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001 差別1

 ネイダール大陸に住む人々は生まれてから十年経つと加護というものが現れる。 

 加護には種類があり、戦闘系能力を上げるものや、生産系能力を上げるものなど多種多様にある。

 しかも、生まれや環境に適した加護が付くことが基本な為、人々は加護をありがたいものとして認識している。

 ちなみに加護は基本一つしか現れないのだが、俺は稀なタイプで十才になった時、勇者、錬金術師、魔導師の加護が現れたのだ。

 そして、残念なことに勇者がいるということは魔王もおり、更に悪い事に四体もいるのだ。

 まあ、勇者も本来は複数いるはずなのだが、神々が作ったばかりだということもあり、しばらく俺一人という状況で各国の騎士や兵士、そして冒険者と共に魔王に挑まなければならなかった。

 そんな中、俺は気心が知れた連中とパーティーを組むことができ、三十年以上かけて北西南東にいる四体の魔王のうち、西と北の魔王を討伐することができたのだ。

 しかし北の魔王と戦った際に俺は呪いをかけられ、力を落とされた挙句に加護を全て封じられてしまったのだ。

 その為、弱くなってしまった俺は前の様に魔王がいる近くの前線で戦う事ができなくなってしまったので、パーティーを抜けることにしたのだが、仲間もどうやら三十年以上という月日でそれぞれやりたい事ができていたらしく、結局、俺達勇者パーティーは解散する事になった。

 解散後に俺は何をすべきか悩んでいたのだが、まだ力不足であったが新しく現れた勇者のパーティーに声をかけてもらいサポーターとして働く事になった。

 しかし、すぐに俺はサポーターとしても付いていけなくなり抜ける事になる。

 次は仲間の助言でもう一つの勇者パーティーを育てることになったのだが一年もするとあいつらには教える事がなくなってしまった。

 なので俺はあいつらの邪魔になる前に去ろうと思ったのだが、そんな時にある事件が起きたのだ。

 そしてその事件がきっかけで俺は世間では死んだ事になり、新しく人生をやり直すことになった為、今まで全身を隠していたフルプレートを脱ぎ、髪型や目の色を変えて別人キリクとして新しく冒険者として生きる事になった。

 ちなみに俺はハイエルフと人間のハーフであり、耳も尖っていない為、見た目は十五才ぐらいの中性的な顔立ちをした人族にしか見えない。

 だから、新人冒険者として上手く始めることができたのだが、力も落ち加護無しではやっていけない事を理解した俺は、北の魔王を倒した報酬金で色々な魔導具を買い整え、魔法便りのこの世界で廃れた錬金術師の知識を使って頑張って行こうとしたのだが、世の中そんなに甘くはない事を日々認識させられるのであった。



◇ ◇ ◇ ◇



 聖オルレリウス歴3585年五ノ月


 レオスハルト王国領にある小さな町、レクタルの外れにあるダンジョンにて


 現在、手持ちの道具が心許ない為、ダンジョンの地図を見て安全な道を探していると、このパーティーのリーダーであり、戦士の加護を持つダントが俺の足元に石を投げてきた。


「……おいダント、何してる?」


「地図を見るふりしてサボってんじゃねーよ」


「お前達が死なない様に安全ルートを確認しているんだ。サボってるわけじゃない」


 俺が地図を見ながらそう答えると、ダントの横で頭に大きなリボンを付けた魔法使いの加護を持つラーニャが冷たい目で俺を睨んできた。


「はあ……。あんたさあ、ダントにそんな態度とっていいわけ?」


「態度だと?俺は普通に仕事をしてるだけだがな」


「はあ、これだからさあ……」


 ラーニャが呆れた口調でそう言うと、ダンジョンの壁によりかかっていた坊主頭の男、盗賊の加護を持ちダントの弟でもあるドクが俺を小馬鹿にしたように見てくる。


「仕方ないぜラーニャ。こいつ荷物持ち以外、何もしてない事を理解してないんだからさ」


「ああ、そういうことねえ。全く噂通り使えない奴だわ」


「さすがは加護無し冒険者だ」


 俺の目の前で三人はその後も悪意を込めて色々言ってくるので、俺は内心うんざりしながらも、こいつらが遊んでいる間、俺がいつもしている事を説明してやる。


「……俺は地図を見て安全ルートを確認したり、荷物持ちに武器防具の調整など色々やってるんだ。それに戦わないんじゃなく、好き勝手に動くお前達のフォローで精一杯なんだよ」


