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絵美 バンフ

バンフってどんな所なんでしょう。

六日目(日)ピカピカのお天気


やり方がわからないホテルの朝食ルームでうろうろするが、バイトのお兄さんに聞いてなんとか朝食をゲットする。ここのは日本式のホテルの朝食の感じだ。カリカリに油をおとしたベーコンがおいしかった。フミくんがヨーグルトが美味しいよというのでもらってくる。これも濃厚な味だった。


朝の散歩に外に出るともう日差しがギラギラしていて眩しくてたまらない。その日差しのもと山の稜線がくっきりはっきり見える。目で直接捉えると、山が迫って来るように大きく見える。これはカメラでは写せない迫力だ。バンフの町の通りの正面に見えるのがサルファー山というらしい。高い尾根にはまだ雪が白く残っている。この山が威圧感を持ってバンフの町を睥睨している。


日本の三倍以上ある歩道には時折自転車を止めておく為の鉄パイプが現れる。これを見ていると西部劇の馬を繋ぐための杭を思い出した。

日曜のバンフの朝は、車も少なくて広々としていた。


一旦ホテルの部屋へ戻ると、朝早くから若い女の子たちが部屋の掃除をしてくれていた。慌てて和紙袋に入れたチップを渡す。よかった、間に合って。

泊まったホテルがバンフの町を廻る「一日ロームバス券」をサービスでくれたので、今日はそれを使ってアッパー・ホット・スプリングスという温泉に行くことにする。水着などをリュックサックに入れて出発だ。


私達のホテルは町の端の方にあったのでバスに座ることが出来たが、中心に行くにつれてロームバスはたくさんの観光客で一杯になった。アッパー温泉のバスストップは何もないところで、ここで降りるべきか戸惑っているうちに、バスは次の終点までやってきた。バスに乗っていた皆の目的地はここだったらしく全員がここで降りていく。向こうに見える駐車場も大型の観光バスで一杯だ。いったい何があるのだろう。フミくんと見に行ってから温泉にしようと、皆の後をついて行ってみると、高い山に一気に登るロープウェイがあった。「おおっ、これはいいじゃん! これなら絵美でも高い山に登れるねっ。」フミくんがこう言うのには訳がある。せっかくロッキー山脈に行くのだから登山がしたいと言っていたフミくんに、三つの都市を回るハードスケジュールの旅だから、体力に自信がないとトンネル山登山を断っていたのだ。


ロープウェイなら私も山に付き合えそうだ。

大勢が並んでいる切符売り場に行って、私達も搭乗券を買うことにする。ゴンドラには四人ずつ乗るようで、私達は二人組のおばさん達と一緒に乗ることになった。とてもフレンドリーな二人はここバンフに来てから友達になったらしい。サンフランシスコから来ていたケイティと少し足が不自由なベティの二人といろいろお喋りをしているとあっという間に頂上に着いた。ケイティの妹さんのフィアンセが日本のイワキに住んでいるそうだ。こうして話をしていると英語が少しでもできると世界が広がるというのを感じる。


頂上に着くと、もう一つの頂上があることがわかった。山の尾根を木組みの遊歩道がもう少し高い所の頂上まで続いている。地図を見ると宇宙線の観測小屋と展望台があるらしい。フミくんが行きたそうに私を見るので頑張って行ってみることにする。足の悪いベティたちはここまでにするというので、手を振って別れた。


これが頑張って挑戦したかいがあった。バンフの町が一望に出来るし、それだけではなく周りの高い山々を一望にできる360度の景観がとてつもなく素晴らしかった。フミくんが「富士山がいっぱいだ。」と言ったけれど3000メートル級の山々にぐるりと囲まれる大パノラマだ。私はお母さんが古いアニメの特集で「山ねずみロッキーチャックは、受験の癒しだったのよ。」と言っているのを聞いたことがあるが、ここロッキー山脈の話なんだろうなぁ、帰ってからこの凄い景色の事をお母さんに話さなくちゃと思った。


頂上に近いベンチに外人のカップルが座っていて、その人たちを皆が取り囲んでいる。どうしたのか見てみると、リスがご主人の食べていたバナナを狙ってご主人の膝の上から伸びあがって身体を上に駆け上がろうとしている。ご主人の方は困ってバナナを頭の上に挙げて取らせないように防衛していたのだ。ここは国立公園なので、動物にエサをやるとレンジャーに捕まってしまう。しかし、この人間とリスの攻防に周りの観光客は大喜びだ。みんなカメラを出してこの二人と一匹を写真におさめていた。申し訳ないがあまりの可愛さに私達も写真を撮らせて頂いた。


頂上の観測小屋の近くだけは緩く囲いがしてあるだけで、板も張られておらず岩肌がむき出しになっていた。私達はその岩に足をかけてポーズをとり、いかにも自分の足でここまで登ってきたかのように記念撮影をした。アジア系の人では中国人とインド人の家族を見かけたが、日本人は一人もいなかった。フミくんはここでも「これはカメラじゃなくてムービーだな。」と360度のパノラマをムービーで撮っていた。

太陽が近くて暑い。そして目線の少し上を飛行機が飛んでいく。青空にくっきりと白い飛行機雲の線が出来ていくのを私は感動して眺めていた。


喉が渇いたので下に降りることにする。サミットに使われたという頂上の建物は改修中らしい。レストランがあるそうだから、改修が終わったらこの景色の事だ、きっと賑わいを見せるのだろう。帰りのゴンドラは若い夫婦と一緒だった。フランス語を話していたのでフランス人かと思っていたらモントリオールから来たカナダ人だった。奥さんはお腹が大きくて何か月ですかと聞いたら、八ヶ月とのことだった。女の子だろうということだ。美男美女のカップルだったのでさぞかし可愛い子が生まれることだろう。


来る時もケイティとベティと一緒に写真を撮ったのだが、ここでもこの若いご夫婦と一緒に写真を撮った。こちらの人はフレンドリーな人が多い。写真をお互いに撮り合っている途中で急にゴンドラが止まってしまった。私達のいる場所は丁度中間地点で、まだ高度がある。遥か下の山道を自分たちで歩いて登っている登山者の姿が蟻んこのように小さく見えている。フミくんが「Can you fly?」(飛べる?)と冗談を言ったので、四人で大笑いして緊張感が抜けた。だいぶ長く止まっていたように思ったが、ゴンドラがまた動き出した時にはホッとした。


下に降りて、このカップルとも手を振って別れる。売店があったので、炭酸飲料と水を買って眺めのいい場所で休憩した。「山から下りての飲み物は美味しいねっ。」と言うとフミくんが笑って乾杯してくれた。「絵美の初の高山登山に乾杯だっ!」





長くなりそうなので、この日を前・後半に分けます。

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