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絵美 バンフⅡ

久しぶりのお湯につかるという行為。日本人には必須ですね。

 六日目 続き


ロープウェイ乗り場の駐車場からアッパー・ホット・スプリングスに行ける山道があったので、その道を辿ってみることにする。五分ほど歩くとアッパー温泉に着いた。ここはあまり観光客がいないみたいだ。田舎の町営の温泉施設のような造りになっている。入浴料もとても安かった。水着に着かえて外のプールに出ると、監視員も一人座っていて温泉というより気持ち的にはプールだ。それでもその中に入ると完璧なお湯だった。

ここはとにかく景色がいい。高い山々を観ながら温泉でゆったりとくつろぐ。なんとも贅沢だ。しかし私達は温泉に肩まで使って、ジャグジーの泡の出る所で旅の疲れをほぐしていたのだが、外人たちはプールサイドのリクライニングチェアに寝転んだまま景色を眺めている。感覚が違うね。


一人だけものすごくお年寄りのおばあさんが、いまにもおぼれそうな犬かきで広いプールを往復している。「ユー・アー・ア・ストロング・ウーマン!」と褒めるとそのおばあさんはとても喜んで、私にちょっと側に着て座りなさいとジェスチャーをする。笑いながら側に行くと、「あなた達はハニームーンで来てるの?日本人?私の若い頃の恋人は、日本の基地に仕事に言ってたのよ。筋肉ムキムキでいい男だったわぁ。結婚したのはバンフで店をやってる男だったけどね。・・・」と一代記を聞かせてくれた。「あなたはもう私の友達よっ。彼を話すんじゃないわよ。よさそうな男じゃないの!」と肩を組んでアドバイスまで頂いてしまった。


フミくんが笑いながら「いやに気に入られたんだね。何を話してたのさ。」と言うので、「女同士の秘密よ。」と言っておいた。そのおばあさんに「日本では温泉にはみんな裸で入るんです。」と言うと腰を抜かすぐらい驚いていた。「それは物凄いことねっ。わおわお、行きたいわっ。」と飛び上がって興奮して叫んでいたが、このぐらいの歳になってもこんなにチャーミングで意欲的でありたいものだなぁと思った。旅でのこんな出会いに感謝だね。


温泉でほどよく怠くてゆったりした気分になったので、ロームバスに再び乗ってバンフの町のほとりにあるカスケード公園まで戻る。ここはお城のような森林レンジャーの本部がある所だ。木陰に敷物を敷いて、フミくんと寝ころんでいろんな話をした。土産話を持って九州の家も訪ねたいし、綾香が妊娠したのでお祝いもいるね。安定期になったらフミくんの友達の中川さんたちとも家族ぐるみでキャンプに行きたいね。などと話していると、フミくんが「絵美、ちょっとあそこを見てごらん。」と言うので、カナダ人の家族がいた方を見てみると、木の間にロープを二本張って即席のアスレチックを作っている。そこを男の子たちが綱渡りをしている。お姉さんたちはボール遊びをしている。いかにも余裕のある休日の風景だ。「なんか映画の一場面を観てるみたい。」「うん。父親が積極的に男の子にかかわってるよね。僕も父親によくキャンプに連れて行ってもらったから、あんなふうに子どもと遊べる関係を作りたいな。」・・・フミくんは無意識にそう言っているが、実は生理が来てないのよね。いや、私がビールを飲まなくなったので気がついているのかしら。日本に帰ったら病院に行ってみなくっちゃ。


そろそろ帰ろうかとロームバスの停留所に向かう。時刻表を見たら次のバスがに20分後だったので、ここからぶらぶらと歩いて帰ることにする。ボウ川の橋を渡っていると、町の向こうに見えるカスケード山の上にその山の形と全く同じ形の雲がかかったいた。「これすごくない?」なんだか私達の行く末を祝福してくれているようだった。




山の祝福。いいですね。

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