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綾香 美味しいものを食べようよ

予定は、変わるものです。

 五日目(日)またまた雲一つない快晴


今朝は、早起きをしてポートダグラスの日曜市に行くつもりで、バスの時間を調べるためにフロントに行く。

英作文を事前にして、フロントのお兄さんにローカルバスの時間を聞くと。「ない。」の一言。えーー、あの観光ガイドの情報はなんだったんだ。わざわざ値段の高い分厚い本を買ったのに・・・。


しょうがないので、一旦部屋へ引き上げる。

急遽二人で対策会議だ。智樹の主張は、「何か美味しいものを食べようよ。」ということに集約される。なにせ出してくる情報が、レストラン情報ばかりなのだ。確かに、オーストラリアに来てロクなものを食べてないね。「オージービーフを食べよう!ステーキのでっかいやつ。せっかく本場に来たんだからさぁ。」

という言葉で、今日はケアンズに行ってステーキを食べることに決まった。


旅行会社の事務所が開くまで、例のごとくプールに行く。毎日泳いでいるので、水着焼けをして皮膚が擦れるとひりひりする。頻繁に日焼け止めを塗ってはいるのだが・・。日本のように雲が多く発生しないので日差しがより強く感じられる。とにかく毎日カラッと晴れている。


早めにプールからあがり、シャトルバスの連絡を入れてから、海岸にある公園で遊びながらバスを待つことにする。久しぶりにブランコを漕いだけれど、小さい頃にやったことは身体が覚えているものらしい。智樹とどちらが高くまで漕げるか競争する。海からの風に吹かれてのブランコは爽快だった。


バスが一台、私達の泊まっているホテルに入ってきた。

「あのバスじゃない?」「でも、いつもより大きすぎない?」と言いながら、一応確認の為に、ホテルのすぐ前にある公園から玄関アプローチまで帰ってみる。確認して良かった。今日は私たちの他に七人もの人がバスに乗るので、中型バスが来ていたのだ。団体で来られているらしく、賑やかなおばさま達だった。男は一人だけだったので、智樹は小さくなって乗っていた。この団体さんが旅行会社まで行くというので、私達も同じ場所で降りることにする。旅行会社の人に聞けば、おいしいレストランを教えてもらえるかと思ったのだ。

しかし、これは目算が外れた。オプショナルツアーを組んでいるお高いレストラン以外の情報は旅行会社の人たちは持っていらっしゃらなかった。


結局隣にあったお土産屋さんのお姉さんに、安くて美味しいお店を教えてもらった。

ここは、アメリカンフィフティーズという感じのカーボーイが出て来そうなお店で、日本語のメニューも置いてあったので助かった。正直に言おう。ここで一番美味しかったのは、トマトのブルスケッタだった。ガーリックトーストに新鮮なブルスケッタを乗せて食べるといくらでも食べられた。

ステーキだが、日本で買うオージービーフとは味も硬さも全然違った。草履の底を噛んでいるがごとくの硬さで、顎が疲れて私は半分しか食べられなかった。そして、一番違うのがかかっているソースだ。とにかく味が薄いのだ。日本の焼き肉のたれの優秀さをまたここで思い知らされる。日本の調味料は優秀だ。

肉のことだが、たぶん日本への輸出用の肉は日本人向けに育てられているのだろうという結論に達した。


私達がお互いに写真を撮り合ったり、レストランのお姉さんたちを撮ったりしていると、隣の席にいた老夫婦が、「二人の写真を撮ってあげるから、カメラを貸しなさい。」と言ってくれる。おばあさんにカメラを渡すと、ぎこちない仕草で私達を撮ってくれた。・・ただその時に取ってもらった写真をホテルに帰って確認したら、ブレていてうまく写っていなかった。でも、そう言ってくださった気持ちが嬉しかったので、この写真は大切な旅の思い出として保存してある。私が撮ったこの老夫婦の写真はうまく撮れていた。アルバムを開くたびにこの人たちはお元気かしら、あの硬いお肉を今も食べているのかしらといつも笑顔と共に思い出している。


このお店からセントラルショッピングセンターが近かったので、食後に買い物に行く。

本屋さんに行ってマンガを探すが、雑誌の四コマ漫画のようなものしかない。日本の充実したマンガコーナーを思うと、私たちは日本でしか生きていけないねと智樹と話す。

麻巳子の生まれたばかりの甥へのお土産に英語の絵本を買った。これからは小学校の英語の授業もあるから、これでしょう。私も今回外国に来てみて、もう少し英語をやっておけばよかったとしみじみ思った。


ここのTシャツ屋でお土産を買ってから、ナイトマーケットまで歩いて、また中国人の総菜屋さんで夜食を買う。いつ来ても中国華僑のパワーに感心する。雰囲気はアカ〇ミー賞に輝いた千ちゃんが行った食べ物屋さんな感じだ。


夕方のパームコーブ行きは、私達二人だけだった。

ドライバーはミズ・カレン。この人は日本人かと思うくらい日本語ペラペラだった。とても親切な人で、私たちが明日キュランダに行くロープウェイに乗りに行くつもりだというと、旅行会社の人よりもよほど親身になっていろいろと細かいことまで教えてくれた。本当に現地の人たちはいい人が多い。


ホテルに帰って、またベランダで夜食を食べながらビールを飲む。この部屋の掃除をしている人は、どう思っているのだろう。ビールの缶の並ぶゴミ箱周辺、コーヒーのソーサーに残るお惣菜のソースの後(一応気を遣って、洗面所でさっと洗ってはいるのだが・・)・・新婚旅行客とは思えないだろうな。ずっとこの部屋に泊まっているので我が家と化している。智樹などは、プールにあるバーからちゃっかり灰皿を拝借してきて、マイ灰皿としてベランダで使っている。その灰皿は、私達が出かけている間にちゃんと吸い殻の掃除がされてベランダに戻ってきているのだ。申し訳ない。


海外直通電話のかけ方が部屋の資料にあったので、実家に電話してみることにする。

なんとかかけることは出来たのだが、お母さんと中身のない会話をする。

「まー、よく聞こえるわー。今何してんの?」

「電話してるじゃない。今日は、ケアンズに買い物に行った。お土産買ったよ。」

「時差はあるの?」

「一時間しか違わないよ。今、夕ご飯を食べた後で映画を観てるところ。ジャ〇ー・チェンの映画をやってる。」

「智樹さんとケンカをしてない?元気でやってるの?」

「うん。仲良くしてるよ。そっちはみんな元気? 明後日帰るから、中阪に着いたらまた電話するねー。」

電話を切って思った。高い電話なのに・・もっと話す内容を考えとけばよかった。まあ、声を聞けただけでいいのか、こういう場合。


今夜はテレビで映画三昧だ。スパ〇ダーマンⅡも観たし、智樹などはUSオープンのゴルフの映画を観て泣いていた。英語がわかったのだろうか・・・?


こうして、慣れ親しんだパームコーブの夜は更けていく。





すっかりパームコーブに馴染んだみたいですね。

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