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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第49話「巨神」後編

 



『早く捉えなさい!』


 スサノオは速くなった。


『射撃管制は捉えています。しかし……』

『では何故当たらないのです!』

『ほう、やるようになったか』


 いや、速度は変わっていない。

 スラスター出力だけでなく、ジェネレーターや火器の出力も変わっていない。


「リント、やれる?」

「ああ。信じてるだろ?メイ」

「うん」


 しかし、早くなった。

 変わったのはシステム面、正確に言うと操縦系だ。


「右と」

「左」

「やれる?」

「当然」


 凛斗が行ったこと。それはフルOSを2つ同時に起動し、フルOSは1つしか起動できないという制限を消しただけ。

 だがそれにより、機体の判断速度やOSを分けていたことでできていたラグが消え、2人の間にあった遠慮も消え、スサノオの戦闘能力は高まった。


「ブリューナクは?」

「使えてる。大丈夫?」

「ああ、それで良い」


 もちろん、リスクはいくつもある。特にパイロット2人の判断が逆の場合、機体へ2つの命令が入力されることでエラーが生じ、動かなくなってしまう。

 そんな、一卵性の双子でも難しいことが要求されていたのだが……どうやら、凛斗の心配と恐怖は杞憂だったらしい。


「そっち」

「次だ」

「前だね」

「やるぞ」


 回避に凛斗の技能も加わったことで、最短距離を駆け抜けるための最小限の動きすら複雑になった。

 ブリューナクの操作にメイも加わったことで、敵ブリューナクの撃破速度が上がる。


「撃って!」

「ああ、蹴るぞ」


 射撃型ブリューナクの射撃で防壁型ブリューナクにエネルギーシールドを発生させると、裏側から短剣型ブリューナクを突入させて次々と撃破していく。

 さらにそこへ向けてビームボーゲンを斉射、何基もの重砲型ブリューナクを蜂の巣にした。

 そして脚部の固定式ビームソードを発振、不用意に近づいてきた防壁型ブリューナクを斬り裂く。


「マズいな……」


 そんな風に、戦場は優勢側へ変化している

 しかし凛斗はデータリンクを一瞥した後、少し思考した。


「味方?」

「ああ、かなりの被害が出てる。早く止めないと瓦解しかねない」

「じゃあ……」


 主戦線から離れたここにデータリンクは届いている。

 それによると既に防衛線は引き終えているが、無人仕様ジャッジメントの性能は驚異としか言えないらしい。ベテランやエースを中心に撃破数を増やしているものの、被害もかなり出ているようだ。

