表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

9 湖

 根来は、血にまみれた倉庫内を歩き回りながら粉河に言った。

「ところで、吉川という男は一体どういう男なんだ」

「集めた情報によりますと、現在、東京の築地で寿司ラーメンの個人店を経営しているようです」

 根来は思わず耳を疑った。

「なんだって、寿司ラーメン?」

「はい。なんでも寿司とラーメンを合体させたものだとか……」

「まずそうだな……売れているのか」

「まずまずだそうです」

「そうか……」

 根来はそれ以上、何も言わなかった。しばらく寿司ラーメンのことを考えていると、粉河が何かを思い出したらしく、

「根来さん、湖の方に行ってみますか」

 と言った。

「ああ、この近くに湖があるんだっけな。もしかしたら、吉川はそこにいるのかもしれん。早速行ってみよう」


 このようにして、根来と粉河は、ふらふらと懐中電灯を振り回しながら湖の方へと歩いて行くことになった。どっぷりと夜がふけって何も見えないが、柔らかな月明かりばかりが美しかった。しばらくゆくと、その月明かりに照らされた美しい湖面が見えたのである。

「ほほお、いいじゃねぇか、この湖。昼間なんかに来りゃあさ、バーベキューとかも出来るんだろうなぁ」

 と根来は勝手な想像を繰り広げた。

「吉川さん。いらっしゃいますかぁ」

 粉河の声が、夜の静寂の中で虚しく響いた。そればかりでなんの反応もなかったので、粉河はなんだか無性に寂しくなったのである。

「誰もいなそうだな。残してきた刑事たちが可哀想だ。もう別荘に帰ろうぜ」

「根来さん」

 その時、当然に粉河が怯えた声で言った。

「どうした?」

「湖面から人間の足が出てます」

「な、なに?」

 根来は、その言葉を聞いて思わず懐中電灯を振り回して、粉河の指差した方に光を向けた。そこには倒木の太い枝が湖面から二本伸びていたのである。すかさず根来は粉河を頭を叩いた。

「バカ野郎! ただの木じゃねぇか!」

「いてて……。すいません」

「推理小説の読みすぎだ!」

 このようにして、湖には気になるところは特になかったので、二人は別荘に帰ることにしたのである。

 湖からの帰り道、根来は粉河に尋ねた。

「吉川という男はどこかに身を隠せるような男なのか?」

「というと何のことでしょうか」

「体格とかさ」

「身長は小柄だったそうです。155センチだったそうで」

 それを聞くと、根来はあることが気になって粉河の顔を見た。

「ふうん。じゃあ、ガイシャの身長は?」

「185センチです」

 根来は何事か考え始めているようであった。

「身長がどうかしたんですか?」

「いや、吉川は本当にガイシャの後頭部を殴れたのかな、と思ってよ。ガイシャの致命傷は後頭部のかなり上の方にあったろ? つまり犯人はガイシャより身長が高い人物じゃねぇか? 吉川にはもしかしたら身長的に無理だったんじゃねぇのかなって思ってよ」

「どうですかね。ただバッドを使えば可能だったのでは? またガイシャが座っていたり、寝込んでいるところを襲えば身長差は関係なくなるのではないですか?」

「それもそうだな」

 根来と粉河は頷きながら、別荘へと歩いて行ったのである……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