綾香 動物園
今日はお出かけのようです。
四日目(土)また雲一つない晴れ
朝食に昨日ケアンズのスーパーで買ってきたマヨネーズとドレッシングを例のミックスレタスのサラダにかけて味を効いてみる。
・・・パームコーブの店のマヨネーズだけが変わった味なのではなかった。なんとも甘い。味が薄い。
日本にはマヨラーと呼ばれる人たちがいるが、これはマヨラーなのではない。キュー〇ラーなのではないだろうか? キュー〇ーや〇の素の創り出した味に私たちは飼いならされているのだということがよくわかった。
今日は歩いてケアンズ・トロピカルズーに行ってみることにする。ここは、旅行会社がオプショナルツアーを組んでいる所だが、大金を払ってツアーに参加しなくても、歩いて行けばいいじゃん。ということになった。マンガやアニメに使うお金以外はとことん倹約する私達である。
この動物園はケアンズという名前がついているが、実際にある場所はパームコーブに近い。昨日ケアンズからの帰りに看板を見つけて、ここなら遠足気分で歩けるんじゃない?と二人で考えた。・・・この考えは無謀であったと夕方頃には身に染みるのだが・・。
リュックを背負いトロピカルズーに出発だ。
近道を通ろうと大通りから住宅街の中に足を踏み入れる。住宅街というより別荘街と言った感じだ。その中を歩いていると「For Sale」の看板がやたらと目につく。どこもかしこも売り家だ。人口が減っていると聞いてはいたが、これ程とは思わなかった。
家が密集している所を抜けると、森沿いに道が続く。
道端の草だと思っていたものをよく見ると、青サルビア、ランタナ、オジギソウ等、日本のホームセンターでそこそこの値段を付けられて商品として売られている物ばかりだ。
「智樹、これ雑草じゃないじゃん。売り物だよ! 何百円もするものがそこら中に生えてる。」
と私が声を上げれば、智樹は智樹で道端の電柱を写真に撮っていた。
「何撮ってるの?」と聞くと、「この電線のつなぎ方変じゃない? ショートしないのかなぁ。ガイシが変わってる。帰って麻巳子さんに聞いてみよう。」と言う。
二人してひとりは下を、ひとりは上を眺めていたようだ。
・・・しかし私たちの観光はお金がかからないね。
私達は、黄色の花が群生しているのを見て楽しみ。オジギソウのふわふわの紫色の花を愛で、その葉っぱを触って葉が動く様を喜びながら順調に歩みを進めた。特に葉の形が変わっているものが多く、変わり種を見つける度にその前で代わる代わる交代で写真を撮り合った。やはりオーストラリアには独自の進化を遂げたものが多いようだ。
足が怠くなってきた頃、やっとケアンズ・トロピカルズーに着いた。
正面にエリマキトカゲを描いた絵があった。この動物も、初めて見た人はびっくりしただろうな。
入場料をドキドキして買って中に入ってみると、なんとも田舎の長閑な動物園といった感じだ。
日本の団体客ぐらいしか人がいない。カンガルーの飼育員も日本の人だった。
ここで、コアラ、クロコダイル、カンガルーなどを見たが、一番印象的だったのは赤ちゃんのワニの首としっぽを両手で持って通路を普通に歩いていた金髪のスレンダーな若いお姉さんだ。
この大学生のように見えるお姉さんは、レンジャーのようなくすんだ緑のシャツを着て、短パンから長ーい足を惜しげもなく出している。智樹がこのお姉さんとのツーショット写真を所望したのは無理もない。背は智樹より高かったが、とても可愛らしいお嬢さんだった。その可愛らしいお嬢さんとワニ、このミスマッチが非常にうけた。私に「ワニを持ってみる?」と勧めるので、「嫌だー、怖い。」と言うと「え? なんで?」って感じで不思議がられた。
◇◇◇
動物園を一通り見て回って、動物園からケアンズ方向に少し行った所にあるスーパーに、買い物に行ってから帰ることにする。
これが大変な道のりだった。昨日の帰り道で、車の中から見た時には近くに見えたスーパーに、行けども行けども辿り着かない。日中の日差しは強く紫外線の量も日本の何倍もある。何度も木陰で休憩しながらやっとスーパーに着いた時には足が棒のようになっていた。
しかし、食糧を調達しなければならない。サンドイッチとサラダには二人とも飽き飽きしていたのだ。
ところがスーパーに入ってみると期待したお惣菜は一つもない。日本のお惣菜コーナーを頭に描いていた私たちは、見事に裏切られた。売られている肉も魚もどーーんと丸ごとで並べてあるだけだ。野菜も同じくカットして小分けしてあるものはどこにもなかった。
しょうがないからお土産にメモ帳でも買おうかと文具コーナーに行ってみると、銀行のオマケにくれるようなしょぼいメモ帳が日本の三倍ぐらいの値段がする・・・。
日本は物が豊かなんだな。外国に行って我が国の良さを知る。
文具コーナーの隣にあった子供コーナーで、智樹が日本でも有名な忍者アニメのキャラクターがパッケージに付いたお菓子の数々を見つけて大興奮する。それもすごい量だ。目の前の棚すべてがメイドインジャパンである。オーストラリア製のものは一つもなかった。不思議な現象だ。
どうもこういうキャラ売りは日本独自のものであるらしい。
これを現地の人しか来ない地元のスーパーで、この量仕入れた担当者は、なかなか肝の太い人だ。
ここでは、絵美ちゃんや麻巳子へのお土産にメイドインオーストラリアと思われるチョコレートの入ったビスケットを買って帰ったが、日本に帰ってイ〇ンで同じお菓子が売られているのを見て脱力した。
日本商社の商魂、半端ない。
ここからの帰り道はひたすら暑さと足の痛さとの戦いだった。
「ホテルに帰ってあの冷たいプールで泳ぐんだっ。」と声を掛け合いながら帰ってきた。
途中のファストフードの店で、遅い昼食にハンバーガーを食べる。これがまた凄い味だった。中に物凄く大きな赤ビーツが挟んであって、パンや肉の味ではなくその赤ビーツの味しかしなかった。理解できない組み合わせである。
やっとホテルに帰り待望のプールに行くと、今日はいつになく人が多い。よく考えれば今日は土曜日だった。最初の日に会った五歳ぐらいの女の子が私を見つけて、「あっ、この間のジャパニーズガールだっ。ハロー!」と声を掛けてくれたのが嬉しかった。この家族はどこにも出かけずにまた今日も一日中プールにいたようだ。この子に持って来ていた折り紙をあげる。「わぉっ、サンキユー!」と言ってとても喜んでくれた。
智樹は疲れたのかプールサイドのリクライニングチェアで、ぐーぐー鼾をかいている。
私も今日ばかりは隣に寝転んで、顔にタオルをかけてうとうとと昼寝をした。
夜になって泡風呂のもとをジャグジーに入れて、贅沢にバブルバスをした。
極楽極楽。写真を撮り合った後、二人で一緒に泡風呂を楽しんだ。その後の事は、皆様のご想像にお任せする。
お疲れ様、ゆっくり休んでね。