隣りで酒と食事を楽しむことにした。

 そして、食事が終わりゆっくりしていると、やっとオルトスが目を覚ましたのだった。


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