 可能な限り早期の無力化が必要だ。皇太子の言葉を信じるなら、だが……


「突っ込め。損傷は気にするな」

「了解!」


 今はそれに賭けるしかない。

 スサノオはプラズマスラスターの噴射方向を変え、ハデスへ正面から突撃する。


『鏖殺せよ。囲み潰してしまえ』

『は!』

「させるか、メイ」

「大丈夫」


 相変わらず、ビームボーゲンとブリューナクの弾幕は厚い。しかしスサノオはそれを掻い潜り、距離を減らしていく。

 その最中、進路を遮った防壁型ブリューナクを大太刀型クルセイダーで叩き斬り、プラズマ収束砲を用いて数基の重砲型ブリューナクを撃破した。

 さらにブリューナクを使い潰すように使用し、死角に存在するものも徹底的に破壊していく。損耗数は倍以上違い、ハデスの火力が少しずつ減っていった。


「いけるね」

「ああ。このままやるぞ、タイミング合わせろ」


 そして、スサノオはそのままハデスへ近づく。難易度が上がっても、やること自体は同じだ。

 プラズマ収束砲を放ち、ビームボーゲンを浴びせ、エネルギーシールドの発生器を破壊した。


「任せて!」


 次いで、プラズマスラスターの出力を上げる。

 急旋回やロールも組み合わせた回避軌道を行いつつハデスへ吶喊、その右中腕を叩き斬った。


「次だ!」


 だが、それで終わらない。ハデスの横をすり抜けたスサノオは月面へ足をつけると、足跡を残しながら滑っていく。

 足裏を削りつつサブスラスターを吹かし、攻撃を避けていく。


「行くね!」


 そしてハデスの真下に来ると、一気に飛び上がる。


『落ちなさい!』

「させるか!」


 2人の目論見を察したハデスからの弾幕は激しいが、凛斗は盾型ブリューナクを使い捨ててでも守り、道を開いていく。


「叩き斬れ!」

「やぁぁぁ!」


 そしてプラズマ収束砲をエネルギーシールド発生器に直撃させて障害を排除、そのまま突撃して左下腕を両断した。


『ぐぬぅ……だが、負けるわけにはいかん!やれ!』

「っ⁉︎」


 だが、ハデスの戦闘能力はまだまだ残っている。

 飛び去るスサノオへ向けて超大口径プラズマ収束砲が放たれたため、急旋回で間一髪避けた。


「それはこっちのセリフだ。お前に未来はやらない」

「あんな殺し合いばっかりなんてもう沢山!」

『だからこそ管理すべきだろう』

「だから何でそうなるの!」


 腕が半減したものの、ハデスの火力はまだまだ圧倒的だ。3門に減った超大口径プラズマ収束砲をはじめとした火器が次々と発砲し、宇宙空間を塗り潰していく。

 加えて2種類のブリューナクも分厚い弾幕を形成しているため、スサノオは回避を優先した。


『人は争いを繰り返す。人の和を論じても、戦争はなくならなかった。であれば、誰かが管理しなければならない』

「そんな資格がお前にあるのか?」

『ある。そして2度と争わぬよう管理する。戦争という悲劇を無くすにはそれしかない。自由?責任?そのようなものの前にやらなければならんことは多い』


 皇太子の唱えることはある意味正論だ。世界あら争いが無くならないことは事実で、何かしらの対処しなければならないことは自明の理だ。

 しかし、皇太子が望む世界を凛斗とメイは最初から否定している。互いに、それは変わらない。


「そんな世界、絶対にお断り」

「こっちから願い下げだ。お前じゃなくても潰してやる」

『何だと?』


 凛斗とメイが、マイリアをはじめとした面々が望む世界は異なる。相互に理解し合えることを知っている面々だからこその世界、それは皇太子が求めるものとは正反対の位置に存在する。

