異世界召喚と王子様
異世界召喚なる物を私は初めて体験した。
物語の世界では重要な人物として呼ばれたりするが、失敗も多分あるだろう。
その失敗に私が入っていないと良いなと思いつつ、異世界に来たというわくわく感でいっぱいの私、飴田三記は、目の前にいた魔法使い? だと思う黒い布をかぶった男性に、
「私、もしかして重要な意味があってこの世界に呼ばれたのですか!?」
「え、えっと、そうです。貴方を聖女としてこの世界に呼びました」
「やっぱり、夢に見た異世界! 新しい冒険が私を待っているのね!」
などと喜んでいる私に、彼らはどことなく気まずいような変な感じだ。
やがて、誰かが走ってくる音が聞こえた。
その方向を見ると木のドアがあり、そちら側を見た瞬間大きく開かれた。
現れたのは金髪碧眼の男性で、多分私と同い年くらいだろう。
そんな彼をじっと見ていると近づいてきた彼は私にこう言った。
「俺の名前はレイヴン。この国の王子だ」
「わ~、本物の王子様を初めて見たかも。格好いいね」
「そ、そうか……うん」
照れているイケメンも何だかかわいいなと思った私だが、それよりも私は聞きたいことがあった。つまり、
「私にはどんなチートがあるのでしょうか!」
「……」
そこでレイヴンは沈黙した。
そしてじっと私を見つめて、
「確かに普通は、聖女といったらチートがある。だが……」
「だが?」
「俺の個人的な理由で“チート”はなしになった」
そう、私の斜め横の方を見ながら目の前の王子様は告げたのだった。