 俺がそう言うと三人は途端に顔を真っ赤にさせて怒り出した。


「うるせえ!お前はなんもやってねえ!」


「そうよそうよ!」


「このサボり野郎!」


「……ふう、話しにならないな」


「話しにならないのはお前だろう!ああ、もうお前どっかいけ‼︎」


「……わかった。それとこのパーティーは抜けさせてもらう……」


 俺は地図をしまうとさっさと出口へ向かいだすが、その時、離れた場所で魔物の雄叫びが聞こえた。


 あの声はボブゴブリン辺りが冒険者を倒したか。

 これは部隊で動いてるからさっさと退散しよう。


 俺はそう思い、足早に出口に向かうと三人が慌てて後ろについてきた。


「なんで付いてくる?」


「う、うるせえな。出口まで案内しろ!」


「やれやれ……」


 俺は呆れた顔をしながらも内心ホッとしていたのだ。

 それは、パーティーを抜ける前に揉めたくなっかたからである……。

 その後、俺はギルドに戻りすぐにパーティー脱退の手続きをしていたのだが、手続きを担当した受付の猫耳族の女獣人、ナルが俺を見てニヤついていた。


「それでキリクさん、三つのパーティーをクビになったわけですけどー」


「クビじゃなく脱退だ」


「同じ様なものですよ。やはり、加護無しじゃ誰も相手にしませんって」


 ナルはあからさまに俺をバカにする様な態度をとっている。

 何故かというと、この世界では加護がない者は神々から見捨てられた存在とされて嫌う連中が多いのだ。

 それに、俺の場合は前の二つのパーティーがある事ない事吹聴してくれたおかげで、このレクタルでは嘘吐きに、役立たずと、陰口を叩かれて最終的には正面からも言われるようになってしまったのだ。

 そして目の前の受付のナルもその加護無しを嫌う類いであり、俺にこういう扱いをしてくるのだ。

 まあ、そういう連中には少しだけイラッとするがそれだけしか思わない。

 なんせ、長く生きた月日の中であった辛かった事に比べれば大した事がないからだ。

 だが、最近はこいつらの所為で冒険者として行動するのに支障がでてきているのだ。


 おそらく、レクタルではもうまともなパーティーも組めなさそうだし、この街での冒険者生活は潮時かもしれないな。

 というか、そもそもパーティーを組む必要はあるんだろうか?

 最初はソロでやっていて、そこに声をかけられてそのままパーティーを組んで今に至るわけだからな。

 なら、これからはソロでいくのは決定でいいかもしれない。

 いや、むしろ絶対にソロだな。

 なんせ、元勇者だと疑われない様にパーティーに力を合わせなくて良いんだしな。


 そう考え終えた瞬間、俺の心は晴れやかな気持ちになっていく。

 しかし、すぐにナルの声で俺の心は曇ってしまった。


「ねえ、キリクさーん」


「……なんだ?」


「今後どうしますかって聞いてんですよー?」


「ああ、ソロでやるからそう書いといてくれ」


「はあ、まだ冒険者やるんですか?」


「悪いか?」


「悪いも何も冒険者ギルドにも役に立ってない人がこれ以上、冒険者をやる意味あるのかなあって」


「やるかやらないかは俺が決める事だろ」


「決める事だろうって何様ですかあ?加護無しがそもそも冒険者をやろうなんて正直うざいんですよねえ」


「なんだ?加護無しは冒険者をやってはいけないのか?それは俺だけじゃなく他の加護が無くても頑張ってる冒険者も含んでいるということなのか……?」


「そうですよー。加護無しがそもそも何でいんでしょうねえ。本当迷惑ですよお。ああ、でも特に嘘つきで役立たずな加護無しはさっさと冒険者なんか辞めろって感じですねー」


 受付はそう言うと俺に醜悪な笑みを見せてくる。


 俺だけならいいが他の加護無し冒険者達の事をバカにされるのは腹が立つな。

 

 俺は少し腹が立ったのでナルに少し威圧してやる子とにした。


「……それは本気で言ってるのか?」


「ひっ⁉︎」


 あまりにも理不尽なもの言いだったので俺はゴブリンが怯えるぐらいの威圧感をだしてナルを睨みつけると、耳が垂れて怯えた表情になってしまった。


 これで少しはまともに対応してくれると良いんだがな……。


 俺がそう思っていると、受付内で真剣な表情で書き物をしていた人物が手を止め、音を立てながら立ち上がった。

 その為、俺はつい視線がいってしまったのだが、その人物を見て驚いてしまう。

 何故なら、その人物は腰まで伸びた金色の髪と青く大きな目に尖った特徴的な耳を持つエルフの美少女だったからだ。


 ……エルフの中でも飛び抜けた容姿だな。

 しかし、これは少しまずいかもな。


 俺はできればこっちに来ないで欲しいと思ったが、願いは虚しく美少女エルフは俺を見つめた後、長い髪と白い短めのワンピースをなびかせながら俺達の方にやって来てしまう。

 するとナルの耳はすぐにピンと立ち、俺に不敵な笑みを浮かべるとエルフの美少女に駆け寄っていき、わざと周りに聞こえるように大声で泣き声をあげた。


「うわーん!サリエラさーん!この加護無しが睨みながら脅してきたんですー!怖かったよー!」


 手で涙が出ていない目元を隠しながらナルは大声で泣き続ける。

 すると、周りにいた連中が集まってきて、その場の状況を見ると、怒りの表情を浮かべながら俺を睨みつけてきたのだった。


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[気になる点] 俺は少し腹が立ったのでナルに少し威圧してやる子とにした。 やる子と→やる事 [一言] 誤字修正フォームをオンにしといてください。
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