 なので2人はスサノオの持つ火力を一気に放ち、否定の言葉と共に叩き込んだ。エネルギーシールド発生器をいくつも破壊しつつ。


「神様にでもなったつもりか?そんなもの、人の手でできることじゃない」

「今ですら破綻してるのに、どんな夢を見てるの?」

『何を言う。争いを生んでいるのは貴様らだろう。抵抗という名で殺しを行なっているだろう。自由や責任などという言葉で踊っているだけの者どもが』


 皇太子もハデスの反撃に合わせ、自らの言葉を叩き込む。

 彼らにとって相手は敵、それも理想とする世界を否定する敵だ。互いへの嫌悪感はかなりのもので、この戦いを止めるつもりは更々ない。


「お前は言い方が違うだけで、やってることは過去の独裁者と変わらないだろ。自国民を虐殺した最悪の連中と」

「自分を正当化してるつもりで、ホントは否定してる。それに気付いてないだけ」

『貴様ら……!』

「さっきも言った通りだ。お前に未来はやらない」

「もう嫌だから!」


 防壁型ブリューナクを叩き斬り、短剣型ブリューナクが乱舞し、射撃型ブリューナクがプラズマ収束砲に消し飛ばされ、盾型ブリューナクを使い捨てにして防御する。

 超大口径プラズマ収束砲が照射され続け、ハデス本体や重砲型ブリューナクからプラズマ収束砲が何十条と放たれ、無数のビーム砲やビームボーゲンが弾幕を形成する。

 たった2機で構成される戦場は圧倒的な密度のビームによって塗り潰されていた。不用意に接近した他のSAGA(サーガ)はそのビームに絡め取られ、数秒で消滅している。


『それだけか、その程度の言葉で余の前に立ちはだかるか!魔王!』

「その程度?はっ。理解できないか、お前には!」

『理解できていないのは貴様らの方だろう。余の温情を!』

「どこが温情だ!」


 だが、それでも2機は戦いをやめない。

 相反する2つの主張、2つの正義がぶつかり合ったのであれば、その後にはどちらか1つしか残らないのだから。


『ええい、奴を落とせ!防御など考えなくとも良い!』

『しかし殿下、それでは!』

『構わん!やれ!』

『は、は!』


 皇太子がそう命令した途端、ハデスの火力投射が文字通り数倍に跳ね上がった。

 正確には、冷却機構を最大限に稼動させているといったところか。それだけでも単位時間あたりの発射数が増えるため、ため、スサノオが受ける圧力は非常に大きくなった。

 その代償か、スラスターやエネルギーシールドへの供給エネルギーが減ったようだが、この火力があれば大抵のことには対処できるだろう。


「くっ、こいつ!」

「リント!」

「早く仕留めるぞ!時間をかけるとマズい!」


 現に、スサノオは弾幕に押し返されていた。無理矢理突破できなくはないが、それでは勝ち目が無くなってしまう。

 そして凛斗とメイは、防御に回れば押し切られることも直感的に察していた。選択肢は1つしかない……が、それを取ることもまた難しい。


『何故拒む!人が何度過ちを繰り返してきたと思っている!ここで止めねば、いずれ滅びるぞ!』

「そんなの、ただの言い訳だ!」

「現実を見てないだけ!」

『何故だ!何故そう叫ぶ!』


 それでもやらなければならない。スサノオは弾幕の間に体を滑り込ませると、ハデスへ向けて何度目かの突撃を行う。残り少ない盾型ブリューナクを酷使しつつ、被弾を最小限にとどめる。

 それと同時に、皇太子への反論も行う。その言葉は強く、トゲの多いものだ。相手に呑まれれば負ける、それが分かっているために。


「人は歩き続けた。何があろうと、止まらずに」

『それは欲だ。その欲が何度戦争を起こしたと思っている。どれだけの人間が死んだと思っている!』

「そう。争いもある、殺し合いもある。でも!」

「未来を信じてきた!人が、その意思で!」

『そのような綺麗事を……!』

「綺麗事で何が悪い!」


 スサノオはプラズマ収束砲を放ち、コックピット近くのエネルギーシールド発生器を破壊した。しかし、直後に放たれた超高出力プラズマ収束砲の完全回避に失敗、左下のプラズマ収束砲が破壊される。

 同時に放たれたビームボーゲンが右内側の翼を掠め、右下のプラズマ収束砲も稼動しなくなった。右肩と脚部にも当たり、サブスラスターが何基か使えなくなってしまう。


「確かに綺麗事だ。けどな!夢を見て、それを叶えるのが人だ!」


 それでも戦いは止めない。凛斗の望み、メイの願い。それは綺麗事と言えるかもしれない。それが正しいなら何故戦争が止まらないのか、とも言える。

 しかし敵味方に分かれて戦った2人にとって、この状況に持っていけたことが奇跡のようなもの。信じて進む価値と未来を知っている。


「人は、お前に管理されないといけないような弱い存在じゃない!」

「誰かに管理されなくても、人は発展してきたんだから!今さらそんなの身勝手なだけ!」


 残る2つのプラズマ収束砲を放ちつつ、スサノオは接近していく。

 ハデスのエネルギーシールド発生器はいくつも破壊されているが、装甲表面はアンチビームコーティングで覆われている。なので弱点となるビームボーゲンの銃口やスラスターを狙い、ビームボーゲンで潰した。


『知ったような口を利くな!貴様らは知らんだけだ!世の地獄を!真理を!』

「知らないのはお前だ!」

「見てないのは貴方だけ!」

『何を言うか!』

「そんなの……」

「だって……」


 十数条のビームボーゲンをエネルギーシールドで受け止め、他は盾型ブリューナクが防ぐ。直後に飛んできたプラズマ収束砲の内2つはエネルギーシールドで受け流し、残りは避ける。

