能力がない理由?
チートがない。
衝撃の事実を告げられた私は、凍り付いて目の前の王子、レイヴンの顔を見つめた。
そんな私にレイヴンは、
「これまで特殊な能力を持つ“聖女”を我々王家の人間は召喚して来た。俺の母もそうだ」
「え、えっと、私元の世界に帰れるのでしょうか?」
そこで私は気づいた。
最近元の世界の戻れないパターンがあると!
そう思って聞くとレイヴンは首を縦に振り、
「戻れる、幾らでも」
「そ、そうですか」
「やはり、“嫁”を無理やり攫ってくるのは道義的にあまり良くないのと、もし本当にそんな事をしようとするなら、“聖女”が逃げて自力でもとの世界に戻る方法をさアがし出そうとするからな。俺の二代前の王が、あまりにも好みな子が召喚されて一目惚れしたらしんだが、その時絶対に逃がしたくないと思ったらしく『お前は元の世界にもう戻れない、俺に頼って生きていくんだな!』と言ったら逃走されて、その後追いかけて必死で口説いて嫁に来てもらったらしいから」
「は、はあ……まさかそれもあって、私にはチートがない!?」
「いや、それはまた別の理由だ」
言い切ったレイヴン。
理由は別にあるらしい。
なんでだと私が思っているも、レイヴンはそれ以上答えない。
だから私は、
「どうして私には能力がないの!?」
「……俺の母親が、“聖女”として特殊能力が強くてこう、男らしいというか……だから、能力が無ければもっと俺はイチャイチャできるのではと」
「え、えっと……それは私と、という意味でしょうか」
「……そうだ」
「な、なんで」
「……その、一目惚れしたから。どの子を召喚しようかといった話で調べて、そうしたら一番好みの子の特殊能力が“完全無能力”だったから、こう……」
「あ、は、はい……」
私は、説明という名の告白を受けて、とりあえずそう返事をしたのだった。
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