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綾香 今日はケアンズへお出かけ 3ーⅠ

自宅の前にプールというのは最高の贅沢ですね。

 三日目(金)雲一つない晴れ


朝はのんびりゆっくり起きた。鳥の声と波の音で目を覚ますというのは、気持ちがいいものだ。

まずは、スーパーマーケットへ買い出しだ。あの二斤もある酸っぱいパンの攻略方法を思いついたからだ。

酢には、砂糖。勝てるのはこれしかない。

お店に行くと、レジのおばさんが「あらあなた達また来たのね。」と挨拶をしてくれる。同じところに買い物に行く日本人は珍しいのだろう。私達は、五泊するすべてをこのパームコーブのホテルで過ごすことにしているので、まだまだ来ますよー、という感じだ。


酸っぱいパンにつけるジャムを探す。小さめの瓶で、オレンジマーマレード、イチゴ、ブドウの三種類のジャムを買う。後で食べてみてわかったのだが、この中でオレンジマーマレードが一番このパンにマッチした。そして、またあの美味しいヨーグルトを買って、オレンジジュースはまだあったので、リンゴジュースを買ってみる。これがまた途轍もなくおいしかった。どうして日本にはこういうジュースがないのだろう。不思議だ。野菜は一種類しかないミックスサラダだ。このサラダを毎日食べ続けて、トラウマになることをまだこの時は知らない。お土産と実用を兼ねて、この日ピンク色の買い物用エコバッグも買った。これがこの先ずっと重宝することになる。


ホテルの部屋に帰って、智樹が備え付けのコーヒーメーカーでコーヒーを入れてくれている間に、ベランダにハムサラダとジャムパンを用意する。おかずはポテトチップスだ。

「今日は無料のパラダイスシャトルを呼んで、ケアンズに買い物に行こうよ。あの店だけだとおかずがないもん。」

「賛成ー。このパン以外のものを食べたいっ。」

まだ二回目だが、なかなかこのパンのインパクトダメージは半端ない。もったいないから食べるけどね・・。

ケアンズ~パームコーブの無料バスを旅行会社が用意しているのだが、今パームコーブにいるのは私達だけらしく、必要な時は電話をしてくれとあの賑やかなお兄さんは言っていた。

その電話が出来る時間にまだ二時間以上あったので、朝ごはんの後プールに泳ぎに行くことにした。


プールに行ってみると、プールサイドの椅子に熱々のカップルが抱き合っていてネッキングの最中だった。

私達じゃないよ! 外人のカップルだからねっ。

それが、日本人にはとても信じられないくらいの入れ込みようで、目のやり場に困る状態だ。

他のお客さんはどうかと見廻すと、誰も関心を払っていない。噓でしょーーーー。

思わず智樹と目を見かわす。これも外国だなーの一言で片づけていいのか?

「ここまでくると、部屋に帰ってしろっ!」

と言いたくなるね。そうかい智樹。そこそこエロいあんたでもそう言うとは・・・。


私は気を取り直して、レッツ英会話チャレンジをすることにした。

今日は週末だからか、プールの中にあるバーが朝も早くから開いていたのだ。このバーはプールの水の中にある椅子に腰かけてお酒が楽しめるというハイスペックな仕様になっている。ベランダから眺めていて是非チャレンジしてみたいと思っていたのだ。

ここで黒ビールを智樹と二人で注文する。よしっ、英語が通じたぞっ。やはりしゃべる前にドキドキするのは変わらないが、今日は事前に英作文していた文章で話すことが出来た。

朝っぱらからビールっ。それも水の中の椅子に座って飲む。空は今日も雲一つない真っ青で、白砂の上に湛えられたエメラルドブルーのプールの水面に陽光が反射して私たちの周りできらきらと揺れている。

「天国ってあるんだな。日常生活とのあまりの違いに愕然とするよ。こういう生活や景色が僕たちの知らないところで日々営まれてるんだなぁ。」

という智樹の呟きがこの状況の幸福感と非日常感をよく表していた。


プールサイドに戻るとさっきのカップルは部屋へ引き上げていた。・・・だよね。

ホッとして、プールで泳ぐ。滝が落ちている場所もあったので、下まで行って滝に打たれてみる。修行じゃーーー。

しかし、プールで泳いでいるのは今私達だけだ。他の人は椅子に座って寝ているか、ペーパーバック版の本を読んでいる。日本のプールの芋の子を洗うがごとき喧騒を思うと違和感が半端ない。休暇の過ごし方の違いをひしひしと感じる。


途中で智樹が部屋に帰り、旅行会社に電話してシャトルバスを頼む。

「よかったぁー。日本人が出たよ。」

外人との電話での英会話を想定して、かなりビビッて電話をかけたらしい。十二時過ぎの便を頼んだそうだ。じゃあまだゆっくりできるね。私達も郷に入れば郷に従えで、リクライニングチェアに寝そべってゆっくりする。ただ、その写真を撮り合っているのは私達だけだった。(汗)ここが成り切れていないところだろう。