 そして近くにあった重砲型ブリューナク2基を斬り捨て、防壁型ブリューナクの裏をかいて背後を取り、脚部の固定式ビームソードで両断した。


「誰もが、生きてるんだ!」

「みんな、生きている!」


 左太腿がプラズマ収束砲に飲み込まれたが、飛び退いて損傷を抑える。

 そして、軌道を上手く取って弾幕を回避。ビームボーゲンで火器を潰しつつハデスの直近にたどり着くと、その右足を斬り捨てた。


「俺も!メイも!ミーフェルも!全員!」

「全員進んでる!自分を信じて!」

『それは理想論だ!貴様も人を殺しただろう、生を止めただろう!』

「だからどうした!」

『……何だと?』


 直後に反転したスサノオは、左のショルダーシールドからビームスローイングダガーを引き抜くとすぐさま投擲、ハデスの盾となっていた防壁型ブリューナク3基を破壊する。

 また腰部にある自立稼動プラズマ収束砲からの攻撃を避けつつ、ハイビームボーゲンを複数発叩き込んで念入りに破壊した。火力が高いため、壊せる時に壊した方が良い。


「確かに殺した。だから!」

「私達は生きてる。だから!」

「止まれないんだ!」

「止まれない!」


 確実に追い詰めているが、スサノオの被弾数も増えている。装甲は次々と融解し、穴が開き、いくつかは脱離していた。

 しかし、致命的なダメージだけは絶対に避ける。


『それが争いを無くさぬ根本だろう!殺し続ける理由だろう!』


 犠牲にするものと守り切るものを選択し、勝つために全力で戦う。自らのため、未来のため、勝利の道を紡ぐ。

 戦術や戦略の手法を戦闘に持ち込んだのは、ただただ勝利を望んだため。目の前の存在を討ち果たさんと望んだため。


「それでも、人は止まらなかった!」

「歩き続けたから」

「間違えても!」

「失敗しても」

「歴史は!」

「ずっと!」


 スサノオは右足の脛から下を失うことと引き換えに、ハデスの左上腕を肩から斬り裂いた。

 さらにハデスの頭部へプラズマ収束砲を発射。それを囮にビームボーゲンを放ち、レーダーと通信機の一部を破壊する。


『貴様ら……!』

「だったら、未来を信じて何が悪い!理想論で何が悪い!」

「明日を信じても変じゃない!」


 夢、希望、望み。そういったもの達が今の世界を作ってきたのだと、凛斗は知った。

 明日を願った人達によって世界は進んできたのだと、メイは信じている。

 だから、それと逆行するような者とは戦う以外の方法を見つけられなかった。殺してでも止めなければならないと、2人とも決断した。


「お前にはあるか?何もかも失って世界に絶望したことが。復讐に身を焦がし続けたことが。そんな中で、人を誰よりも(いと)おしく思ったことが!」

『世迷言がどうした!そのようなもので世界は動かん!』

「それを知らない奴が世界を語るな……そんなお前の軽い理論で世界を語るな!」

『そんな少数派の意見ばかり聞く必要がどこにある!そもそも、それをハイシェルト令嬢は知らんだろう!』


 残る短剣型ブリューナクを全て突撃させ、ハデス各所にあるメインスラスターを破壊していく。射撃型ブリューナクは敵ブリューナク相手に大立ち回りを行い、2以上のキルレシオを叩き出す。どちらも使い捨てとなるが、構わない。

 そして盾型ブリューナクは身を挺してスサノオを守り、道を切り開く。


「私にだって分かるから。それに、リントのことだもん」

「そういうことだ。諦めろ」

『貴様らァァァ!』

「未来は人が作るものだ。神様気取りなんて要らない」

「弾圧したって何もできないよ」


 開かれた道をスサノオは駆ける。ここまでくれば、この道を突き進むのみ。

 多少の被弾は無視し、翼を貫くビームすら致命傷以外は無視し、最短距離で飛ぶ。


「だからお前は、ここで(つい)えろ!」

「だからもう、誰も奪わせない!」


 複数の自立稼動プラズマ収束砲を向けられたが、左のショルダーシールドを身代わりにし、突撃は止めない。

 そのまま大太刀型クルセイダーを体の前に突き出し、プラズマスラスターの出力を限界まで高めた。


『こんな、ことが……』


 直後、左腕をプラズマ収束砲にもぎ取られた。


「ハァァァァ!」

「やぁぁぁぁ!」


 しかし同時に、大太刀型クルセイダーをハデスの中央部に突き刺した。


『は、はっ……そうか、これが……』

『殿下!』

『ふ、ふはは……すまん、な……マ……』


 そして、ジェネレーターが暴走したハデスは爆散する。

 ……その火球に、スサノオも巻き込みながら。












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