能力
現れたのは、長い銀髪に赤い瞳の綺麗な人だった。
来ている服も体のラインを隠すようなローブで、更に性別が分からない。
中性的な容貌と声、その全てが合わさって、不思議な感じのする人だと私は思う。
そこでその人物が私を見て、次にレイヴンを見て、
「そちらの女性が、最近レイヴンが御注進の女性かな? 異世界の聖女と呼ばれる人物」
「そうです」
答えたレイヴンにミスと呼ばれたその人物は笑みを深くした。
「僕の特殊能力関係を見る能力は必要ないんじゃなかったのかな? だからあとで自慢しにつれてくると言っていたけれど、その様子だと僕に能力を聞きに来たように感じるね」
「……というよりも、ミキをここに連れてきた時点で貴方には分かっていたのでは?」
そう、あまり言いたくなさそうな嫌な顔をしてレイヴンが告げる。
それにミスという人物は楽しそうに笑って、
「そうだね。だって僕の前に現れた時点でその人の能力は僕には丸見えだからね。それが僕の特殊能力であるわけだし」
楽しそうにそう告げるミスにさらにレイヴンが変な顔になって、
「それで、ミキにはどんな特殊能力が? 俺はそういった事がない女性がいいと思って選んだ部分もあるのに」
「好きな女性とイチャイチャしたいんだよね、運命を感じたと言っていたものね」
レイヴンが沈黙した。
そして私はそこまで期待されていたの後も思ってしまう。
とそこでミスはクスリと笑い、
「彼女の能力は、“完全無能力”だよ」
そう、楽しそうに私の能力を彼は口にしたのだった。