昼過ぎ、私たちがロビーに出て待っていると、「旅行会社の要請で来ました。」と外人の男の人がやって来た。一緒に外に出ると、バスではなく普通の車だ。どうもこの運転手ミスター・カーロの自前の車らしい。この人はケアンズでアウトドア用品の店をしているそうで、「今、僕の手が空いていたので私たちの迎えに来た。」と言っていた。どうもこういう契約アルバイトの人たちでこのシャトルバス事業は成り立っているようだ。この人は日本人の奥さんがいるので簡単な日本語も話せる。私達がまだカンガルーを見ていないと言うと、「それは、ぜひとも見て貰わなくちゃ。」と道中にあった柵で囲った野原の横に一時停止してくれる。どうもここはカンガルー牧場になっているらしい。看板も何もなくただのブッシュに見える。

「あっいるっ!見て見てっ!」

思わず大声が出た。馬が三頭ほどのんびりと草を食んでいる隣を小さなカンガルーが、ぴょんこぴょんこ跳ねている。かわいいーーーっ。

「あれは、ワラビーだね。」

ミスター・カーロが説明してくれた。

この後何日かして動物園のカンガルーも見たが、この時の感動に勝るものはなかった。ミスター・カーロに感謝である。


ショッピングがしたかったので、ケアンズショッピングセンターに連れて行ってもらう。

スペシャルサンキューを言ってカーロと別れ、いよいよお買い物だ。

ここのショッピングセンターは日本の小さな町にあるぐらいの規模のデパートとスーパーが一緒になった感じの所だ。多分3、4階建ての建物だったと記憶している。


まずは腹ごしらえだ。午前中プールにいたのでお腹がぺこぺこだ。

レストラン街に行ってみると、なんとクルクル寿司があった!

廻って来るネタは、外国仕様でカルフォルニア巻や揚げ物を巻いているのが多かったが、味は日本風だった。ここで、とてもありがたかったことがある。私達は食べた後の竹の割り箸を頂いてきたのだ。いつもはポイと捨てるものがこちらではとても貴重なものだ。これでベランダでの食事の時にコーヒースプーンやケーキ用のフォーク以外に使えるものが出来た。


服の着替えを少ししか持ってきていなかったので、まずは食後一番にTシャツショップに行く。ここは旅行会社と契約をしているらしく、割引がきくし日本語も通じた。応対してくれたのが感じのいいお姉さんだったので、帰る前にもう一度来て、絵美ちゃんや麻巳子たちのお土産もここで買った。

今日は私と智樹のTシャツを二枚ずつ買った。これが結構生地もよく着やすかったので、旅行から帰って、もうちょっとたくさん買っとけばよかったね。と言い合った。


食料品売り場に向かっている途中に、カバンや帽子を売る店があった。

ここで私のリュックサックを買った。智樹が酒屋でビールを持参のリュックに入れていたのが羨ましかったからだ。私が真っ赤なリュックサックを買っている時に、智樹は帽子を物色していたらしい。

「やっぱりオーストラリアと言えばこれだよなっ。」

なんと智樹はアウトバックのカーボーイが被っていそうなバックスキンのカーボーイハットに決めたようだ。君は日本でこれを被れるのかい?と言いたかったが、あまりにも嬉しそうだったのでやめた。何処までも影響を及ぼすアリゲーターダンディさんである。


スーパーの食料品売り場に行く。

当たり前だが食品の包装が全部英語で、眺めているだけで楽しい。私達が棚を眺めていると、オーストラリア人のおばあさんがやって来て「私は年寄りで腰を屈めることができないんだから、あんた達若いもんがその一番下にあるセール品の品物を取っておくれっ!その缶詰を四個だよっ。」とずけずけ命令してきた。なんともはや。「マイ プレジャー。」と言って取ってあげたら、ふんっという感じでしぶしぶサンキューと小声で言って去っていった。逞しい。


ここで、ワイン、グレープトマト、チーズクラッカー、粉末スープの素などを仕入れる。一番嬉しかったのは漬物とカップヌードルを見つけたことだ。しかしこれらは後でがっかりすることになる。日本の製品のはずなのに、中身の味がオーストラリア仕様だったのだ。ちゃんと現地の嗜好に合わせて製造する日本の企業倫理は素晴らしい。素晴らしいが、期待していただけにそのがっかり感は半端なかった。


さぁ、買い物も終わったのであの写真でも有名なラグーンプールに行ってみることにする。エクスプラネード湾岸通りは歩いとかなくちゃね。





三日目は、まだまだ続きます。

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